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ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
第一章 新たなる人生の幕開け
3/77

3 バトル

 誠司さんが立ち上がり、俺の方を向くと、戸の方を指差してニコリとした。

 

『行こうぜ!』と言っているのだろう。

 いよいよ出発か。


 外へ出ると、太陽の光がまぶしくて思わず目を細めた。

 辺り一面には青々とした草原が広がっており、その向こうには針葉樹の林が見える。


 手元の地図によると、このログハウスを出て草原を抜けたら街があるらしい。

 まずそこを目指すのだろう。


 

 どこともなく、ぞろぞろと小柄な鬼が現れた。ゴブリンってやつか。

 こん棒を掲げて近づいてくる。


 誠司さんは颯爽さっそうと走り寄り、斧で斬りつける。

 バランスよくパラメーターを配分しているのだろう、簡単に倒す。

 ロリっ子も短剣を握りしめ、彼に続く。


 ツンデレお嬢様はというと。

 ログハウスの入り口に突っ立ったまま、何やら難しい顔をしている。

 もし敵に遭遇すると、真っ先に攻撃を仕掛けると思ったんだが。

 なぜなら先程の武器取りじゃんけんの勝者はお嬢様なのだ。

 選んだのは弓だった。

 まぁ弓は遠距離攻撃が出来るから便利そうだし、それに、もしかして弓道部だったとか?

 長い黒髪にすっとした気品ある顔立ち。似合っているというとその通りだ。

 とにかく弓を手に取った時、すごく嬉しそうだった。


 ふいに俺と視線が合うと、

「なによ。あなたも早く行きなさいよ」

 

 俺も誠司さん達の方に向かってはみるが、ふいに振り返る。

 

 弓といっても、シンプルなハンティングボウ。

 お嬢様はしゃがみこんだまま、弦を張ろうとしているようだが、うまくいっていない。

 意外と力がいるんだよな、アレ。

 下手にすると弓がねじれるし。

 俺もシロートだからよく知らねぇけど。


 まさか某映画なんかに出てくるイケメンエルフとかがカッコよく使っているから、そんな安易な気持ちで選んだんじゃないだろうな!?


 まぁ、いいか。

 頑張れよ、ツンデレ。


 俺もゴブリンを杖でぶっ叩いた。

 鈍い音がしたが、敵は倒れない。

 意外とかてぇな。

 ロリっ子が二発で斬り殺したゴブリンと死闘を繰り返してようやく撃破。


 お嬢様はそれを見ていたらしく、「よわっ」とほざいた。


 まさか、この俺が弱いなんて。

 そっか。

 まだステータス振り分けていなかった。

 危なく雑魚に殺されるところだった。



 誠司さんの叫ぶ声が聞えた。

「14匹、15匹……やった! レベルアップだ」


 そうか。おめでとう。


 その時、俺の目の前に半透明な青い画面が現れた。

 レベルアップと書かれている。

 たった一匹でレベルアップか?

 さすが経験値上昇率:10000倍

 ゴブリン一万匹撃破に相当するのだろう。



 ロリっ子も夢中で叫んでいる。

「誠司さん、どれに振り分けます?」

「序盤は体力、筋力を重点的に上げていた方がいいと思う。僕はそれぞれに10ずつ振り分けたよ」



 通常の場合、レベルがあがると20ポイント与えられるのか。



 青いブルーウィンドを覗きこんだ。


 俺はというと、レベル31になっている。

 

1000000000005100だったボーナスパラメーターの数字は、くるくると回転を始め1000000007805100に変化。

 つまり7800000増えた勘定になる。

 桁がよく分からんが、さすが成長率:13000


 プラス7800000の根拠を頑張って計算してみた。


 レベルアップのボーナス20×レベルアップ数30×成長率:13000=7800000


 ボーナスポイントの桁も数えた。兆を超えて、次の位はなんだっけ。

 あ、そうそう、確かけいだ。

 

 つまり約10京ある。


 ブルーウィンドはスマホみたいに指で触れることができ、とりあえず全パラメーターに1兆ずつぶっこんでみた。

 HPが581兆

 MPも581兆


 ステータス項目が増え、スキルと書かれたページが追加された。

 剣スキル、二段斬り、三段斬り、乱れ斬り、云々……

 そんなのがずらずらとかかれており、全部読むのが面倒なくらいある。

 流し読みでさらさらと見てみた。

 多すぎて覚えることができない。

 後でゆっくり確認しよう。

 

 ブルーウィンドは窓を開けるような要領で、左手を左右に流せば、出たり引っ込んだりする。


 あと。

 名前の下にクラスという項目が追加されており、文字がクルクルと回っている。

 クラスっていうと、戦士とか魔法使いとかパラディンとか、ああいうたぐいなのだろうか。

 それとも奴隷や、農民、国王、皇帝みたいな役職?


