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ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
閑話2(ヒーロと勇者!?)
43/78

4 嵐の熱血タクティクス・オーロラシャニング学園バーニング大作戦




 うわぁ、なげー。

 



 作戦名『嵐の熱血タクティクス・オーロラシャニング学園バーニング大作戦』

 

 目的:

 リリの救出

 そのためにも、聖・勇者学園の悪事を暴き、悪と分かったと同時に真っ赤に燃える正義の拳で貫く。


 内容:

 誠司……学園の採用試験に合格し、講師として堂々と学園内を捜査。

 しげる……元探偵の能力を活かし、密に学園内を捜査。

 聖華……ダメな子な割に……もとい、ちょっと危なっかしい子だけど、勉強ができるスキルを活かし、編入試験合格し、生徒として堂々と学園内捜査。

 リーズ……メインは自由行動。機敏性を活かし、メンバー達に状況報告等連絡係。



 どうしてこの作戦の目的のくだりに、わざわざ『真っ赤に燃える正義の拳で貫く』が、あるの?

 普通に悪を懲らしめて、学園を解体して終わりでいいじゃん?

 

 まー、分かるよ。

 フィニッシュは、絶対に、あの赤い人がでてくるんだよね?

 はいはい、もーいーよ、その展開。そろそろ、見慣れたから。



 その他、いくつかの不安を感じつつも、リーズと俺をほぼ自由行動にしてくれたことでカバーできると思い、この作戦に快諾した。



 目的地である北西の都ウィンダリアには、夕方に到着する予定だったが、出る際に起きた聖華さん大量アイテムドタバタ事件で深夜になった。

 宿の手配は既にできており、深夜というのに問題なく泊まれた。

 更に手際良いことに、既に採用試験と編入試験の申し込み手続きは済ませてあるとのこと。



 お嬢様はアナザーゲイブを詠唱して嬉しそうに手を突っ込んでガサゴソしていた。

 ヤバいと察したのか、「明日に備えて、早く寝ましょう」と誠司さん。

 お嬢様は何やらしょんぼりして手を引っこ抜くと、黒い渦を消した。




 * * *


 翌日、早朝。

 俺とリーズは、学園から少々離れた公園で、二人の吉報? を待っていた。


 聖・勇者学園は、まるで西洋のお城のような風貌だ。

 見上げる程に高ぇ。

 

 歩けば30分くらいかかりそうなこの場所からでも、その辺の民家を飛びぬけて重厚な存在感を感じる。


 俺はベンチに腰掛ける。

 体重でギギと軋むのはいつものこと。


「なぁ、リーズ。誠司さんの付けた作戦名、どう思う? なげーから呼ぶ時、めんどくさくないか?」

「沈黙をお許しください」


「誠司さんって、いつもあんな感じの名前つけているの?」

「……沈黙をお許しください」


「やっぱりあのネーミングセンス、自分ではカッコいいとか思っているのかな?」

「…………沈黙をお許しください」


「誠司さんに変な主題歌とか、強要とかされなかった?」

「………………ち、沈黙をお許しください……」



 会話がまったく弾まねぇな。

 


「あの……」

「ん?」


「誠ちゃんと聖華さんに何かあったらいけないので、こっそり護衛に行ってきます」


「二人は大丈夫だ。聖華さんはペンをガリガリ動かしているし、誠司さんは雄弁に自己PRしているぜ」


「あ、もしかして行ったり来たりをしているのですか? 今回は全くぶれていませんね……」


 実はその奥義は卒業した。

 サバイバルスキルにある、『サーチ』と『音感知』の組み合わせることにより、より鮮明に様々なことが分かるようになった。例えば人は動くだけで何らからの音を発する。それに加えて俺のステータスを足せば、何をしているかまで些細な行動まで丸わかりなのである。


 まぁ説明すると長くなるのと、何をしているのか丸わかりってので勘違いされても嫌だから、「まぁ、色々研究しているから」とだけ返しておいた。


「二人は大丈夫だとしても、このままここでじっとしていても時間がもったいないですから、ちょっと探索してきます」


「そっか。気を付けろよ。行き違いになったらいけねぇから、俺はここで待っているよ。なんたって、ここは敵地だからな。もしなんかあったら、すぐに俺を呼んでくれ」


「分かりました」


 リーズはピョンと木の枝まで飛び上がると、少し反動をつけて、民家のレンガ屋根へと飛び移りそのまま学園の方へ向かって屋根伝いに走っていった。



 待つこと、10分少々。

 昼前だというのに、まったく誰もいねぇな。

 やることがなぇので、なんだか少し、ウトウトしてきた。


 更に待つこと、10分少々。


「こんにちは」


 ふと俺が顔を見上げると、そこにはブラウンのスーツを着た男がいた。

 首元には高価なマフラーが巻かれてある。



 しまった。

 寝ちまったか。

 

 サバイバルスキル『サーチ』と『音感知』と発動させる。

 二人ともまだ試験中のようだ。

 

 ほっと胸をなでおろし、改めて男に視線を向ける。

 俺と視線が合うと、男は軽く会釈した。

 

「昼からこのようなところでのんびりされているところを見ますと、もしや大成功された経営者でしょうか?」

 

 ……まったく。

 異世界まで来て、無賃金労働者っすよ。

 まぁ、その気になったらいつもで役員にしてくれるみたいだけどね。ならないけど。

 お金貰うと、消えちゃうからね。



 改めて男の顔を見た。

 白髪をオールバックで固めており、目元には小さなしわが散見できるものの、勢いのある目力からは、実年齢よりも若いオーラを感じる。



「あなたは?」

「おっと、失礼しました」


 男は軽く一礼すると、ポケットから名刺入れを取り出して、その一枚を手渡してきた。


 なになに?

