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ブサメンガチファイター  作者: 弘松 涼
第一章 新たなる人生の幕開け
18/78

18 潜入

 ミッション:カジノを隠れ蓑にした裏組織の完全壊滅




 カジノには裏の姿があり、梶田氏は、ほぼ黒だと断定はできているのだが、確固たる証拠があるわけではない。

 今の状態で役場に申告したところで、この国に来たばかりの俺達の意見など通るわけもなく、門前払いが関の山だろう。

 


 

 ハンバーガーショップでお昼を済ませると、二手に別れて行動をとることにした。


 集合場所は、現在利用している宿屋ということにして、まずはどのくらいの組織なのかを徹底調査する事になった。

 

 ・カジノ偵察メンバー

 お嬢様と俺

 

 ・怪しい仕事の調査

 誠司さんとリーズ


 俺達カジノメンバーは、ノーマークで裏カジノの奥深くまで潜入するために『ド田舎からやってきた、とある世間知らずのわがまま令嬢とその護衛の者』という設定になりきることにした。



 洋服店に行くと、お嬢様は、豪華な黒いドレス、ハイヒール、白いハットを購入し、それっぽく見立てていく。

 長い黒髪を青いリボンで束ねて、うっすらとソフトピンクの口紅をひき、マスカラやアイラインで目元を大きくみせる。

 意外とよく似合う。

 鏡を見るとうれしそう。


「あ、パタパタダッシュは、レディーぽくないのでやめましょう」

「……はい」しゅん。



 

 


 *


 カジノの奥にある豪華な応接間。

 梶田氏は紅茶を入れて、テーブルの上に置く。

「ボディーガードの方もよろしければ」 

 梶田氏はサングラスを外し、キツネのような細い目を、更に細くしてにこやかに笑い、会員登録書を机に置く。


「書けるところまでで結構です」


 それには氏名、年齢、性別、出身地といった個人情報から始まり、なぜか、レベルやスキル、特記事項まで書く欄がある。

 

 お嬢様はソファーに腰を掛けて、会員登録書に目を通して、ペンを握る。


 もちろん打ち合わせした通り、適当に書いている。

 梶田氏はそれを逐一大げさに褒めている。



 こいつは嘘を見破れるらしい。

 その精度に注目していた。

 

 脳内が覗けるのか?

 それともリーズのように、正しい事項にはラインで記され、それで分かるのか?



 梶田氏は、

「だいたいでよろしいので年収欄もお願いします。聖華様が一年間に自由にできる額という解釈で大丈夫です」


 お嬢様が書いた数字は、250万rira。

 日本円にして2億5千万円だ。


「さすが大富豪ですね。正直驚きました。ここは日本と違って累進課税のようなお金持ちにとって不公平になるような税制もないので、うらやましい限りです。

 でも、本当はもっとあるのでしょう?」


「はい。ありますが、内緒です」


 梶田氏はクスリと笑った。


「そうそう。私の年収を聞いて笑わないでくださいね。たったの8万rira(日本円換算:800万円)です。これだけのホールを任されている割には、少ないでしょう?」


「はい、少ないです」とお嬢様。


「本日は1万riraくらい換金されて遊ばれますか?」

「いいえ。もっと換金します」


「2万rira?」

「いいえ」


「3万rira?」

「もっとです。私はお金持ちです。なんかバカにしていませんか?」


「いえ、滅相もございません。ご予算をお聞きして、失礼のないようにおすすめするゲームを選別しようかと思いまして」



 梶田氏はお嬢様のプロファイルシートを受け取ると、下記に、ささっと小さな点を数個振った。


 それは芥子粒けしつぶのように小さな文字だ。

 梶田氏は、素早さ、器用さにはかなりの自信があるのだろうが、絶対神の目の前で書いては駄目だ。


 俺には『超視覚』と『動体視力補正』のスキルがある。

 なんて書いたのか丸分かりだ。


 

『記載日:XXXX年XX月XX日

 みえっぱりなお嬢様。年間所得800万円未満。本日の所持金、300万円前後。』

 と、追記した。


 

 梶田氏は始終『~ですか?』という問い方をしていた。

 彼の嘘を見破る能力は、嘘発見器のように相手に問いかけて、返ってきた答えの正誤判定ができるといった感じか。


 とにかく脳内まで分かる訳ではない。

 まぁ、心が読めないのは最初から分かっていた。

 もし読心術ができたのなら、そもそもお嬢様をビップルームに誘わない。


 ただ単に無駄遣いしまくっているだけなんだから。


 

 梶田氏は俺にも、さぐりを入れてきた。


「すばらしい体格ですね? これだけのお方を護衛されているということは、やはりレベルは50以上と見ましたが」


 当たりを付けて、俺の強さを聞き出すつもりなのだろう。

 最初のバトルでちょろっとゴブリンを殺しただけなのに60もある。


「レベル自体はそこそこあります」と俺。


 梶田氏は、目を線のように細めた。

「レベル、70以上?」

「いいえ。さすがにそこまでは。それよりかパラメーターを適当に配分しまして、お恥ずかしいかな、ゼロが多いんです」


 嘘ではない。


「戦士系ですか?」

「ガチファイターです」



 先ほどのプロファイルシートに、また点を振り、そしてクリアファイルにしまった。



 梶田氏のメモにはこうあった。

『護衛のレベル 50~69と比較的高い。ただしステータスに偏りがあるので脅威ではない。もし暴れだしたら魔法で沈めろ』




 こうして会員登録が終わり、エントランストと呼ばれる裏カジノへ通された。

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