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【バアルの零落物語】  作者: 壱千羽
竜神探索譚
8/12

【7話】竜神探索譚Ⅳ



可笑しいよ此の作品。題名【バアルの零落物語】なのにバアル要素全然出てこない



 


 コキュートスの一件が終わった翌朝。暖かな布団で目が覚める事を幸福だと感じながら寝台(ベット)から起き上がる。


 寝台近くに置いてあった小さな机に乗った片眼鏡(モノクル)を目に掛ける。



「視界が鮮明になりましたね……起きますか、」



 そう云い黒髪黒目の男——フルーレティは寝台から下りた。

 今日は大変忙しくなる事は諒解済みであったが其れでも気が引けたのか寝台から降ろした足取りは自然と重くなっていた。


 己の髪を整え着替え身だしなみを整える。服装の乱れは心の乱れ、人間界で聞いた言葉を心の中唱え準備を続ける。


 或る程度の身だしなみを整えるのが終われば次は朝の館内の清掃だ。悪霊達は衣食住を保証する代わりに館内の仕事をさせている。

 仕事と云っても館内の掃除や(主にレティだが)ベルゼブブ様に持て成す料理、客人の接客、様々な事の大方を悪霊達に任せているのだ。


 悪霊には人型やザ・悪霊と云った見た目の者、動物の見た目をした者等見た目は千差万別である。然しすべてに等しく云える事と云えば見た目が黒よりで若干透けている事位だろうか。


 そんな悪霊達に指示を出し朝の掃除をさせ、朝食の用意をさせる。


 其の間レティはと云うと、




「何度レティが大音量で起こせば起きるんですか!?そろそろ自力で起きてください、地獄の三大支配者がみっともないですね」


「うぅ……衰弱期間何年だと思ってるの、まだ慣れないなぁ……一度身に着いた習慣って中々抜けないよねぇ……」


「良いですから早く起きてくださいベルゼブブ様。ほら、着替えますよ」


「はぁい……」



 そうして一日が始まる。

 何時も通りの。此れから先に待ち受ける過酷さなど想像も出来ない様な。



「取り合えずもうそろそろ旅団長サルガタナスが此処を訪れる予定時刻です。お早めに準備を」


「判ってるよ…」



 フルーレティと同じく上級精霊六柱の内の一柱旅団長サルガタナス。彼の力は中々に使える物だ。

 例えるなら主に現代などでは窃盗、誘拐犯罪などに何でも使えそうな力だ。然し本人の目の前でこれを云うと怒られるので要注意(実際怒らせた事が有るから間違いない)



「ほら、サルガタナスが着いたらもう向かうんでしょ、荷物の用意!」


「君は私の母君かな?」


「良いから早く」



 大体この人は押せば引けるに引けなくなり渋々やってくれます。レティが云う前に終わらせておいて欲しい物ですが其れは恐らく無理そうなので其処はご愛敬です。


 次の瞬間館内全体に呼び鈴が鳴らされた合図の音が響き渡りました。取り合えず応対は悪霊達がしてくれる予定なのでレティ達も早急に向かわねばなりません。

 準備の追えたベルゼブブ様の手を引き急いで客間に向かいます。



「ちょっ急に引っ張んないで!?転ぶ、転ぶ、転ぶから!?」



 おや?何の音でしょう。蠅の音でしょうか?

 先程掃除は済ませたばかりなのですがね



 *



 レティが客間に着くと先ず来たのは驚き、次の戸惑い、次に焦りでした。



「やあ勝手に邪魔しているよ。フルーレティ、ダンナ様?」



 彼女を一目見た時心底驚き声が出ませんでした。


 つむじで濃い緑と白に分かれた髪を靡かせ優雅に紅茶を嗜む姿自体は吟遊詩人の様な出で立ちでもあった。(うなじ)から生えた焦げた様な黒い翼にひび割れた天使の輪が斜めに固定されており金の腕章を付けている。

