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【バアルの零落物語】  作者: 壱千羽
竜神探索譚
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【4話】竜神探索譚Ⅰ

 


 一人、ベルゼブブは仕事場の書斎で考え込んでいた。


 私が?クソ兄貴(ヤム=ナハル)を?探す?冗談じゃない。

 あんな奴生きてたとしても多分もう一回私が殺す羽目になるだろうし彼奴も彼奴で私の事が嫌いな筈だ。詰まり探しても私には何一つ善い所(メリット)は無い、そう故に探さなくても——



「サタン王からの命に背く気ですか?ベルゼブブ様」



「わー何時の間に居たの~フルーレティ~」


「さっきから居ましたよレティに気が付かなかった貴方の落ち度で~す」


「ひっど~私上司~」


「知るか~で、何でレティが此処に来たか、心当たり在りますよね~」


「仕事の催促~?」


「せいか~いとっとと取り掛かれ~駄目上司」



 そう云うノッてくれる所は好きだけど私を侮辱する所きら~いと云えば事実ですしねと真剣な声で返された。解せない。


 其れに昨日仕事を投げ出して七つの大罪定例会議に向かってしまったので溜まりに溜まった仕事を捌かなければいけないのだ。仕事が多すぎる、白目を剝いて倒れたい気分だ。

 加えて此の世で一番嫌いな生命体と云っても良い程私が毛嫌いしている兄の探索を命じられたのだ。気分が下がらない訳が無い。



「其の仕事より今はサタン様に命じられたクソ兄貴探しだよ、厭だけどさ」


「貴方の事だからもう手は打ってあるのでは?後仕事は同時並行でお願いします」


「うん、だから呼んでおいたんだ。後同時並行は死ぬから無理」


「豊穣神の癖に」



 毎度思うが一言多いと部下や他の上司から苦言を呈された事は無いのか此の暴言吐露全自動機械(マシーン)は。

 眉間に皺を寄せるが其れに気付かないのか仕事に対する愚痴を当ててくるフルーレティ。何時か解雇して遣りたい、切実に。


 然し此れでも(私に暴言を吐き捨てようが)私達地獄の三大支配者サタン、ベルゼブブ、アスタロトに使える(要注意だがフルーレティは私直属の部下の一人である)上位精霊の六柱の内の一柱。加え中将という役職持ちはそう簡単には解雇出来ないだろうな。



 そんな事を考えていると部屋の奥から疾風が如く駆け抜けて行くような馬の地を掛ける音が聞こえて来た。




 まて、え、馬?え?此処室内なんですけど——



「失礼します!ソロモン72柱序列六十六位侯爵!キマリスで御座います!

【侯爵】キマリス

 能力:文法・論理学・修辞学の教授、失せ物発掘、人を兵士に化けさす、海や川を迅速に渡らす



 大声で挨拶をして来る馬に乗った不失礼な悪魔は再び大声で続けた



「してバエル王とは如何に、おや!其処に在らせまする片眼鏡(モノクル)に黒目黒髪のウルフカット正装者はかの中将フルーレティ様で在られますか!」


「そうだよ人の特徴一々大声で説明するなよな」


「あれ?フルーレティ髪切ってたの?前一つ括りにしてたじゃん私と同じで」


「五百年位前に切り落としましたあんたと同じってその時気付いてレティが生きてきた中で最大の失態だったので早々に切り落とすべきと判断した迄です」


「え、……え?え?」



 黒い名馬に跨り騎士の風貌をした銀色の腕章を附けた悪魔キマリス。

 妙に大声で自分の視た事象を説明していく様は五月蠅いや迷惑を通り越して最早滑稽にすら思えるほどだ。



「にしても貴方【バエル】の方で名乗ったんですか?確かに位が王と侯爵を呼び出せるくらいの地位は在りますが何で態々(わざわざ)


「あ、ああ、其れがね、フルーレティ」



 何やらベルゼブブが真剣な面持ちで話始めようとしたので思わずフルーレティも固唾を吞んで見守る。



「最近【魔王ベルゼブブ】としての面ばかり出てきて他の呼び名も浸透させなくちゃと思ったからだよ。ソロモン72柱序列一位の位王のバエルも認知させないとと思って。だからほら、髪型も何時もと違う」



