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家出魔王は勇者に選ばれました——人類側の最終兵器が聖女だった  作者: LightWell


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第15話 「旅は続く」

ごぉん。


ドゴオオオオン。


白煙。


静寂。



領主館が、半分になっていた。


背後の街が、放射状に吹き飛んでいた。


綺麗だった。


本当に綺麗に、均等に、放射状に。



グロワールが、どこかへ飛んでいた。


衛兵二十人が、どこかへ飛んでいた。



まりっぺがメイスをどこかへ仕舞った。


「あらあら、少し力が入りすぎてしまいましたわ」



誰も返事をしなかった。



チトが柱の陰からそっと出てきた。


「……綺麗に放射状に吹き飛びましたね」


「吹き飛んだな」


「領主館が半分ですね」


「半分だな」


「街も」


「街もだな」



ガレットがのそりと外を眺めた。


「きれいにとんだねーー」


「飛んだな」


「まーるくーー」


「丸くな」



メルが腕を組んだ。


「……まあ、自業自得じゃ」


「そうだな」



そのとき。


上空が光った。



『やめてまりっぺ、本当にやめて』



声が降ってきた。


降りてはこない。



『またセバスさんに怒られるから』


「もう終わった」


『終わったの?』


「終わった」



長い間があった。



『……どのくらい』


「領主館が半分」


『あー』


「街が放射状に」


『あーあー』


「綺麗に飛んだ」


『あーあーあー』



光がゆらゆら揺れた。



『セバスさんになんて言おう』


「知るか」


『請求書』


「来るだろ」


『マオ様宛で』


「来るだろ」



アルがしばらく黙っていた。



『……ごめん』


「謝る相手が違う」


『街の人にはもう手配した』


「そうか」


『神様なりに、できることはするから』


「頼む」



光が、少し揺れた。



『マオ、疲れてない?』



マオは空を見た。



「疲れてるな」


『だよね』


「まあ、慣れた」


『そっか』



間があった。



『……まりっぺのこと、ありがとう』



マオは答えなかった。


しばらく間があった。


光が、静かに消えた。



街の人々が出てきた。


呆然と、放射状に吹き飛んだ跡を見ていた。



街長が出てきた。


「……領主が」


「飛んだ」


「館が」


「半分だ」


「街が」


「申し訳ない」



街長がしばらく黙った。


それから、小さく言った。



「……領主には、前々から困っておりまして」



マオは街長を見た。



「民から税を取りすぎる、商人を脅す、よそ者を囲い込む」


「そうか」


「今回も、聖女様を」


「知ってる」



街長がため息をついた。



「……修繕費の請求書は」


「作ってくれ。宛名はマオ様で」



街長が不思議そうな顔をした。


それ以上は聞かなかった。



チトが小声で言った。「……また請求書が」


「増えたな」


「今度は街丸ごとですよ」


「知ってる」


「セバス様が」


「知ってる」


「モノクルが」


「また割れるだろ」



その夜。


宿に泊まった。


チトが飯を作った。


いつも通りうまかった。



ガレットが「おいしいーー」とゆっくり言った。


メルが無言でおかわりをした。


まりっぺが「あらあら、美味しいですわね」と微笑んだ。



マオは椀を受け取った。


一口、すすった。



(うまい)



しばらく、誰も何も言わなかった。


ただ、飯を食った。



まりっぺが椀を両手で持って、目を細めた。



「あらあら」


「なんだ」


「こんなに大勢で、毎日ご飯が食べられて」



少し間があった。



「……幸せですわ」



焚き火が、ぱちりと鳴った。



チトが耳をぴんと立てた。


ガレットがゆっくり微笑んだ。


メルがおかわりの手を止めて、少し目を細めた。



マオは椀を見た。



(そうか)



「……そうだな」



まりっぺがにこりとした。


それだけだった。


それだけで、十分だった。



翌朝。


出発した。


街道を歩いた。



草が生えていた。空が青かった。聖剣がチリチリと熱かった。ヴァルドが監視していた。


いつも通りだった。



チトが地図を広げた。「次の街まで、一日ほどです」


「そうか」



ガレットが「またあるくーー」とゆっくり言った。


「歩くな」


「えーーー」


「歩く」


「わかったーー」



メルが腕を組んだ。「次の街では美味いものが食いたいのじゃ」


「チトが作る」


「屋台でもいい」


「財布と相談する」



まりっぺが微笑んだ。


「あらあら、楽しみですわね」



マオはため息をついた。



聖剣がチリチリと熱い。


財布の中身は、まあまあある。


請求書がまた一枚、増えた。


魔王城は、まだ遠い。


でも。



(まあ、それだけでも)



空が、青かった。


一行は歩いた。

家出魔王は勇者に選ばれました——人間側の最終兵器が聖女だった、第一部ここまで。


旅は続く。


ご要望が多ければ、続きを執筆します。


マオとまりっぺの旅は、まだ始まったばかりです。

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