第20話 旅の始まり
あいかわらず蒸発しそうな暑さの中、なんとか形“だけ”保って仕事する俺。
でも、“俺じゃない”俺の噂はチラホラと乾いた風に舞う砂埃のように小さな渦を作りまたすぐ消える。
最初はあった気持ち悪さも“他人事”のように気にならなくなった。
8月になり夏休みを謳歌する子供が走り回る時期。
予想外の動きをする子供達は、工事関係者には“要注意人物”の集団だ。
とはいっても、やっぱり子供はカワイイのは間違いないから、色々話しかけてくるのには“愛想のいいオジさん”で応対する。
おかげで、兄貴分の地位を得てるらしい。
別に偉ぶるつもりはないが、兄弟も子供もいない俺にとっては悪い気はしない。
ただ、距離が近すぎるとやっぱり苦手だ。
そんなある日、お盆休みで田舎に行くんだと小旅行に目を輝かせて話す子供に相槌打っていると、
『あぶない!』
頭に何か当たった。
バレーボールがヘルメットにかする。
『ゴメンナサイ。大丈夫ですか?』
「なんともねぇ、丁度昼メシ後で眠くなるとこだったから、目が覚めて良かった。でも、他の人に当たらないように気をつけるのは忘れんなよ!」
『えっ?ありがとうございます』
怪訝な顔をしてボールを受け取る子供。
何か変な言い方したのかもしれない。
小旅行を話していた子供もビックリしている。
「ヘルメットあるから安心安全!君等も自転車乗る時はちゃんと冠れよ。」
本当にほぼ衝撃も無かったのだが、何かダルマ落としみたいに何かが抜けた気もする。
気のせいで済ますほど何も変わらない気がする程度。
自分でも言ったように、眠気が吹き飛んだんだろう。
ただ、ボーッと加減が増した気がするがこの夏になってからいつもの事だから問題にもならない。
話していた子供の態度が少し気にはなるが、天気のようにコロコロ変わる子供の気まぐれは、よくわからないから放っておこう。
ただ、首筋を冷たい汗が一本だけ伝った。
そういえば、本社から福利厚生?休み?についてうるさく言われてるから、お盆は休みになるらしい。
久々の連休だから、墓参り兼ねてロングツーリングの“旅”に出るか。
ーー何かを、確かめるみたいに。




