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家出魔王は勇者に選ばれました——人類側の最終兵器が聖女だった  作者: LightWell


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第14話 「領主様のご招待」

次の街は、大きかった。


城壁がある。門番がいる。旗が立っている。


門をくぐると、出迎えがあった。


馬車だった。



御者が恭しく頭を下げた。


「勇者様御一行とお見受けします。領主グロワール・ポワソン様よりご招待でございます」



マオは御者を見た。



「……断れるか」


「難しい状況でございます」



チトが耳をぴんと立てた。「……来る前から把握されてたんですね」


「そうだな」


「情報が早い」


「早いな」



嫌な予感がした。


乗った。



領主館は、街の中心にあった。


でかい。豪奢だ。趣味が悪い。


金色の装飾が多すぎる。



広間に通された。


領主が出てきた。



グロワール・ポワソン。


でかい。横に。


つるりとした頭。


小さな目が、ぎらぎら光っている。


腹が、ボタンを押している。



「ようこそ、勇者殿」



にたりと笑った。



マオは笑い返した。



(何が目的だ)



まりっぺが微笑んだ。


「あらあら、ごきげんよう」



グロワールの目が、まりっぺに向いた。


一秒。


二秒。



(……ああ、そういうことか)



目的が、わかった。



食事が始まった。


豪華だった。


皿が次々運ばれてくる。



グロワールがまりっぺの隣に座った。



「聖女様、お噂はかねがね」


「あらあら、どのような?」


「大変なお力をお持ちとか。これほどの美しい方がとは、驚きました」



まりっぺが微笑んだ。


マオは料理を食べた。



(聞こえてる。聞いてる。黙ってる)



グロワールが続けた。



「しかし、聖女様のようなお方が、なぜあのような者と旅を?」


「あのような者とは?」


「勇者殿ですよ」



グロワールが声を低くした。



「実は私、少々気になっておりまして」



マオは皿を見た。



「あの者、素性が知れない。どこの出身とも言わない。名前すらまともに名乗らない」


「マオ様ですわよ」


「マオ、マオと言いますが、本名かどうか」



チトが耳をぺたりと倒した。


ガレットがぬぼーっと料理を食べている。


メルが目を細めた。



「聖女様を守るどころか、聖女様に守られているとの情報もある」


「あらあら、そのようなことは」


「いやいや、聖女様はご存じないかもしれませんが、あの者が現れた後に各地で被害が出ている。山が消えた、城壁が吹き飛んだ、各地に請求書が届いている」



(全部まりっぺだが)



「あの者が何か関係しているのでは、と噂されているのですよ」



マオは料理を食べた。



(はぐらかせる範囲で対処する)



「さらに言えば」



グロワールが身を乗り出した。



「魔族と何かつながりがあるのでは、という話もある」


「旅をしていれば色んな人間と会う」


「ほう、つまり」


「それだけだ」



グロワールがにたりとした。



「では魔王ではないかという噂はどうですかな」


「俺が魔王に見えるか」


「……まあ、見えませんが」


「だろ」



グロワールが少し引いた。


それでも、諦めなかった。



(しぶといな)



「しかし聖女様、この者が各地で引き起こした被害をご存じですか。山が消えた。城壁が吹き飛んだ。これは」



まりっぺが首を傾げた。



「あらあら、それはわたくしですわ」



グロワールが固まった。



「……は?」


「山も、城壁も、わたくしが壊しましたの」


「……」


「マオ様は止めようとしてくださっていましたのよ、いつも」



グロワールがマオを見た。


マオが頷いた。



「止めようとしていたな、いつも」



グロワールの顔が、ゆっくりと赤くなった。


話が、思っていた方向と全然違う。


それでも、諦めなかった。



「……しかし、聖女様のようなお方が、このような素性の知れない者と旅を続けるのは、危険です。私が責任を持って」



まりっぺが首を傾げた。



「あらあら、危険?」


「そうです。あの者といると、聖女様に何かあってからでは」


「あらあら、マオ様はいつもわたくしを心配してくださいますわよ」


「しかし」


「あらあら」



グロワールが諦めなかった。



(本当にしぶとい)



「聖女様さえよければ、今すぐにでも私が」



グロワールが手を叩いた。


乾いた音が、広間に響いた。


扉が開いた。



衛兵が入ってきた。


十人。二十人。


じわじわと、囲んできた。



グロワールがにたりとした。



「聖女様、少々ご足労願えますか。ゆっくりお話がしたい」


「あらあら」


「当然、勇者殿たちには別室でお待ちいただいて」



マオは立ち上がった。


衛兵が剣に手をかけた。



「お座りください、勇者殿。ここは穏便に」



グロワールが続けた。



「聖女様のお力は素晴らしい。温泉の湯を聖水に変えたとか、各地で奇跡を起こしているとか、そのようなお方がこんな辺鄙な旅を続けるのは勿体ない」



(温泉の件まで知ってるのか)



情報が早い。



「私の館であれば、聖女様に相応しい環境をご用意できます。それに、聖女様のお美しさは……」



グロワールの目が、まりっぺを舐めるように動いた。



「もったいない」



チトが耳をぺたりと倒した。


メルが静かに椅子を引いた。


ガレットがぬぼーっと衛兵を数えた。「にじゅうにんーー」


「数えるな」



まりっぺが微笑んでいた。


穏やかな顔だった。


いつもと同じ、穏やかな顔だった。


ただ。


何かが、部屋に満ちてきた。



マオは、まりっぺを見た。



(……限界が近い)



「グロワール」


「なんですかな」


「本当にいいのか」


「何がですかな」



マオはまりっぺを顎で示した。


グロワールが首を傾げた。



まりっぺが微笑んでいた。


メイスが、現れていた。



グロワールが、まりっぺを見た。


まりっぺを見た。


メイスを見た。


まりっぺを見た。



「……あの、聖女様?」


「あらあら」


「そのメイスは」


「あらあら」



衛兵たちが、じりっと後退した。


獣の本能だった。



グロワールが額に汗をかいた。



「……少々、お待ちを」


「あらあら」


「その、私が申し上げたかったのはですね」


「あらあら」



マオはため息をついた。



(間に合わなかった)



まりっぺのメイスが、ゆっくりと持ち上がった。



チトが素早く柱の陰に入った。


メルが小さな体で別の柱の陰に入った。


ガレットが盾を構えた。


マオが一歩、引いた。



グロワールが叫んだ。



「待っ——」

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