第16話 知らない声
それは“ボタンの掛け違い?”、“寝た子を起こした?”そんな始まり。
その夏は後に“例を見ない猛暑”と呼ばれる。
ある日、いつも“じゃない”現場連絡。
またかと思いながら、フラットに
「引き継ぎは?」
返答は予想通り
『俺が行くから、なくても大丈夫』
所長、事務所の俺のこき使い具合に“物申す”状態だったのを宥めてたんだが⋯。
お手並み拝見といこう。
で、そんな“犠牲”払ってまでの現場とは?
“学校近くで登下校時間の対応にクレーム”の受け皿らしい。
確かに、短期間(建設中)の接点とはいえ、工事現場はいわゆる“アウェイ”状態。
施主以外でも現場周辺の意見は“ホームタウンディション”で正論になる。
だから、正直こちらに非がなくても、周辺から“黒と言われれば白も黒”なのだ。
そのためにも営業スマイルならぬ“営業愛想”は必須。
そこで、自分で言うのは複雑なのだが“爆弾処理班”の俺の出番らしい。
俺不在の惨事はこの際おいといて、“緊急消火隊”を全力でこなす。
ただ、今回はそうはいかなかった。
連日の猛暑で体調的にはグロッキーだが、“一度受けたらケツは持つ”ポリシーなので、“弱音は吐けない”というか吐かない”
とはいっても、最低限の仕事はするものの意識はフワフワ。
気がつくと夕方。家にいて、どんな一日だったか定かではない。
そんなある日、“自分の声”で我に返る。
『そこ、後ろから車きてるだろ!避けんか!』




