第13話 身に覚えのない親切
「あれ?確か⋯」
今日は早く現場終わったから、ちょい近場を流そうかと思ったのだが⋯。
グローブが見当たらない。
確かこの棚あたりに置いたはずなのに。
勘違いか?ココじゃないとするとドコだ?
最近、こんな事多いな。
疲れてるのか?ツーリングやめるか?
と、探していると“きちんと揃えて”ヘルメットの中にあった。
疑問に思わないでもなかったが、細かい事は気にせず出かける。
近くのコンビニで、知った顔を見かける。
でも、声をかけるほどの仲でもない相手。
驚いた事に向こうから声をかけてきた。
『この前はありがとうございます。助かりました。』
心当たりはなかったが「いえ」とだけ答えた。
『連勤で、夜勤明けって言われてたのに⋯、手際よくポストのガタツキ直して驚いちゃいました。』
確かに、この前は連勤の上に風が強くてハードな夜勤だった。
でも、意識朦朧でやっとこさで家に着いたのは覚えてるんだが⋯。
『やっぱり慣れた方にお願いするのが一番ですね。建築の方なんでしょ?』
「全く関係ない事はないけど⋯」
イジるのは好きだが不器用で壊す事のほうが多いんだが⋯。
『とにかく、助かりました。』
「あれくらい気にしないで」
そうは言ったが、気持ち悪さは拭えない。
『あの時もお礼はいいって言われましたけど、私の気がすまないので。
今度、コンビニで見かけたらあの濃いめのブラックコーヒーを御馳走させてください。』
身に覚えのない親切が、勝手に自分の顔をして歩き回っている。
まあ、あまり会わない子だから勘違いかもしれないが。
なんとなく、出鼻をくじかれた気がしてコンビニでの買い出しだけで帰る事にした。
勘違いで、お節介の恩を“売りつけた”誰か。
悪いが、受け取ったのは感謝じゃない。
これは……‘怨’に近い。
バイクを置き、郵便物を確認しながら、ふと目に入った。
ガタつきのなくなったポストは、小気味よく形が整っている。
そのきっちりした感じが、やけに堅苦しくて――
歪めてしまいたい衝動を、ふいに掻き立てた。