 聖・勇者学園 理事長 大板おおいた 聖道せいどう



 まじ?

 いきなり、真打登場!?


 やべぇ。

 リーズもいねぇし、どうしたものか。


 男はにこやかに笑い、続けた。

「この公園、誰もいないでしょう?」

「あ、はぁ……」


「この国では、子どもも大人も、皆、遊んでいる暇なんてないんです。民は重税に苦しみ、貧困にあえいでいます。それは何故だと思いますか?」

「えーと……」


「……学」


 大板氏は続ける。


「学がないから、重税からの逃れ方を知らない。学がないから、たくさんのお金を稼ぐことはできない。わたしはそういった人たちをひとりでも救いたい」


 そう言うと空を見上げた。

 突き抜けるような蒼天。

 今日はいい天気だ。


 この人、なんか立派なようことを言っているように聞こえる。



「あなたは、このようなところでのんびりされていた。つまりは……」

 

 あ、これ、面倒なパターンね。


「俺、ニートだから」

「嘘ですね。家に引きこもるには、それなりに財産が必要です。この国の重税では無理でしょう。でしたら旅の者か、成功された経営者しか選択肢はございません」



 あー。もー、面倒だ。


「嘘つきました。俺、旅していて、なんか疲れたからここで休憩していました」


「知っていましたよ。旅のお方ということは」


 え?

 最初から旅人ですかと聞けば良さそうなものだが、初めからそう聞いたらかわされるとでも思ったのか?

 とにかく誘導されちまった。

 ちょっとばかし焦る。


「何が目的なんですか?」

「そのように構えないでください。私はあなたに危害をくわえるつもりなど毛頭ございません。ただもしよろしければ、もし多少なりとも時間を持て余しているのでしたら、私共の夢の手助けをお願いできないか、と、質問しております」


「夢の手助け……ですか?」

「あなたのレベルは少なく見積もっても50以上はありますね?」


 なんか梶田にされたような質問だ。

 答えていいものかと迷っている間も、大板氏はどんどん続ける。


「北西の都ウィンダリアの民は、どうしてこんなに苦しくても逃亡を図らないのか? それはこの周りのモンスターが強いからです。その昔はそれほどでもなかったと言われておりますが、王は民が逃げないように、強力なモンスターばかり周辺に放ったとか」



 言われみたら、なんか見慣れないモンスターがいたような……

 誠司さん達……、合成獣の後に組織の手練れまで倒しているから、少々のモンスターは全部雑魚キャラになっちゃうんだよなぁ。

 そんでもって急いでいたこともあって、ほぼ、全スルーで来たから。

 簡単に逃がしてくれた、というか、もしかして敵の方が逃げていたのか??



「別にいつまでも助力をお願いするつもりはございません。せめてこの国に腰かけるひとときの間だけでも、そのお力をお借りできれば……」


 まぁ、聞くだけだったらいいかと思い、

「で、具体的に何をしたら、いいんスか? まー興味ないけど」と問うてみた。


「もしよろしければ、聖・勇者学園で講師をお願いできませんでしょうか!?」

「は? 俺は勉強、あんまできんぞ!」


 学生時代なんて大昔なんだぞ!

 もーほとんど忘れたわ。

 

「いえ、大丈夫です。身なりからして戦士様ですよね?」

「まー、そんな感じだ」


「戦士科の非常勤講師をお願いできませんでしょうか? こちらからの一方的な無理をお願いしているのですから、もちろん報酬にも手当を付けさせてください。一般的な講師の時給が30 riraのところ、3倍の90riraをお支払いします」


 えーと、riraの相場は、日本円の100分の1だから……

 通常講師の時給は3000円で、俺はその3倍の時給9000円ってことか。

 なかなかの好待遇じゃねぇか。

 まぁ、触った瞬間、1万分の1になっちゃうけどね。


 でもこれっていい話なんじゃねぇの?

 なんかすごく良いこと言っているけど、どーせ詭弁なんだろうし、誠司さんもまた、おたくの講師目指しているんだし、まーそのついでに俺も先生になっちまって、学園ダブルバーニングってことでいいっしょ?


 俺は、「分かりました。お手伝いしましょう」と頭をコクリと下げた。


「ありがとうございます! では、早速、明日午前7時に、学園長室までお越しください」

「えーと、持って行くものは、なんすか?」


「すべて当学園でご用意するので、そのままお越しくだされば大丈夫です」

 そう言うと、大板理事長は最後に深く一礼をして、学園の方へと姿を消した。



 それからしばらくして、誠司さんと聖華さんが帰ってきた。

 なんか二人ともとても疲れた顔をしている。

 早朝から昼過ぎまでの試験。

 そりゃ、疲れるでしょ。


 「お疲れ様でした。どうでしたか?」



 誠司さんと聖華さんは、ほぼ同時に口を開いた。

 そして深く頭を下げる。

 

「「ごめんなさい。ダメでした!」」




「えぇーーーーー!?」



 優秀な二人は全滅。

 適当にぶらぶらしていた俺だけ採用。


 いったいどうなっちまうんだ!?

 嵐の熱血タクティクス・オーロラシャニング学園バーニング大作戦は!?

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