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ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
第二章 異世界での起業編
24/78

24 報奨金とボーナスポイント

 裏カジノのオーナー梶田との戦いが終わり、はや半月が経とうとしている。

 元黒服だった加藤氏の証言により、裏カジノの実態が明らかになった。




 梶田竜平。

 レベル:521

 クラス:忍者マスター

【犯罪事項】

 殺人罪。

 詐欺罪。



 殺人件数は、顧客データや労働者名簿より算出された。

 多くのデータは抹消されていたが、少なく見積もっても500人はゆうにいただろう。



 名目上、梶田は三人の謎のスーパーヒーローが倒したってことになっている。

 だが、事の張本人であるヒーロー共はいずこへと姿を消したので、協力者である俺達――つまり、誠司さん、リーズ、加藤さん、甲斐さんそしてこの俺に報奨金の半額が支払われることになった。

 その報酬を受け取るために、今、みんなと一緒に役所に向かっている。

 


 その報奨額は、10万rira。

 日本円換算にして1億円だ。

 恭志郎の時の10倍。



 梶田は大量殺人犯である。

 それなのに役場が算出した報奨金はたったの10万rira。

 日本円換算にして1億円だ。

 これの半額、つまり5000万円を6等分する訳なのだが。


 要するに一人当たり約833万円。

 これだけの犯罪組織を壊滅した割には如何なものかとも思うが。まぁ俺達は当事者ではなく、関係者ってことになっているから仕方ないと言えば、その通りなのだが。

 

 

 あぁ~。

 もう正義のヒーローごっこはやめようぜと誠司さんを見た。

 

「くそう。アルディーンとか名乗るさすらいの勇者め。いったいどこのどいつなんだ。本来ならこの僕が梶田を倒すハズだったのに……。と言いたいところだが、あの時の僕は腹痛で戦える状態ではなかった。こっそり助っ人するなんて、なかなか、渋いじゃないか」


 とか言ってアルディーンの株を上げる努力をしている。


 お嬢様は、

「アルディーン様も素敵ですが、翼の生えた聖女様もいいと思いませんか?」

 とくる。



 まったくめんどくせぇヒーローだぜ。

 おい、リーズ。なんか言ってやれ。

 赤面している場合じゃねぇぞ。

 



 それよか、配分についてだ。

 勇敢に敵地に乗り込んだ加藤さんはまだ分かるけど、なんでちっこいおっさんにまで同額に配当すんだ?

 彼、ゴミ片付けしただけじゃん?

 その報酬は既に払ったんでしょ?

 まぁ等分配しようと言いだしたのは、例によって誠司さんだけどさ。




 そんな珍メンバー達は、町役場までやってきた。


 入り口にはパンパンになった制服を着た太った役人が突っ立っている。



「やっと来たか。めんどくせぇから早く受け取って帰ってくれ」



 俺達一行は、この偉そうな役人に連れられて豪華な一室に案内された。

 中央のテーブルには、一億円相当の札束が山のように積み上げられている。


 傲慢なデブの役人が話を始めた。


「俺はお大臣様より報酬を渡すように仰せつかった。ほら、全部で10万riraだ。お前ら一生かかっても拝むことのできねぇ額だろ?

 それにしてもおめぇらうまくやったな。聞いたぜ。たまたまその場に居合わせただけなんだろ? 大したこともしていないのにラッキーな奴等だ」



 おいおい、言いたい放題だな。

 まぁ、役人の言う事は、半分は正論。

 倒したのは勇者アルディーン。

 ……ということになっている。



 でも役人が挑発してくるもんだから、真面目な誠司さんは、「僕は金の為にやったのではない」と言い、金を受け取る事を躊躇している。

 リーダーが受け取らないものだから、誰も受け取ることができない。

 それだけではない。

 


「私も正義の為に動きました。お金なんていりません」



 と、お嬢様まで誠司さんに続いた。




 この報奨金、どうせ市民が収めた血税の一部なんだろ?

 食えるときに食う、貰えるときに貰っておくのが、サバイバルでの鉄則である。

 それに役人という肩書きの油ギッシュなおっさんは、返金すると聞いてにんまりと笑っているよ?



 AKUTOKU商事で営業一筋の俺なら分かる。

 こんな上司を幾度となく見てきた。

 こいつ、返金した事を申告せず、くすねる気だろう。今にも噴火しそうな鼻息を押し殺して笑っている姿が、まるで会社の売り上げをポッポにしまった上司が見せる不敵な笑いにあまりにも酷似しているのだ。そいつらは、大金を手にしたら必ず姿をくらませる。きっと海外にでも高飛びしたのだろう。


 そんな気がしてならねぇ。

 だから俺は聞いてみた。


「お役人さん。行きたいところはどこですか?」


「うーん。若いおねぇちゃんをたくさんはべらせて、まずは温泉だな。もちろん混浴三昧。その後わかめ酒に花電車、でへ、でへへ」



 なるほど。

 期待通りのゲスだ。


 

 お嬢様を見た。

 まだ「お金はお返しします」とか言っているよ。

 


 俺は二人に、


「聖華さん、誠司さん、返金をしてはいけません。全額きっちり受け取ってください」


「な、なんでですか!?」


 二人は俺に視線をぶつけてくる。



「だってまず功労者の二人が受け取ってくれないと、俺が金を貰えないでしょ。確かにヒーロー達の活躍が無ければ勝てなかったかもしれませんが、誠司さんが敵組織の仕組みを暴き、聖華さんが突破口を作ったのです。それに引き替え、俺はあんまり活躍していません。

 そんな俺は傲慢な豚なんですよ?

