第1話:始まりの不合格
この度、人生で初めて小説の執筆に挑戦させていただきました。そのため、非常に拙い文章になっていると思います。様々な読者様からのご意見・ご指摘をお待ちしております。
「2004……2009……20…あ。」
彼の番号である2011はそこに無かった。しかし彼は特別悲嘆するでもなく、その「事実」を確認すると、合格発表の掲示板に背を向けた。隣では体育会系のクラブ在校生が、合格者の胴上げを行っていた。彼はその光景を、ただ冷ややかに見つめていた。
「ま、こんなもんだろう。」
彼は表情を全く変えることなく、ただ帰路についていた。すれ違う人の多くは緊張した面持ちだった。自分もあんな表情をしていたのだろうか。そんな顔をしていた自分を想像すると、滑稽でたまらなかった。こうなることは18年前から定められていたはずなのに…。
その青年の名は神村大地。たった今、第一志望校としていたF大学の不合格を告げられた18歳の男である。とりあえず親に知らせておこう、彼は携帯電話をとった。母親が息子からの電話がかかってくる時間を知りえていたかのごとく、その呼び出し音はすぐ鳴り止み、向こうから母親の声がやってきた。
「大地?」
「…あ、もしもし、うん、俺。大地。」
「どうだった?」
開口一番に母親は尋ねてきた。
「うん、無かったよ。」
「…そう…。……。」
「…いや、別に無理になぐさめようとしなくてもいいよ。俺、そんなにショック受けてないし、それに押さえの大学には受かってるからさ。」
「うん…。ま、とにかく早く帰っておいで。これでつらい受験生活も終わったんだから。」
「うん。わかった。じゃ、また後で。」
つらい…。いや、つらくはなかった。彼は受験、ひいては大学にそれほど意味を感じていなかったから、骨身を削るような受験生活は送っていなかったのだ。受験と関係のない夢を持っていたわけでもない。ただ、自分にとって行く大学がどこであろうと、それほど重大な意味は持っていなかったのだ。同時にそんな気持ちでいる自分が志望校に受かるはずがない、ということも悟っていた。だから彼は努力という手段をとらなかった。しかし彼はそんな自分を悔やんではいない。現に不合格を告げられても、粛々と受け止めている彼の様子そのものが、何よりの証であろう。ショックを全く受けなかったか、といわれれば決してそうではない。ただ、用意されていた結果を受け止めきれていただけの話だ。不合格で泣き崩れる受験生は、その不合格という事実を受け止め切れていない、ということだ。彼にはそれを受け止める心の準備が整っていた、ただそれだけのことであった。
こんな日に限って、空は快晴だった。合格者は、
「良いことのお告げたったんだ。」
なんて、後付のくだらない解釈をするんだろう。そんな強い太陽の日差しを受けた大地は、
「うぜーな…」
と、小声で呟いた。その瞬間それ違った人が一瞬振り返って大地を睨み付けたが、彼にはそんなことは見えていなかった。ただ、太陽が「うざ」かった…。
合否の事実に関係なく。