 文字がピタリと止まる。


『絶対神』



 そういえばさっきから、胸の辺りでゴツゴツと何かが当たる感触がある。

 胸元をみると、ゴブリンがこん棒で俺を叩いている。

 

 ウィンドを開いてHPを見てみるが、ひとつも削れていない。

 ゴブリンにデコピンをしてみると、消し飛んだ。


 ツンデレ聖華さんお嬢様を振り返ってみるが、どうやらこちらを見ておらず未だ必死に弦を張っていた。

 どうやら見られていなかったようだ。

 まぁいいけど。


 お嬢様は涙目になっている。

 想像以上に難しかったのだろう。

 さすがに可愛そうではあるが、手伝ってやると言ってもどうせツ~ンとして、嫌味のひとつでもほざいて断るんだろ。

 ツンデレと言うより、出来ないクーデレ≪デレなし≫ちゃんだ。

 まったく面倒なタイプだ。

 クーデレとはエロゲ仕様でいうと難攻不落。俺なら速攻で無視するな、こんな奴。攻略する意味がない。

 何度もほっとこうと思った。

 そもそも女なんて懲り懲りだし、触ったらHPが削られる。

 絶対神である俺に致命傷を与える驚異的存在なのだ。


 だから誠司さんに視線を投げかけているのだが、まったく気づいてくれない。

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」とか叫んで戦いに夢中みたい。

 まぁそりゃ面白いわな。序盤だから特に。

 ロリっ子も「いくわよおおおおおおおおおおおおおおおお!!」とバトルに熱中。


 お嬢様はその姿をチラチラ見ながら、グスングスンしている。

 やむを得ず、渾身の譲歩で歩み寄った。


「俺、弦張り症候群シンドロームにかかっていて、弦を見たら張りたくて張りたくて仕方ないんだ」


「は?」


 馬鹿じゃないのって顔をして、俺を見上げている。

 こうなることは分かっていたさ。


「く、苦しい。弦が俺に叫んでいる。しげるぅ~、弦を張るのだぁぁってな。もしかして、あんたには聞こえないのか?」


 生意気なクーデレ≪デレなし≫相手に、恥ずかしい演技までやってみせた。

 コミュ症なんだぞ、俺。


「まぁいいわ。張らせてあげますわ」

 と弓を差し出した。


 むかつくが、俺は絶対神とやらだ。

 とりあえず、見よう見まねで張ってみた。

 器用さが1兆あるせいか、すんなりとできた。


「へぇ~。あなた、もしかして弓道部だったんですか? いいわ。お礼に一発だけうたせてあげます」

「いいよ、別に」


「うちたいんでしょ!?」と睨みつけてくる。


 やっぱ、察してやらないといけないのか。


 矢をつがえると、お嬢様はこちらをじっとガン見している。


 って、俺、偉そうに構えているんだけど、経験ゼロだぜ?


 そういえば、弓スキルの右下に『アルティメイト・ストライク』ってのがあったな。

 なんだろ? あれ?


 矢を射った瞬間、青いドラゴンが放たれ、ゴブリンの群れに激突。

 激しく炎上してゴブリンの群れが四散した。

 

 やべ、レベルがまた30上がっちまった。



「な、なんですか?」

「いや、俺……弓道部だったんだ」


「そうでしたわね。早く返しなさい」


 いいのか? 

 あんた、弓道部で納得したのか?

 弓道部の連中は、普通にアルティメイト・ストライクができるってことでいいんだな?

 

 お嬢様は俺から弓を奪い取ると、ぴゅんぴゅん飛ばしながらゴブリンの方に走っていった。コツが分かったのか。なんだか嬉しそうだ。

 

 矢がなくなると、またシュンとしゃがみ込んだ。

 

 そう言えば、弓スキルには『弓矢生成』ってのがあった。

 どうやって使うのだろう。

 大抵のゲームなら別のアイテムから作り出すのがセオリーだ。


 その辺に落ちている枝を握って、『弓矢生成』と念じてみた。

 すると、矢の束が出来上がった。


 しゃがみこんで、寂しそうに草をむしっているお嬢様の傍にそっと置いた。


 直接渡すと、またぎゃーぎゃーとめんどくせぇから。


 一向に気づかずに草取りをしているので、「アイテムが落ちていますよ~」とささやいてやった。


 お嬢様は矢に気づくと、嬉しそうに笑みを浮かべて拾い、またぴゅんぴゅん射る。


 レベルが上がったのだろう。

 はしゃぎだした。


 俺はふぅとため息をついた。

 まぁ、街までの道中一緒にいるだけだ。

 そこまでは面倒を見てやるか。

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