表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
閑話2(ヒーロと勇者!?)
42/78

3 謎の失踪事件と就職率100%の勇者学園

 2頭立ての馬車はヴァレリア公国の城門を抜け、長く細いレンガ道を駆けていく。

 

「……失踪事件……ですか?」

「はい、10歳前後の子どもばかり狙った卑劣な犯行です」


 誠司さんの話によると――

 相談者は、カカという、ほんのつい最近入社した女の子。

 どうも特記事項はないようで、面接時に特記事項を問うと『え? それってなんですか?』 と、本当に何も知らないような顔で聞き返してきたそうだ。おそらく転生者ではなく、この世界の住人なのだと思われる。

 

 まぁ、そこまではよくある話なんだけど、彼女における事情はかなり深刻で複雑だった。

 どうも友達と一緒に村から逃げ出したらしく、大きな事件に巻き込まれているようなのだ。


 二人は手分けをして助けてくれる大人を探した。

 カカはヴィスブリッジには良い人がいるらしいという噂だけを頼りに、ここにやってきたみたいなのだ。

 そして本当に相談できる人かどうか見極めるためにも、入社を装い俺達を観察していたと彼女は正直に答えてくれた。

 

 誠司さんの人となりを見て、助けてくれる大人だと確証したとのこと。

 そして一緒にこの国に逃げてきた友達を探しに行ったそうだ。

 

 だけどカカは、友達と再会は果たせなかったみたいだ。

 ――ちょっと前まで元気だったのに。もしかして事件に巻き込まれたの? それとも悪い人につかまって……? 恐ろしいことばかりが彼女の脳裏を過り、必死に探した。

  

 そしていくつかの目撃情報を元に、ひとつの仮説に辿り着いた。



 聖華さんは、「……誘拐……ですか。その狙いはなんですか?」



 誠司さんは革のショルダーバッグから数枚のチラシを取り出すと、俺達に手渡した。



 こ、これは!?

 そのチラシの見出しにはデカデカと『聖・勇者学園 入校生募集!』とある。

 続いて、就職率、完全100%

 冒険者ライセンス取得率、完全100% 合格保証付き。

 

 更にキャッチフレーズが、『聖・勇者学園は、あなたの特記事項さいのうを5000%開花させます!』と書かれてある。


 補足として、特記事項にどんな足枷があってもご安心ください。短所は発想をひっくり返せば長所になります。学園は、そういった皆さまに寄り添い、新たな旅立ちのご支援をします!


 なんだこれは?

 うちのパクリか?



 最期の行に、『運営法人:オルスピヌング合同会社』と書かれてある。

 なんだ、これ? バカにしているのか、奴ら。

 まぁ、ここ、学校法人とかではなく、聖・勇者学園ってのが屋号で、バックはオルスピヌング合同会社ってことか。



 もしこの運営がオルドヌング・スピアだったら、これは善人を装う悪党の巣窟ってことになるな。ここに入学したら、どうされちまうのか、想像するのもおぞましい。



 誠司さんは続けた。

「この学園のスカウトマンと思われる黒服の男と、カカさんの友人――リリさんが喫茶店で話しているのを目撃したという証言もあったらしい。同様にその男と会った後、行方不明になった子ども達も存在するみたいなんだ」


 白昼堂々と誘拐するなんて、ぶっちゃけ、なかなかできることじゃねぇ。

 それを可能にしてるってことは、恭志郎や梶田のように、仲間達とうまく連携できているに違いねぇ。

 そしてバックに組織の傘か。


 俺は誠司さんに、

「確かに急がないといけませんね。もし黒幕が例の組織だったら、まともな学園な訳がない。リリって子が危ない」


「はい。カカさんは同行を希望されましたが、かなり危険と判断した為、ここで待つように説得しました。それと同時に僕は完璧な策も考えておきました。名付けて『オーロラシャニング学園バーニング大作戦』!!」


 おお!

 と、目を輝かしたのは聖華さんだけで……。


「その作戦を早くと」と、わくわくしているのは聖華さんだけで……。



 なんだっけ、えーと、『オーロラシャニング学園バーニング大作戦』……

 ……学校がオーロラのように激しく光り、ドカンと大爆発!? ってことかな??

 いや、多分、深い意味なんてない。

 カッコよさげな単語を、なんかそれっぽく繋げただけだと思う。


 誠司さんは俺の耳元で、そっと、

「すいません、しげるさん。いえ、ガチタンク・ブルー。この案件は急を要したので、まだ主題歌が完成していません……。間奏部にあたる挿入歌パートの完成度に納得ができず……。例の作戦決行は次回の時に……」


「い、いえ。お気になさらず……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