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ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
第二章 異世界での起業編
27/78

27 お嬢様のピンチ!?

 リアはお仕事一覧がファイリングされた本をパラパラみている。

 あの女、対俺用の特記事項を持っているとのことだ。

 追い返してぇが、それもうまくいかず、とりあえず距離を置いてお嬢様との会話を監視している。



「あ、これ。やってみたいわ」

「え、そのお仕事は、ハイスキルを要しますよ?」



「あたくしのスキルを疑っていますの?」

「い……いえ」


「じゃぁ決まりね。明日からお仕事のようね。契約してちょうだい」

「……は、はい。ありがとうございます」



 俺は止めようとした。

 止めたかった。

 ガチで。


 だけどお嬢様は、契約書に手をかざして呪文を唱え、クライアントに転送してしまった。

 契約は成立したのだ。

 


 リアが選んだ仕事、なんだと思う?



 外見は、毛皮にハイヒール、長い金髪はエクステでボリュームアップし、リザードマンの革財布をちらつかせている派手な恰好のお姉系。

 

 そんな彼女の派遣先は、超高額給与の業務。

 それは女性にしかできない仕事。


 モデルや社長秘書でもなければ、ホステスのような夜の蝶でもない。



 そんな次元をはるかに凌駕する、高難度、超ハイスキルを要するお仕事だ。




 業務内容:竜の生贄。




 山林に囲まれた国――エルファランドに突如現れた巨悪な闇の竜。

 竜は生贄を要求してきやがった。

 

『我が魂の安息を願うなら、聖魔石の数だけ、神聖なる巫女を差し出せ』と。


 生々しい言い方をすると、ワシがウハウハしてぇから、年頃でいい感じの生娘を20人よこせ、さもないと予告なしに大暴れする、と言っている。

 

 

 これだけ好き放題いうドラゴンなのだが、かなり用心深いようで、普段は姿を見せない。

 だから巫女に化けることができる強力な女ドラゴンハンターを派遣して欲しいそうだ。

 奴が油断して姿を現した時に、一気に狩るのだろう。



 超高額の仕事で日当200000rira。日本円換算で2000万円/日ってことだ。

 まぁ大抵死ぬ。だからこんだけ高い。

 要求しているレベルは95。

 参加できる最低レベルは65を提示されてある。

 どういう計算かは知らんが、クライアントは強いヤツしかいらんと言っているのだろう。

 リアは参加レベルには到達しているが、ギリギリである。

 彼女のレベルは67。これでは、かなりきついと思う。

 

 

 それなのに、リアには更に負荷がある。

 ・努力ができない。

 ・泥臭いこともできない。

 つまり、ここ一番で踏ん張れない。

 つーか、あんた、やる気ないんだろ?

 絶対にばっくれる。

 


 だって、あんた。

 バカや阿呆をたぶらかして、優雅に振る舞う人種なんだもんね。

 最低な奴だ。



 それなのにお嬢様は結局、日当2000万円を先払いした。

 そしてドラゴンハンター確保の連絡までしちゃった。



 明日、リアが行方をくらましたらどうするのよ?

 うちの派遣会社の女性陣でレベルが高いのはお嬢様かリーズだけ。あとはリーチ寸前のいたいけな少女か、腰の曲がったばあ様しかいねぇ。

 リーズで行きたいが、彼女は嘘がつけないからこの業務はできない。

 残るはお嬢様。

 レベルは全然足りんが、消去法でいくとお嬢様しかいない。

 お嬢様、あなた、生贄兼ドラゴンハンターになっちゃうのよ。

 まぁお嬢様もばっくれればいいが、すでに村ではそれなりに準備しているだろうし、その他19人の生贄の女の子だってスタンバっているだろうし、そんな波乱な場所にドラゴンハンターは来ない。このままでは会社の信用はガタ落ちだ。

 俺が代わってやりたいが、俺はハゲ散らかしたおっさんだ。

 巫女にはなれねぇ。



「お仕事がんばりましょーね!」



 お嬢様は事務所の前まで出て、リアの姿が見えなくなるまで手を振っている。



 聖華さんは事の重大性が分かっているのだろうか。


 リアはお嬢様から2000万円をだまし取って、さらにあんたを死地に送ろうとしてやがるんだぜ?

 もちろん明日、リアがばっくれたら俺が女装してキモメンブサガールと蔑まれても巫女になってやるつもりだ。

 だけど聖華さんを誑かしたこの女だけは許せねぇ。



 リーズは、


「ダメです。しげるさん。あの女とかかわっては。どうせ明日は来ません。ドラゴンハンターは、あたし達でなんとかしましょう。だから、もうリアのことは忘れてください」


「できるかよ! 何もせずに、いいように騙されただけじゃねぇか」



 リーズは沈黙する。



「じゃぁ聞くが、あの女と、リーズが命と引き換えに差し違えた腐った化け物、もしそいつが生きていて、ガチの一騎打ちをしたらどっちが勝つ?」



「……腐った化け物……」



 まぁ奴は三つ潰しているだろうから俺よりも強いかもしれん。でも奴は……。

 言おうとした言葉を飲み込みかけたが続けた。



「……もし……。これはもしもの話だぞ。腐った化け物とやらが絶対神のクラスを持っていて……。つまり俺と同じ神属性だったらどうだ? それでも俺を凌駕する特記事項を持つリアが、腐った化け物には勝てねぇってか?」



 別にリアと腐った化け物を比べたい訳ではない。

 こうやってリアの弱点に探りを入れているだけなのだが、何とも要領を得ない。



「仮に腐った化け物としげるさんが同属性、力も能力も均一、闘えば互角な状態と仮定します。

 それでも腐った化け物がリアを圧倒するでしょう。

 それは、しげるさんと腐った化け物には決定的な違いがあるからです。

 しげるさんには心があります。奴には……

 ですからリアの特記事項には勝てないのです。

 絶対にリアに近づいてはいけません」



 なんだよ、それ。

 結局、分からず仕舞いか。

 くそったれ。

 互角の力量を持つ腐った化け物が勝てて、俺には勝てない。

 それは心があるからだと。


 俺が甘ちゃんとでも言いたいのか?

 俺だって、いざって時には非常に徹するさ。黒子を誓った時からその覚悟はあるつもりだ。


 リーズを振り切って、リアを追いかけた。

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― 新着の感想 ―
先払いってあり得ないでしょうよ。
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