第10話 tetsu
『酒は飲むほうかな?』
「たまにビールくらいですかね」
そういう事か、なるほどね。
『気が合うな、ワシもビール派でな。好きな銘柄とかは?』
「特にこだわりはないんですけどね」
『それは良かった。というのが、朝の件はコチラのミスとはいえ残業扱いに出来なくてな。かといって申し訳ないから、帰ってから晩酌用に買っておいたコレで手を打ってくれないか?』
そんな事だろうと思った。まあ、別になくても“たまたま”早く来たついでくらいで済ますつもりだったが。
それにしても、晩酌用のビールを買っておいたとは嘘が下手だ。
朝の電話の時点で用意しといたの見え見えだ。
ガス抜きにビールで済まそうなんて⋯でも折角だから乗っておくか。
「ありがとうございます。いただきます。」
『悪いね。じゃあ、ほら。遠慮せずに空けて空けて』
「ココで?現場ないじゃないとはいえ⋯それに自分バイクですし」
『硬いことは言いっこなしだ!善は急げというだろ?今日は置いて帰れ。ワシも車置いて帰るから。なんならそのまま泊まってってもいいぞ、たまにワシもする。』
なんか、昭和時代にタイムスリップしたかのような展開だな。
プシューッ『お疲れ!』「っす!」
『やっぱり、仕事終わりの一杯は美味いな!この“白いやつ”は別格だ!』
「それは同感です。」
『気に入ってくれて嬉しい。昔っからコレと決めててな。だいぶ前にプロ野球OBがCMでチーム作っててな。』
「なんとなく覚えてます。」
『その時の“無理する人”の場面、あれは職人を感じて好きだったな。』
「連続出場の人でしたっけ?」
『そう、死球受けても休まない、いつでもどこでも出続けるいぶし銀の“鉄人”』
「へぇ〜」
『君にその片鱗を重ねるんだよ。君はこの現場の“鉄人”、いや語呂悪くてキレがないな“tetsu”だ!』
「飲みすぎでは?でもありがとうございます。」
早々にいい気分の監督に、適当な相槌を打つ俺だが何故か素直には酔えないのは何故だろう?
頭じゃなく身体がそう感じてる気がする。
偶然気に入ってる“白いやつ”だからか?それとも⋯




