第9話 バタフライエフェクト
それは“いつもの日常”の“いつもじゃないヒトコマ”。
そう誰もが感じて流すようなバタフライエフェクト。
現場に着いた直後に監督からの電話が鳴った。
『相原くん、もう着いていたりするかな?』
「丁度今、着いたところです。」
『やっぱり君はデキる男だね。そんなデキる男にちょっと頼みがあるんだ。』
“いつもの”虫の知らせだ。
『実は、コッチの連絡ミスで材料が今から搬入するそうなんだが、まだ向かってる最中ですぐには着きそうもなくてな。
そこは病院とか近いから大型車を路上待機させたらクレームの材料になる。
悪いが、荷物の受け取り・車輌出しまで頼むよ。』
「事情は分かりましたが、置き場所とかわからないですよ?」
『いつものところあたりに寄せといてくれたら大丈夫。ワシが着いたらまた指示するし、職人が先なら作業のやりやすいように運ぶだろ。
細かいところは案配良く頼むよ。
着いたらなんとでもなる。』
やっぱりだ。こんな風に言っておきながら、問題あると解決した事を貸しにされる。
「最低限はやっておきますから、誰かサポートするように言っといてくださいね。」
『もちろん、君ならこの時間でも“どうにか”してくれると思ったよ。さすがは見込んだ男だ。』
まあ、実際のところは何の問題もなく終わったわけだが、監督が来たのはトラック出たのと入れ替わり。
実は単に早出が面倒だったから押し付けたんじゃ?と疑いたくなるタイミングだった。
『今回はいやいつもだな、ホント助かったよ。監督代理の腕章作っとくか?』
「冗談めかして言質とるのやめてくれません?」
『そんな人聞きの悪い、でも細かい匙加減はよっぽど慣れたもんだろ?職人ともさ。』
確かに、いつものごとく“媚びも売らないがケンカも売らない程度の愛想”での距離感だが、作業員との世間話が増えてるのは否定できない。
長いこと一カ所に留まればこんなモノなのだろう。
しかし、居心地の悪さを感じずにはいられないのは“流し”の性か。
『ところで、今日を含めていつも無理言ってる罪滅ぼし替わりじゃないが⋯』と、監督はニヤリと笑った。