 結膜、所謂(いわゆる)白目と云われている部分が黒く染まり黄金の瞳を持つ【女性の姿】

 漂う香水の華やかな匂い。


 驚いているレティとは対照的に背の後ろに居たベルゼブブ様は冷静に話をし続けました。



「其の声……アスタロトか。久しいね元気にしてたかい?」



「ふふっ最近はとっても元気なの。ダンナ様は体調にお変わりはなく?」

【魔王・地獄の三大支配者】アスタロト

 能力:毒の息、過去と未来を見通す、教養学の教授



「悲しい事にと嬉しい事にが混じってるかな。其れで何の用?嫌な予感しかしないけどね」



 魔王で在り地獄の三大支配者、サタン様やベルゼブブ様に並ぶ肩書の持ち主で在りベルゼブブ様と同じく零落した神の内の一人だ。


 そして、元々ベルゼブブ様の零落前のバアルという名の神であった時代はアスタロト様の零落前の姿アスタルテと夫婦という関係で在った。バアルの四名の妻の内の一人だったのである。其の為アスタロト様がベルゼブブ様の事をダンナ様等と云った呼び方をするのだ。


 アスタロト様の突然の来訪を不審に思いながらも立ったまま話を訊くわけにはいかないのでレティとベルゼブブ様はアスタロト様とは一つ机を挟み二人席に着く。

 レティ達が席に完全に着くのを確認しアスタロトは語り始めた。


 レティの横に座っているベルゼブブ様は女性恐怖症であるからか細かく微振動しています。そう云うあれみたいで見ていて少し愉快な気持ちに成り心が落ち着きました。

 偶には駄目上司も役に立つものですね。



「ダンナ様達は今日うちの部下を借りようという腹積もりなのでしょう?」


「うん、旅団長サルガタナス君を借りたくてね。許可必要だっけ?」


「許可は求めてないんです。私と貴方の関係だし好きに使ってくれたらいいですわ、でもね」



 そう云えば思い出した一連の事情をアスタロト様は知っていた事。

 

 アスタロト様自体神様で在られたころはヤム=ナハル神の実の御兄弟であり、其の為か今回の事件に一枚かみたいと願っていた事。



 はい、皆さん此処で一つ恐ろしい事実に気が付きましたか?気づいた方は凄いです。



 そうヤム=ナハル神はベルゼブブ様の御兄弟。ベルゼブブ様の妻の一人であるアスタロト様もヤム=ナハル神の御兄弟。ベルゼブブ様の妹はアスタロト様。

 詰まり、兄妹同士での結婚です。まあ神様間では全然珍しい事ではありません。


 実際ベルゼブブ様の四人の妻達の内三人は実の妹です。


 辞めてあげてくださいロリコンなんて云わないで上げてください。其の三人の妹全員ヤバい奴ですから。逆にベルゼブブ様が可哀そうに成る程に。ベルゼブブ様の女性恐怖症の原因を作ったのは主に其の奥様方達ですから。


 話を戻しましょうか。

 アスタロト様は申し訳なさそうな表情を作り続きを話しました。



「直属の上司である私と悪魔の首領(ボス)的な立場であるサタン様にしか話していないのだけれど。サルガタナスには今地上の視察に行かせているのよ。だから今地獄には居ないのよね」



