表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人形姫は、猟犬の溺愛に瞳を潤ませる〜心を失った令嬢は、秘密を抱えた執事に甘やかされて愛を知る〜  作者: 宍戸詩紫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/36

微睡みと微笑み


「アイザック!」


「〜〜〜〜〜っ!!」  


 私の必死の揺さぶりに、アイザックはようやく目を覚ました。

 しかし、がば、と跳ね起きた彼の呼吸は荒い。


「……大丈夫?」


 私は彼の顔を覗き込む。

 掛け布団を羽織っていたというのに、真っ青だ。


「ええ……。ご心配をおかけして申し訳ございません。少々夢見が悪かったようです」


 それでも、アイザックは弱弱しくも笑みを私に見せる。

 その上、私に気を遣ってか、軽い冗談まで口にした。


「昨夜はガーネット様と添い寝出来て、大変幸せでした」


 私もようやくその点について思い出し、はっとする。


「私はどうして……」


 そう尋ねると、


「昨夜、わたくしを撫でてくれたまま、お眠りになられたのですよ。廊下の寒さでお目覚めになってはいけないと思い、このままここに居てもらったのです」


 申し訳ございません、と頭を下げたアイザック。

 私はなるほど、と納得しつつも、彼の様子をもう一度伺う。一見、普段通りの落ち着いた雰囲気だ。


 だが、はらりと垂れた金色の毛先が、ふるふると小刻みに揺れているのを、私は見逃さなかった。


「いつも、うなされているの?」


 私の問いかけに、アイザックの笑顔はほんの少しだけ固まる。

 が、すぐにその強張りを解いて答えた。


「いえ、昨日、ルークの話をした為でしょう。少し嫌な記憶が蘇ってきただけで、別になんとも、」


「アイザック」


 私はにこにことしながら口を動かし続けるアイザックを制止した。


「嘘、つかない」


 誰かに本心を隠すのには慣れているのだろうが、同じ穴の狢としては、見過ごせない。


 私の前では、楽に呼吸をして欲しい。私がそうさせてもらっているように。


 私はアイザックの腕をぐい、と引っ張る。

 そして、淡々と告げた。


「もう一度、一緒に寝ましょう」


「ガーネット様……?」


「昨晩私は、あなたに傍に居て、とお願いしたの。それはつまり、私もあなたの傍に居る、と言うことよ」

 

「っ────────!」




 アイザックは、眉一つ動かさずに大胆な告白をしてのけるかつての人形姫に、言葉を失った。

 

 自分の膝の上で眠るガーネットをまるで美しいドールのようだと思ったばかりなのに。

 彼女の心のうちはこんなにも、情で溢れているだなんて。


 いいや、とアイザックは内心で首を横に振る。


 昨夜の言葉のみならず、ネモフィラにしても、クッキーにしても、彼女は愛情深い人なのだ。

  

 はじめから、人形ではなかったのだ。

 

 アイザックは、ガーネットの新たな一面を知った感動が、悪夢を上書きしたのを実感した。胸の中にかかっていた黒い靄がさーっと消えてゆく。


 アイザックは何の迷いも憂いもなく、心からの笑顔を浮かべた。


「承知いたしました。それでは」


「きゃ!」  


 アイザックは片手で真っ白な掛け布団を、ガーネットをもう片方の手で腕の中に引き寄せる。


 そしてそのまま、二人で布団の中にくるまった。


「……あたたかい」  


 ガーネットが、微睡んだように呟いた。


「ええ。そうですね」


 アイザックも、腕の中の温もりを確かめるように頷く。


 朝の優しい陽射しに包まれて、ガーネットとアイザックは、再び穏やかな世界へと足を踏み入れるのだった。






「サンデルブルク王、彼らが出発したそうです」


 石材で建築されたセントラル城。その玉座の間には、二人の人物が居た。

 そこは、白壁のクロム城とは対照的に、灰色の広間は薄暗く、昼間であるのに鬱蒼としていて肌寒い。


 彼らのうち片方は王の座に腰掛け、もう片方は頭を垂れて跪いている。

 サンデルブルク王と呼ばれた人物は、王にしては若い外見をしている。しかし、威圧感が凄まじく、その雰囲気が彼を王たらしめていた。

 

 王は、答える。


「そうか。であれば、サイドベルツ侯爵に告げよ。作戦の開始だ、と」


 御意、ともう片方は応じ、王の御前を後にした。


 その背中を見送って、サンデルブルク王は独り言ちる。


「さあ。姫君とわんちゃんは、如何ほどの力量かな?」


 彼は、褐色の頬を吊り上げた。






 お読み頂き、心から感謝致します。慣れないロマンス(それも溺愛系!)ですが、少しでも貴方様の心を動かすことが出来たのなら幸いです。

 今後ともぜひ、よろしくお願いします。

 

 次回は 2/7 21時 更新予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