第18話 前はどうだった?
そんな、四六時中朦朧とした“意識”と“評価”の中で過ごすこと数日。
“以前”の感覚が戻ってきた感じがしてきたし、そうじゃない不快感も残る日々を過ごしていた。
いつものように朝イチの掃き掃除がてら打ち水をしていた時だった。
『久しぶりですね。別の人がしばらく続いたから担当変わったのかと思ってました』
そう声をかけて来たのは、お散歩老人の付き添い看護師さんだ。
「おはようございます。ホント久しぶりですね。ちょっと、短期集中で別現場“流し”にあってました」
『“流し”って、時代劇の罪人みたい。何かやらかしたんですか?』
「単なる“優しくない”現場で、行く奴いなくて白羽の矢が立っただけなんですがね」
『あぁ、tetsuさんそういうとこ得意そうですもんね。あっ、すみません。私までtetsuさん呼びして。改めて、私は宮本澪って言います』
「tetsuで良いですよ。改めて“tetsu”こと相原恒一です。その場その場で呼び名変わるのはその地域に認めて貰ったみたいで嬉しいですし、正直ありがたい」
『ありがたい?』
「ココは暫く固定で来てますが、基本“日替わり弁当”というか毎日違う所に行かされるんですよ。だから色々な場所で色々な方と会うんです。」
「ありがたい事に、皆さん気さくに声かけてくださるんですが、多すぎて覚えきれなくて⋯呼び名違うと“ココの現場で会った人だ”ってなるんです。」
『なるほど!じゃあ、これからもtetsuさんって呼びますね』
「そのほうがありがたい。ところで宮本さんはこの時間に通られるのは珍しいですね」
『澪でいいですよ。私だけtetsuさん呼びは申し訳ないので。
ご存知だとは思いますが、私この近くの再生会病院で看護師してまして、この時間はシフトの合間なんですが急遽の事案で連続勤務になったんで向かう最中なんです』
「無理されないでくださいね」
『その言葉、そっくりお返しします。何か以前と雰囲気が違うみたいな⋯。
あっ、ちょっと触れましたけど、脈少し早いですね。目も少し焦点があってない。
自覚あります?
今年はかなり酷い暑さが続いてますから、体調崩す人が続出して人出が足りなくて。今回もそれが原因なんですよ。っておしゃべりしすぎました。仕事の邪魔してすみません。じゃあ』
(確かに、最近本調子じゃない気がしてるけど、プロがみたらすぐわかるもんなんだな。でもそんなに違ってるのか?前の俺⋯?)
(それより、いつから俺は“tetsu”を受け入れていた?)




