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ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
第一章 新たなる人生の幕開け
23/78

23 腐った化け物

 一時間くらいだろうか。

 丘に座ったまま、茫然としていた。

 思考が止まっていた。

 

 今日は、あまりにも色々ありすぎた。

 

 

 そんな俺の後ろには、また人影。

 騒がしい一日だ。

 

 振り返ると、

「やぁ、ブサメンサムライボーイ君!」

鉄仮面テツメンガールか!」


 コロシアムで遭遇した、二つの煩悩を封じ込めて絶対神になった女。

 無表情のくせに、口調だけは妙に明るく、そんでもってチクチクとねちっこいから俺もあだ名をつけてやった。


「君は人が傷つくことを平気で言うんだな? それ、結構気にしているんだよ」

 と、白い仮面をつける。


「お前が先に俺を傷付けた。ブサメンと言われて深く傷ついた」

「嘘だ。だって君は、自らブサメンにするくらいだ。元々はかなりのイケメンだったんだろ? そんでもってあまりにもモテすぎて、女に嫌気がさして性を封じ込めた。ズバリ当たっただろ?」


 ふん、そんな悩みなら、是非あやかってみたいもんだぜ。


「違う」と首を振った。

「なんだ。違うのか。色々考えた挙句、絶対コレだと思ったんだけどなぁ。徹夜までして考えたんだよ」


「ふん、まぁどうせ寝られねぇんだろ?」

「まぁね。夜はあまりにも長すぎる」


「それよか、俺とあんた、多分、敵になると思うぞ。なんでノコノコとやってくるんだ?」

「敵? どうして?」


「俺は正義のパーティの黒子をやっている。お前のところ、えーと、何だっけか、そうそう、『オルドヌング・スピア』をぶっ叩く方に位置しているんだぞ?」

「あ、そういうことか。いいよ。私は適当にやっているだけだから、嫌な団体がいたら潰しちゃってよ。だけど、まぁ、少しは情けもかけてやってね。あの子達だって、それなりに頑張っているんだから。

 あ、ここ座っていい?」


 今日はどいつもこいつも……

 だけど、断る理由もないので、

「あぁ、座れよ」と言った。



 こいつ、天敵の女だし、二つを封じているとか言っていたから、戦ったら圧倒的に俺が不利なんだろうな。なんてことが頭を過る。



 だがあまりにも敵意を感じない。

 口調だってマヌケ。

 だからなのだろうか、易々と隣を許してしまった。


「ところで名前を聞いてもいい? 私は果莉茄カリナ。漢字はね……。まぁいっか。画数が多いし覚えるのだって面倒だろうから、カタカナ表記でいいよ」

「えらく適当なんだな。俺はしげる。ところで、本当は俺に用なんだろ?」



「だから友達が欲しいんだ。友達になってよ」

「友達? まぁ友達くらいならなってやってもいいが」


「しげる君。多分分かっていないと思う。友達っていうのは同じレベルで遊んだり喧嘩したり泣いたり切磋琢磨する間柄を言うんだよ。多分、しげる君の言っている友達は、ただのおしゃべり仲間」

「つまりどうしたいんだ?」


「本気の遊びをしないかって言っているんだ。例えば二人で競い合って国を強化するとか。絶対神らしい遊びでしょ?」

「それは面白そうだな。今の仕事が終わったら考えてもいい」


 お嬢様を独り立ちさせたら、その後何をしようか悩んでいたところだし。


「やっと乗ってきてくれたね。時々は戦争なんてして、領土を取り合おうよ。月に一回の頻度がいいかな。私は軍隊をかなり鍛えてぶつけるから応戦してよ!」

「いや、待て。残虐的なことはしねぇぞ。普通にいい国を作ろうぜ」


「いい国って何? まさか争いも災害もない国とか言うんじゃないよね?

 あれ、惰弱なだけだよ。

 天変地異が起きるから、人はそれを乗り越えて強くなれるんだよ?

 戦争するから、体や技を鍛え合ったり、武器を強化したり、知恵を出して創意工夫していくんだよ」

「いや、言わんとすることは分かるが、俺はそんなのを望んでいない」


「ふーん。偽善者タイプの絶対神を目指しているのか。

 じゃぁどうやったら、私の友達になってくれる?」


 こいつ、子供っぽい屁理屈ばかり言っているが、実は俺をバトルに誘っているのか?

