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【バアルの零落物語】  作者: 壱千羽
竜神探索譚
7/11

【6話】竜神探索譚Ⅲ

 


 世界はずっと暗い。


 見える世界は暗く感じる世界はもっと暗い。


 此の世界に癒しなんか無い。光なんかない。


 あるとするならば更なる地獄への片道切符。


 永遠に戻ってこれない片道切符のみである。


 世界が暗く閉ざされた日から其の事が理解出来た。



 暗く閉ざされてしまった世界で一人微笑む。




 狂わされる見えたる世界。

 呼吸すら重い世界に懺悔を。



 神に、赦しを



 *



 凍える。凍え死ぬ。

 氷地獄であるコキュートスに先程迄居た為だ。大変厚着して行ったのだが矢張り行かなければよかったかも。結局は探し(びと)は居なかった訳だし。フェネクス侯爵殿辺りの炎属性辺りを一緒に引き連れていけばよかったかも。



「………あの、ベルゼブブ様」


「ん?なーにフェネクス侯爵殿」



 今私達の中心に居る燃え盛る少女は戸惑いの表情を浮かべながらも必死に言葉を紡いだ。



「何故……私で暖を取って…?」

【侯爵・ソロモン72柱序列三十七位】フェネクス

 能力:凡百(あらゆる)学問への回答、炎の使役、寿命の循環(リサイクル)、死への蘇生



 長い猩々緋(しょうじょうひ)色の髪に澄んだ青い眼をした少女だ背丈は百九十以上あるベルゼブブよりもずっと下、百五十位ではないか。黒い軍服の様なものを身に付け制帽の(つば)の先にはフェネクスを召喚する際の印章が描かれた一枚の紙を垂れ下げ己の顔の右半分を隠している。そして腕には銀の腕章を付けている。


 少女は戸惑いの内奥を隠しきれなず変な汗を掻いている。

 彼女は不死鳥の悪魔、炎を纏い死ぬ事無く永遠を生き続ける鳥の悪魔。故に常時炎が出ているので暖を取るのに使えないかと呼び出したのだ。



「何だか、フルーレティ中将は只々震えている様なのですが…本当に何してたんですか?」


「さぶい……さぶい………」



 独り言か譫言か、鼻を真っ赤に彩り暖かさの源であるフェネクスに一番近づき暖を取っている。

 恐らく小さな少女に近づく大人は絵面的に駄目(アウト)だ。


 だがフェネクスを呼んだのは暖取り以上の意味が或った。燃え盛るフェネクスに手を近付け暖を取りながらベルゼブブはフェネクスに語り掛けた。



「フェネクス侯爵殿、ヤム=ナハル神について何か知っている?」



 其れは一種の事情聴取である。

 普通悪魔と神に接点などない。商売敵同士であるしフェネクス侯爵殿はソロモン72柱序列37位、20の軍団を引き連れると優秀であるが七つの大罪以上の悪魔でないと他の種族の接点は人間、天使位であるのだ。

 そんな者に何故、現在失踪中の神の話を訊くには勿論理由が在る。


 彼女が私と同種であるからだ。



「………」



 先程とは違う表情を浮かべるフェネクス。矢張りかとでも言いたげな表情である。



「彼女は現代でもとても有名な神の一人だからね」


「……きちんと意味あって呼んだのですね……さぶい…」


「彼女は神・不死鳥【フェニックス】(バアル)の四人の妻達の一人ネイトが母とされる事も在る太陽神であり最高神ラーの第一補佐官だよ」



 彼女は発すべき言葉を見つけようとして宙を眺める。然し発すべき言葉が必ずしも其の場を漂っているとは限らない。

 彼女は発すべき言葉を見つけられず黙って暖取りの為の存在となっている。



「以前から彼女の事はラー経由で知っていたからね。因みに五百年の寿命の循環(サイクル)で生きているけど大人の姿に成った彼女は高天原でも傾国の美女って噂される程の美しさなんだよ」



