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人形姫は、猟犬の溺愛に瞳を潤ませる  作者: 宍戸詩紫


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彼の名は、アイザック④



「首尾は上々です、我が王よ」


 アイザックは、鉄仮面のような冷たい表情のまま、端的に告げる。

 そんなアイザックに、クロム王は顔を綻ばせた。


「そうか、それは素晴らしい。それで、ローザン伯爵とカーノヴォン連合国との繋がりは掴めそうなんだな?」


 アイザックは頷く。そしてさらに、報告を続けた。


「ええ、既にローザン伯爵と夫人の懐には潜り込めました。故に、重要な情報を得る為の土台は万全でございます。残る籠絡すべき人物は彼らの一人娘だけですが、それもまあ……、間もなくかと」


「ふむ。まあ、もう少し時間はかかるか。してアイザックよ、今回の任務、何故お前が選ばれたのかは理解しているな?」


 豊かなあごひげを撫でながら、クロム王は、アイザックに鋭い目を向けた。アイザックははい、と快活に応じ、答える。


「ここ十年で急に力をつけた貿易商、ローザン辺境伯爵の不正疑惑、並びにカーノヴォン連合国との癒着疑惑を調べることが、わたくしに課せられた任務でございます。そして、わたくしが選ばれたのは、」

 

 ここで、アイザックは言葉を一度切った。自分の役割をもう一度、しっかり胸に刻むためだ。


「ガーネット・ローザンと最も年齢が近い『猟犬』だからでございます」


「そうだ。さすがは我が『猟犬』。その中でも、随一の実力者だ。期待しておるぞ」

 

 クロム王は、満足そうに笑った。


 そう。アイザックは、ただの執事などではない。

 クロム王家専属の秘密部隊、『猟犬』。その、最年少副隊長である。

 幼い頃にクロム王家にスカウトされ、これまでの人生を全て『猟犬』たる為の修行に費やしてきた。故に相当に強く、相当に賢い。


 アイザックは今回、ローザン家の力のつけ方が異常に早いことを不審に感じた王から、彼らの秘密を探る任務を任された。

 没落貴族に近かったはずのローザン家が、いよいよ国政に干渉可能なほど興隆している。それにローザン家は、憎きカーノヴォン連合国と地理的にも近い。

 この二つに因果関係があるはずだと、クロム王は睨んだ。

 よって命令を受けたアイザックは、ローザン家の執事に成りすまし、虎視眈々と重要な手がかりを探っている最中なのだ。

 

「引き続き頼むぞ。カーノヴォン連合国を潰せる機会はそうそうないからな」


「お任せくださいませ、王」


 アイザックは敬礼すると、来た道の逆を辿り始める。

 こつこつと足音を響かせながら、長く広い王宮の廊下を進み、城門を後にした。


 外に出ると、既に陽が頂点を過ぎていることに気が付いた。今から帰路につき、ローザン家に到着する頃には、ほとんど夜になっているだろう。


 急ごう。


 アイザックは行きと同じように、笑顔を振りまきもせず、賑わう街並みを通り過ぎる。

 

 が、


「あ、土産」

 

 アイザックは立ち止った。その場できょろきょろと周囲を見渡し、手ごろな物品を探す。


 アイザックは、表情の無い、美しい少女を思い出した。


 あの子が意外に思うようなものを、持って帰ろう。そうして心を開いてくれれば、こっちは願ったり叶ったりだ。


 そんなことを考え、


「これにするか」


 と、ある物を手に取る。店主に金を払い、包みをもらう。それを片手で抱え、アイザックは再び歩き始めた。


 ただ、女の子が好きそうだから。見た目が愛くるしいから。

 

 選んだ理由は、アイザックにとって、それだけだった。


 まさかこれがきっかけで、アイザックの心が揺らぐことになるとはこの時、想像もしていなかった。



 

 

 

 


 お読み頂き、心から感謝致します。慣れないロマンス(それも溺愛系!)ですが、少しでも貴方様の心を動かすことが出来たのなら幸いです。

 今後ともぜひ、よろしくお願いします。

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