 しかも大勢の命まで巻き込んだ神クラスの。


 そんな事をしている暇なんてねぇ。

 それに俺は大きな問題を抱えているんだ。


「悪ぃ。帰るわ。またな」

 俺は腰を上げて、歩き出した。


 カリナは、

「待ってよ。もう嫌なんだ。

 一人ぼっちは寂しんだ。そりゃ、適当な人に混ざる事はできるけど、全然つまんない。私は強くなり過ぎちゃった。

 寝ることも好きな人を作ることもできない負荷までかけているのに、やる事が何もないんだ。生きる目的がない。

 そ、そうだ。

 私の弱点を教えてあげるよ。

 色々あるけど、一番簡単に殺せるのは、私への口づけ。

 私は好きになった人から口づけを受けると、溶けて消滅する。

 どう? 私を惚れさせて殺すって遊びをしない?」


 仮面を外して、エメラルドクリーンの瞳で俺を見て、そう言った。

 それは何かを必死に訴えている無表情な少女だった。


 ……。


「あんた、何年ここにいるんだ?」

「……忘れちゃった」


 こいつ、やることが無くなった哀れな神様だったのか。

 なら誘ってみるか。


「俺は仲間達をゴールへ導く使命がある。まぁ俺が勝手に決めたゴールなんだけどさ。もし良かったら手伝わないか?」

「なるほど、反対勢力になれってことだね」


「違う! 味方だ。こっち側に入れよ。楽しいぜ?」

「神と神が組んでも全然面白くないじゃん? 結果が見えているのにどうして楽しいの?」


 もしかして俺は、まずい事でも口走ってしまったのか?


 もうこいつとは関わらない方が無難だ。

 難癖つけて、俺と張り合いたいだけなのだろう。

 こんなのとぶつかったら、誠司さん達に多大な迷惑がかかる。


 だから問うた。

「なぁ、他にも絶対神クラスいるんだろ? そいつと遊んでもらえ」


 そんでもって、どっかに行っちまえ。


「あと一人いるけど……。

 私は『神様に会いたい』って特記事項に書いたから、どんな神でも見つけるアンテナを持っている。色々な神を見つけたよ。微妙なのが多かったけど。

 パラメーターの配分や選択したスキルによってクラスが決まるみたいで、育て方を間違えちゃうと変なのになっちゃうみたいなんだ。

 井戸の神なんてのもいて、そこそこ強いんだけど30分以上井戸から出られないオプション付きみたいで、本人いわく、トラップクラスにやられたんだって。なんだか可愛そうだった。

 とにかく圧倒的実力を持つ絶対神は、この世界に私と、しげる君、その人しかいない。

 その人は最近この世界にやってきて、しげる君のように最速で絶対神まで昇格した」

 

 まだいたのか。

 めんどくさいな。

 

「ほぉ。じゃぁ、そいつと友達になれ」

 そして潰し合え。


「友達になろうと思って近づいたんだ。そいつ、すごいよ、三つも潰していた」


 食欲。性欲。睡眠の欲求。すべて潰したのか!?

 寝ないのも辛いだろうが、そもそも何も食わんでも生きていけるのだろうか?

 まぁ適当な事を書いて防いでいるのだろうが、飯すら食えんなんて、もう生きていて何が楽しいのか分からん。

 だが、恐ろしく凄まじいボーナスポイントを貰っていそうだ。



「面白そうなヤツじゃないか? 仲良くしてもらえ」

 そして心置きなく潰し合え。

 迷惑だから、ずっと遠くに行ってね。



「それが駄目なんだ。その人とは、まともな会話ができなかったんだ。何とも言えない変な子でね。生理的というか、本能がそいつに近づいちゃあ駄目って言うんだ」



 まぁそりゃ、全部の欲求を潰すなんて相当の変態だろ?

 まともな奴の筈がない。



 表情の無いカリナだったが、額には汗を浮かべて、こう言葉を繋げた。


「なんていうか、一言で表すなら、そいつ……

 ――腐った化け物だった」

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