「………え?まじで?」


「まじよダンナ様」


「……と云うか私聞いてない」


「云ってないから当たり前よダンナ様」


「同じ地獄の三大支配者と云う括りにいるのに私だけ知らされてなかったって事…?」


「そう云う事ねダンナ様」


「………泣きたい」



「幾らでも私の胸を貸しますわ!!ダンナ様!」



 アスタロトは何故か上機嫌に成り机に身を乗り出し手を上げ云った。



「………必要ない…」



 その事案はベルゼブブの弱々しい声と共に却下された。

 相当ショックを受けたのか顔を手で覆い下に向けた状態で項垂れる。


 (いや)、待てそれ以上にショックを受けなければならない所があっただろう


 出来ない上司の代わりにレティはアスタロト様に問いかける。



「発言、宜しいでしょうかアスタロト様」


「許可します。」


「旅団長サルガタナス殿が地上へ視察……呼び出せる可能性は無いのでしょうか?」


「駄目だね」



 何やら重々しい声。真剣さが一番に押し出されている声色で在った。



「彼は今人間に紛れ地上の調査中。そう警官に紛れてね」


「………悪魔が、警官?」


「ええ、そうよ。加え優秀過ぎて特別な組合(チーム)に入れられて今忙しいみたい」



 アスタロトは出された紅茶に角砂糖を二つ放り込み幾らか付け合わせの(スプーン)で混ぜ一口、口を付けた。



「だからサルガタナスは貸せないの。御免なさいねダンナ様」


「そう……」


「因みに何でサルガタナスが必要だったか聞かせてくれる?」


「勿論サルガタナス旅団長の瞬間移動、鍵開錠(ピッキング)能力目当てだよ。」



 此方も何時にもまして真剣そうな面持ちで応えた。



「クソ兄貴の居場所が冥界神モトの統べる冥府だとほぼ確定した。彼奴の統べる冥府は【()()()()】だ。彼奴の口が冥府への門であり入口。モトの奴が故意にクソ兄貴を匿っているのだとしたら正面切っての突入は無理、だからサルガタナス君の力で強行突破しようと思ったんだけど」


「でもサルガタナスの異能は別の世界と別の世界を渡る事は出来ないわよダンナ様。実際彼が地上に出る際も地獄と地上の玄関を通って行ったもの。」


「そう。だから作戦はきちんと立てたのだよ。」



 と云いベルゼブブは黒ずんだ眼に炎を灯し続けて語った。


 高天原に入国するのは簡単だ。何故なら私がバアルだから。

 其処は良い。でも問題は入国後、情報拡散の規約やら条約やらなんらやらが有るがモトが居るはずである移住区へは最高神バアルの顔で色々引き留められまくるし最低でも三日は掛かるだろう。其の三日間で情報拡散の条約は切れ私が高天原に居ると全神に知れ渡る。そうなればモトにも逃げられるし其れに…此れ以上は一寸云いたくないや…。まあそんなこんなで瞬間移動の力が欲しかった訳。バエルの力を遣えれば人目に付かず動く事も可能だけど…流石に神の国高天原で悪魔の力を使うのは御法度だからね、抑々零落した神々は高天原から出禁を喰らうんだものを。私とフェニックスとかが例外なだけでね



「…成る程……まあ理解しましたがダンナ様?」



 話を全て聞き終えたアスタロトがベルゼブブの顔色を窺いつつ問い掛けた。

 ベルゼブブはその問いに耳を傾けた



「我々…まあ私は元神ですが…【次元渡航】は如何なされました?ダンナ様は力の剥奪は無かったのでしょう?」



 ベルゼブブは拍子抜けしたような顔の儘固まった。

 何もない右を見て左を見て天井を見て床を見た。見たと云うより顔を動かしただけと云った方が良いのだろうか、目の焦点は在っていない。



「……使ってなさ過ぎて忘れてた……」


「でしょうね、此処数千年は地獄に引き籠りっぱなしでしょう?ダンナ様」


「其れもそうだねぇ……よし!サルガタナスは只の時短要員だったしさっきの作戦のサルガタナスの部分は私の能力で行けるし!よし早く行って彼奴の顔面打ん殴ろ!フルーレティ!」


「……全く…切り替え早すぎますよ…」



 此れから先の苦労が一気に方に乗ったのか自然と肩は重くなる一方だった。そして唐突にフルーレティは先程から抱えていた小さな違和感の正体にが付いた。



 あれ?目的入れ替わってね?、と



 ✕ ヤム=ナハル神をぶん殴る

 ○ 海と川を司る竜神ヤム=ナハル神が甦ったという噂の真否





ベルゼブブ(バアル)は妻四人持ちの子供持ちです。


妻のうち一人は今回のお話に出て来たアスタロト、基アスタルテ。


そしてバアルの妹であるアナト


セトの妹であり正妻のネフィティス


加え実際妻かどうかよく判らないネイト


この四名です。

伝承されている内容などをあらかた見ているとバアルのお母様も妻とされている旨のものがあったんですけど其れは流石になぁ…とおもいやめました。間違っているかもしれませんけどね


因みに此の中で一番ヤバいのはアナトです。いずれ書くつもりですが気になる人は元ネタのウガリット神話を調べてみてください。究極お兄ちゃんっ子ヤンデレです。



次の投稿は3/23日です



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