 食費だって馬鹿にならないし、あれやこれやして遊びたいし。

 あぁ~金が欲しい!!!! 金をくれぇ!!」

 

 

 お嬢様は、「もー、しげるさん! 意地汚いんですから」と注意してきたが、誠司さんは急に真面目な顔つきに変わり俺を見つめた。



「しげるさんは、またお金を聖華さんに預ける気ですか?」



 思わず首を縦に振った。

 だって俺が触ると溶けちまうし。



 どういう訳か、誠司さんはクスリと微笑を浮かべた。



「すいません。僕は熱くなる悪い癖があります。目先のちっぽけな考えだけで皆さんの大切な利益を放棄しようとしていました」


 そう言いながら、ボストンバックに金を詰め始めた。



 デブ役人は、金を受け取ろうとする誠司さんにまだ毒づいてくる。



「お、おい。てめぇは良心がないのか! この報奨金は苦しい領民たちの税金だ。今、まさに飢えている子どもだっているんだぞ。返金してその子達に使う手だってあるんだぜ? お前ら、たまたま運よく居合わせただけなのに強欲だな」



 誠司さんは、

「お仕事お疲れ様です」

 と言い、役人のはち切れんばかりのパンパンに張った胸ポケットに札の一枚を入れてやった。それは、これで我慢しろと言っているかのようだった。

 


 

 *




 圧倒的お金持ちになったお嬢様は、うれしそうにお金をカバンに詰めて毎日欠かさず買い物に行く。


 カバンには、5000万円相当の札束をぶっこんでいる。

 物騒だと思ったが、実は今のお嬢様はそこそこ強い。

 コロシアムでアルディーン達と一緒に、レベル200のキメラと格闘したおかげで、レベルは28まで成長していた。


 ちなみにレベル30で軍隊を起こせる強さで、レベル80で国王クラスらしい。(恭志郎説)


 まぁ、その辺を徘徊しているプレーヤーに負ける要素はなくなった訳だ。

 


 ちなみに俺は、レベル9999の四聖獣を4体も撃沈させちまった。

 経験値上昇率:1万、成長率1万3000まである。


 俺のレベルは48563になっていた。

 ボーナスポイントが、12626380000も増えていた。

 一瞬で約100億もゲットできたのだ。


 1000000007805100(未使用のボーナスポイント) + 12626380000(新規入手分) = 1000012634185100(現在のボーナスポイント)




 こんなにザクザクボーナスポイントが手に入るのなら、このブサフェイスをなんとかしてぇが、悲しいかな。いくらウィンドを開いてルックスを触ってもなんら反応してくれないんだ。

 魅力増減1に対して、ボーナスポイントはたったの50だった。


 今、1000012634185100もあるんだぞ。

 ええい! 1000倍、いや10000倍払ったっていい。

 なんとかしてくれよ。このブサメンフェイス。

 くそったれ、とぼやきながら何度も『ルックス』の文字を強く指で撫でた。



 このパーティの連中は優しいから何も言わんが、それ以外の連中からはいつもブ男呼ばわりだ。恭志郎は悪役の中ボスと蔑むし、梶田の最後の捨て台詞なんてひでぇもんだ。



 俺が絶対神だと知った後に言った奴の言葉――

 たぶん、俺がカッコいいイケメン野郎だったら、梶田は『……バ、バカな!? ……キ、キサマは神とでも言うのか!?』と言ったに違いない。

 それを聞いて俺は、人を信じることのできない特記事項を持つ梶田にこう答えるはずだった。


「信じるか信じないかは自由だ。良かったな。あんた、生まれて初めて人を信じることができる」


 そして、ババーンと決める予定だった。

 

 実際はそうではないんだ。

 梶田が言ったのは、『なんだハゲ。……バ、バカな!? こんな醜い豚が……』だったし。

 カッコいい決め台詞が、なんも思いつかなかった……




 今となっては、ものすげぇ後悔をしている。

 でもあの時この選択をしていなければ、ただの凡庸な戦士だったかもしれん。




 まぁなんにしても、俺には腐るほどボーナスポイントがある。

 これらの配分には十分気をつけなければならない。

 三大欲求をひとつ封じ込めると、10京入る。

 レベル9999の魔獣なんて滅多に遭遇できないだろうし、ここから先は更にレベルが上がりにくくもなるだろう。

 二つ、三つ潰している絶対神とぶつかる時には、十分に考慮して配分していかないとマズイ事態を招くだろう。

 つまりこれは最後の虎の子っていうやつだ。

 ボーナスポイント1000012634185100は、いざという時まで、温存しておくことにした。





 そんなことを悶々としながら考えていると、札束をリュックに詰め終わったお嬢様が、


「貧乏で意地汚いしげるさん。お金持ちの私が買ってさしあげますわ」と俺を買い物に誘ってきた。



 お嬢様の趣向は意外だった。

 宝石などの装飾品を買うと思ったのだが、子どもが遊びそうな着せ替え人形やらトランプやら、人生ゲームのようなボードゲームを買いだす。



 ボードゲームを手に取ると、なんとも嬉しそうに顔をほころばせた。


「これ、みんなでやりましょ!」




 ところでお嬢さま。

 ゲームを買いに行くのに、5000万円持っていく必要があるのか?

 1万円で釣りがくるぞ。

 まぁいっか。

 筋トレにはなる。

 頑張れよ。お嬢様。

 その辺を歩いている小僧に、持ち逃げしたら『ファイナルディスティネーション改2』でお空の星にしちゃうぞコースで金を運ばそうと思ったが……まぁいいか。必要以上の金は足枷にしかならないことを教えるには絶好の機会だ。

 だけどお嬢様は重たいリュックを背負って「んしょ、んしょ」と言いながら、ニコニコしながら帰路を歩いて行った。

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