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家出魔王は勇者に選ばれました——人類側の最終兵器が聖女だった  作者: LightWell


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第1話 「詰んだ」

挿絵(By みてみん)

魔王城を家出して、半年。


人間の街で、あっさり捕まった。


――まあ、そうなるとは思っていた。


問題は、そのあとだった。



縄をかけられたまま連れてこられたのは、王宮。


豪奢な玉座の間。磨き上げられた床。整列する騎士たち。


どう考えても、処刑前の雰囲気ではない。



玉座の上から、王がこちらを見下ろした。


「……この者で、間違いないか?」


隣に控えていた側近が、迷いなく頷く。


「はい。間違いありません」


(なにが?)


嫌な予感しかしない。



そのとき、重い扉が開いた。


静かに入ってきたのは、豪奢な法衣を纏った男。


――大司教。


「では、儀を執り行います」


その一言で、空気が変わった。



床に巨大な魔方陣が描かれる。


光が走り、空気が震える。


(いや待て。これ、俺が知ってるやつだ)


嫌な記憶が頭をよぎる。


逃げようとしたが、遅い。



光が、降りた。



天から差し込むような白い光。


音はない。ただ"意味"だけが、頭の奥に流れ込んでくる。



――神託。



誰もが息を呑み、耳を傾ける。


そして。



『勇者に選ばれました』


『"それ"を止められるのは、貴方だけです』



「……は?」



静まり返る玉座の間。


俺だけが、現実に置いていかれていた。



「え?神様ってバカなの?」


思わず口から出た。


「なんで俺が勇者なんだよ」


(現役魔王だぞ?)


ざわ、と空気が揺れる。


気にしない。


「……あと今の何」


「"それ"止められるのはお前だけって」


「なにその不吉ワード」



誰も答えない。


代わりに――



ちら、と視界の端に映った。



大司教が、小さくガッツポーズをしていた。



(……ああ、なるほど)



全部、繋がった。



(俺、これ"当たり"引かされたな)



王が満足げに頷く。


「これで、我が国にも希望がもたらされた」


側近も続く。


「聖女様と合わせれば、万全かと」



(……は?)



嫌な単語が聞こえた。



「聖女?」



大司教が、にこやかに答える。


「はい。勇者様の補佐を務める、我らが誇る聖女様です」



(やめろ)



本能が、警鐘を鳴らす。



(それ、絶対ろくでもないやつだろ)



だが、もう遅い。



再び重厚な扉が開いた。


ゴン、ゴト、ガキッ



……いや。


正確には、外れた扉を片手で抱えていた。


本来そこにあるはずの扉は、枠ごと消えている。



「あらあら、また少し力を入れすぎてしまいましたわ」



扉を、ことりと床に立てかける。



「気のせいですわ」



柔らかな足音。


静かに、優雅に。



現れたのは――一人の少女。



白い衣。穏やかな微笑み。


そして。



「あらあら、はじめまして」



その一言と同時に。



空気が、歪んだ。



(……見覚えがある)



いや、違う。


知っている。


魔王軍での呼び名。



――"殺戮天使"。



(史上最悪の最終兵器だ)



「詰んだ」



「これから一緒に頑張りましょうね、勇者様」



にこりと微笑む聖女。



その背後で、柱の一部が音もなく崩れた。



「……今、壊れたよな?」


「気のせいですわ」



さらに壁にヒビが走る。



騎士たちは誰も動かない。


むしろ、誇らしげに頷いている。



(なんでだよ)



数分後。



俺の手元には、一枚の紙があった。



「こちら、修繕費になります」



淡々と差し出される。



「……いくらだ?」


「金貨三百枚ほどで」


「豪邸が買えるが?」



即答だった。



「いやアレ、おたくらのだよね?」


「勇者様の管理責任です」


「理屈が迷子なんだが?」



横で聖女が微笑む。



「あらあら、お仕事が増えてしまいましたわね」


「増やしてるのはお前だよ」



ふと、さっきの光景を思い出す。



拍手。笑顔。見送り。



「……俺ってさ」



誰に言うでもなく、呟いた。



「結局、危険物を擦り付けられただけじゃねえの?」



「ねえなんでみんな聖女をニコニコ送り出してんの?」



「あら、皆様お優しいですもの」



「優しさの使い方バグってるだろ」



俺は、ため息をついた。



――面倒ごとから逃げたはずなのに。



気づけば。



災害の管理係になっていた。

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