 フルーレティも見た事あると思うけど、と付け加えた。

 フルーレティは(かじか)んだ手を擦り震える唇で何とか言葉を発する。

 御免、其処迄(そこまで)寒いの駄目だとは思ってなかった。次から配慮するね多分。



「高天原…神の国で傾国の美女とは……此れ如何(いか)に…」


「其れは私だって思ってますよ…神々が主催する宴に毎度お飾りで呼ばれるし、大人の姿限定で。私は神力を調節すると多少は見た目の年齢を変える事が出来ますから。私自体は高天原出禁に成っているのに、お飾りの為に何度も呼ばれるし…何時も!」


「え…?」



 震える拳を何とか抑えようと躍起になっている。

 其れを落ち着かせつつ話を続ける。



「フェニックス自体は世界が生まれるより前に居て創造主が造るより前に居た。そんなフェニックスの感想が聞きたくてね。如何思う?今回の事案」


「……喧嘩売ってますよね、」


「御免御免、流石にさっきのは冗談だよ。でも此の地獄の中で一番よ~く高天原に訪れている君に話を訊きたいのは事実だよ。さ、君の知っている事を教えてくれ(たま)え」



 真剣さをより押し出して問いかけた。

 私の真剣みが伝わったのか彼女は恐る恐る口を開ける。



「……一度、【彼】の姿で高天原を散策していた頃に…一度だけ………あるらしいのです……ヤム=ナハル神に見間違う程似た…竜神の姿を……」



 言葉を選ぶよう、一つ一つ丁寧に発する言葉には緊張性が滲み出ていた。此の先が地雷原で在り闇雲に駆けていったら、考えたくもない。



「拝見した事が……あッ然し姿は人型で、一瞬しか見ませんでしたから見間違いの可能性も!」


「うん、判ってるよ。流石に此処で無闇矢鱈に暴れるのは稚児以下だからね。でも、其の状況の事もっと詳しく教えてフェネクス」



 言葉が重い。空気が冷えるのが肌で判る。

 此の空気の冷えは寒さではない、威圧だ。最高神が発する威圧に逆らえる者は、今此の場には居ない。



「……聞いた話によると、ヤム=ナハル神はある神と一緒に居たらしいのですが、詳細までは…」


「成る程、高天原に姿を現せば全神から総好かんを喰らうのかと思って居たけど…彼奴を匿う奇特な神が居たとは、よもや想像つかなかった、成る程そうであるならば彼奴に接点を持つ神が冥界に匿っているという事になる。導き出されるのは……」



 あの神、あの場所しかない。



「いやあ君を呼んでよかった。良い情報を提供して呉れてどうも有り難う。【彼】の方にも礼を言っておいて」


「あ、はい…」


「よし、フルーレティ。次の目的地が決まったよ。次はコキュートスより寒くないから安心して」



 にこやかに話しかけているが其の顔に温度はない。仇敵を目の前にした肉食獣が浮かべる独特の笑み、其れを感じずにはいられなかった。



「こんなにも早く進展するとは思わなかったよ。」



 くすんだ赤い髪を煩わしそうに視界から掃けさせ黒ずんだ瞳で先を見る。


 死と干魃(かんばつ)の神。

 其の名が死を意味し(かつ)て私とも死闘を繰り広げた七十人の兄弟の内の一人であり実兄。彼自身が冥界で在り冥界を統べる王。



「次の目的地は私の実兄【()()】が統べる冥府だ。其処に彼奴(ヤム=ナハル神)が居る」






身長一覧


ベルゼブブ=バアル:194,7cm

フルーレティ:176,8cm


只々燃え盛っているフェネクスを考えると場面結構シュール…

フェネクス鳥モードでは常時燃えていますが少女モードでは常に燃えてる訳じゃないです。今回が特別です。


次の投稿は3/22です



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