第14話 再会
今日は一年一度の試練の日。
といっても、別に辛いわけじゃない。
単なる健康診断。
かといって、健康マニアなわけじゃない。
まあ、50も過ぎて若い頃の不摂生の負債がたまり、少しずつ健康を意識して実践することで返済しなきゃなのは認めたくない事実だが。
結局のところ、仕事のためだ。
年に1回の職務セミナーと同様、“不健康ではない”事が証明されないと現場にでられない。
セミナーを“技術”のアップデートとするならば、いわば“健康”のそれだ。
だが、さっきも言ったように健康でもないが、何かの依存症ってほど病んでもいない。
だから、気が進まないのは別の要因。
体調と全く関係ない“気持ち”の問題。
一種の“尋問”だ。
まずは、問診票への記入。
住所、氏名etc.と記入してゆき、「緊急連絡先」でいつも手が止まる。
家族がいれば、何の躊躇もなく済まされるそれは、天涯孤独の俺が選ぶのは「その他」。
会社の上司に頼んでいる俺は、毎年嬉しくもない“孤独”と御対面だ。
それ以外にも、本社の社長に頼めないのですぐ上の上司の名前書くのだが、入れ替わりの多い業界なんで毎年名前が変わるのも面倒な要因なのだが。
電話帳のデータを見ながら書いて、受付をくぐる。
消毒液の匂いと独特の空気“異世界”召喚された俺は、血圧計やレントゲンなど大小の機械達とのバトルに挑む。
無事戦地をあとにした俺をラスボスが待ち受ける。
『検査お疲れ様でした。気分悪くなったりしてないですか?この問診で最後ですのでもう少しだけつきあってください。毎回お聞きして申し訳ありませんが、ご家族に、癌や糖尿病をお持ちの方は〜』と、いつものごとく家族の“記憶”との定期面談。
『以上で終わりです。お疲れ様でした。結果はいつものように事務所にお送りするだけで良かったですか?』
「家族分も上司ですから、一通でいいですよ。何かあったら事務所が判断するでしょうから。」
このやり取りに事に何の不満も感傷もないし、もう慣れた。
先生や看護師さんに挨拶して即帰宅。
どちらにしても、今日は休み扱いだからツーリングでも行くか?
そんな事を考えてアパートに着く。
鍵を差し込む。
いつもより、うまく回らない。
俺のほうが、うまく回っていないのか。
そんな時、思わぬところから声がした。
『おかえりなさい。今日も昼までだったんですか?』




