第6話 一度だけ来たにーちゃん
“珍しく、ココの現場は続くな”
そう思ってた矢先、その【赤紙】はスマホに届く。
「明日は、〇〇建設の✕✕の現場」
こういう時に限って⋯と思いながら、ふと気づく。
“あれ?アソコはいつも固定の人が指名だったんじゃ?”
「了解しました。**さん御体調悪いですか?」
『実は、所長とちょっと揉めてね。この前ヘルプで行ってくれた時の君の印象良かったみたいで、指名。』
“あ〜ね、いつものやつね”
「じゃあ、ココの引き継ぎどうしますか?」
『大丈夫、**さんに行ってもらうから問題ない』
ココの所長から色々段取り聞いている。
まあいいや。なるようになるだろ。
さて、この所長は前に一度顔合わせただけだ。
何がよかったのやら。
『久しぶりだね。今回は無理言った。
あの人、代わりに仕切ってくれて楽だったんだけど、作業員さんからちょっとやりにくいって話が出てね。』
あ〜ね、**さんは優秀だけど仕切るからなぁ。
『で、職人の親方が“一度だけ代わりに来たにーちゃん。あいつは手元だった頃のワシをみるみたいな雰囲気持っててやりやすかった”なんて言ってたからお願いしたんだよ。実は私も思ってたからね。』
“にーちゃん”なんて呼ばれる歳でもないし、**さんの顔に泥塗らないように“少し”丁寧に対応はした。
でも、特別な事は何もしてないし何が気に入って貰えたのかわからない。
まあ、普段通りで問題ないならいいか。
「ありがとうございます。で、職人さん達に挨拶がてら段取り聞きたいんですが。」
『その昔気質の職人肌いいねぇ。君、実は歳ごまかしてる?』
「そりゃ、警備はセカンドワークってイメージありますが、俺はこのままの歳ですよ!笑」
そんな事言いながら、挨拶して回る。
「御指名ありがとうございます!笑。よろしくお願いします。」
『久しぶりやな〜!これから1年鍛えてやるわ!』
「自分、手元じゃなくて警備ですって。でも、空いてる時はこき使わってください。手元さんが嫉妬したりサボったりしない程度に。」
冗談のはずなのに笑えなかった。




