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ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
第三章 腐った化け物と消えた嘘
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38 聖なる呪文と竜の試練!? 前編

 各々(おのおの)の装備をまとい、竜のほこらへ、いざ参らん!


 俺達は今、ほこらの前に突っ立って、そいつを見上げている。


 ほこらつーから、神社や神殿のようなイメージをしていたけど、これ、入口になにやらありがたそうなおふだを祀っただけの――どう見ても思いっきり洞窟じゃん? 巨大な岩山にできた穴ぼこじゃん? なんか結構深そうよ。

 

 まぁ、小悪党数名で攻略できたくれぇだから、たいしたことはないと想定はしているのだが。


 洞窟に足を踏み込んだと同時に、突如、地響き。


「きゃ」

「みんな、急いで一度外に出るんだ!」


 だが、それよりも早く入口付近の天井が崩れ落ち、俺達は洞窟内に閉じ込められてしまった。


 こんな岩なんぞ、剣スキル・地雷斬で簡単に吹き飛ばせるだろう。

 まぁ、でも、これって……


「みんな、すいません。状態をよく確認してから入るべきでした。ここは一旦、岩を取り除いて外へ出てから作戦を立て直すべきかと。ちょっとさがってください。僕のレッドカッターで」


 それ、アルディーンの技だから!


「ちょっと待ってください。確かに誠司さんのおっしゃる通りなんスけど、絶妙なタイミング過ぎませんか? なんかイベントが発動したのかもしれませんよ。少し様子を見た方が……」


 やっぱ、勘は当たった。

 どこともなく、重圧感のある声がこだましてきた。


『……招かざる愚かな者たちよ。我は、偉大なる竜の意思……』


 なるほど。

 このほこらのボスキャラね。

 自分で偉大なんて言っちゃてるよ。なんて横暴な。経験値にしてぇ。

 てか、あんたが起床するまで、まだ時間があるんじゃなかったの?


 誠司さんはその声に応えた。


「偉大なる竜よ! 僕たちは盗まれた『竜の涙』をあなたへお返しにきただけです!」


『……ククク。今更、自らが行った愚行が恐ろしくなって、そのような詭弁を申しておるのであろう……』


「違います! 嘘ではありません。信じてください。僕たちはピッツ村の長老に依頼されて、こうしてやってきただけなのです」


『……では……誠意をもって、それを示せ……』


「誠意、ですか??」


『……眠れる我のもとへ訪れるまで、100の試練を用意した。すべての試練に耐え、我が目覚めるよりも前に我がもとへとせ参ずれば、それをもって誠意とみなす……』


 めんどい竜だなぁ!

 そんでもって、めんどいクエスト

 つまりあんたは、ちゃんとおっきするまでは48時間必要だけど、先だって意思だけは起動する仕様なのね。

 長老さんよぉー、そうこうことは、あらかじめ教えてくれよ。


 俺は竜に聞かれねぇように、小声で誠司さんに耳打ちした。

「どうします? まだタイムリミットまで20時間程度ありますが、多分あと10時間もしないうちにみんな睡魔に襲われて、だんだんめんどくさくなってきますよ? いっそのこと、入り口の岩を除去して外でのんびりバーベキューとかしながら楽しく時間つぶしをして、奴が目覚めて洞窟から出てきたら、即効ぶっ倒して経験値にするって手もありますよ?」


「ダメですよ! しげるさん。偉大なる竜は、大切なアイテムを盗まれたただの被害者なのですよ。僕たちは誠意をもって対応すべきです」


「そうですよ! しげるさん」


 お嬢様、聞いていたのかよ。

 20時間以内に100の試練だぜ?

 マジでいいのか?

 徹夜でゲームするのと訳が違うぞ?

 この手の試練クエストといえば、全身を動かしながら、頭も使って謎解きアトラクションみてぇのを攻略していくってのがセオリーだ。

 5個、10個なら、まだいいと思う。そこまではなんかおもしろそうだ。

 だけどよ?

 100もあるんだぜ?

 20あたりのところで、絶対に飽きるぞ?

 多分、お嬢様が真っ先に、もう眠いよーとか、帰りたいよーとか、ぎゃーぎゃーわめきだすに違いない。


 もうこんな竜、経験値にして、おいしく食っちまおうよ。

 ――なんて思っても仕方ないか。


 彼らの意思は固そうだ。

 ほら、二人の瞳には、やる気の炎みてぇなのがメラメラしてるし。


「まぁ、お二人がそう言うのでしたら、俺はもう止めません。では時間も限られているので出発しましょう」と、言うしかなかった。


「試練♪、試練♪」と、お嬢様はパタパタスキップ。


「聖華さん、洞窟内で飛び跳ねるのは、危ないのでやめましょう」


 ほら、こけた。

 泣かない、泣かない。

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