 ベルゼブブが自身の髪を指さす。


 確かに何時もかなり下の方で括られている髪は高い頭上の部分に括られており垂れ下がっている。



「予想より遥かにしょうもない、其れに髪結んだのレティです」


「後何処かでフルーレティに私が神様だという事を再認識させたい」


「神…様?」


「ほらもう駄目じゃん。」



 呆れつつ溜息を吐く。



「取り合えずキマリス侯爵殿は椅子に掛けて貰って、」


「承知致しました!」



 元気に返事を投げ返したキマリスは其の儘馬を降り甲冑と甲冑が擦れる甲高い音を響かせ一番近くに在った長椅子(ソファ)に背筋善く腰かけた。



(いや)馬降りて歩けるんなら室内馬で走ってこないでよ!!!??」



 *



「成る程詰まり我が能力を用いバエル王の兄君を捜せば良いという(はなし)ですな」


「正確には【バエル】じゃなくて【バアル】の方の兄ね。探索系の能力持ち悪魔には(あんまり)居ないからなー頼りにしてるよ」


「はい!此のキマリス何としてでもバエル王のお役に立ってみせましょう!」


「うん元気が良くて宜しい」



 矢張り私の様な時代の先駆者は若者を見ている時が一番心安らぐかもしれない。キマリスも三千年超えてるが、私は其の優に数百倍は生きているので無問題(モーマンタイ)だ。

 傍から見たら何故か胸を張っている不可思議な行動中の私にフルーレティは声をかけてくる。



「ベルゼ……バエル王、情報収集ならレティでも善いのでは?一晩で終わりますよ」


「駄目なんだよね其れが」



 フルーレティの打診をベルゼブブは何時もよりも真剣な声で応えた。



「今回はサタン様の命令で天使や神様連中には気付かれちゃ駄目ッて事に成ってるの。君の能力は信頼してるけど【一晩で終わらせれる】に重点を置き過ぎて神様や天使側に情報が行っちゃう場合がある。」


「然し探し人は元神々の王。神関連ならばもう上の者達が情報を掴んでいるのでは?」


「ないね、クソ兄貴一号は知っての通り自分が思うが儘に圧政を敷いた。他の神からの恨まれ度は私よりずっと高い。探すだけ無意義と思っている筈だよ。高天原に出たら最後、全神から総野次(ブーイング)が飛んで来るだろうね」



 バアルは何処か遠くを見るような目で続ける。今では無い過去を、其の目は捉えている。



「でも神は穢れに弱い。耐性を持っている私は別としてこんな穢れの塊の様な地獄の奥底にやって来る事は先ず無い、詰まり地獄で何しようが神側に情報が届くのは難しい、逆も又然り。だから大層な事が無い限り情報は届かないと思うけど」


「其れで先程の話に戻る訳ですね」


「そゆ事君の腕は信用しているけど今は其の使い所じゃない。ON/OFF(切り替え)大事にやって行こ」



 そう云い一応微笑んでみた。上手く出来たかは判らないけどきっと上手く出来た筈。私超偉いし。



「我の能力で探すには少々ばかしお時間を頂く事に成るやと思います!」


「いーよ、いーよ気長に遣ってこ~ね何時位になる予定?」


明朝(みょうちょう)には」


「了解。じゃあ其の時間に成ったら又御出で。馬には乗って来ないで、御出で」


「はい!窺わせて頂きます!馬に乗って!」



 何故だろう先程から話が通じない。此奴は馬にどんな執着を募らせてるんだ。


 引き気味の眼で見ているのに気が付かないのかキマリスからは困惑気な雰囲気(オーラ)が漏れ出ていた。



「………館の掃除は何時も通りフルーレティでお願い」



 バアルは目線を明らかに別の場所に移動させながら呟いた。

 そして残った二人の目に映る蹄が幾つも刻まれた廊下。全ての状況を察したフルーレティが何時もより幾らか声の音程(トーン)を下げ宣言した。



「キマリス次馬で着、館内を疾走してみろ貴様の首は飛ぶ事になると思え」




「……歩いて来ますか」


「うん、君の命の為にもそうした方が良いよ…」



 *



 館の掃除も終え時刻はもうキマリスの邂逅が昨日と云える程までに経過してしまった。フルーレティは深い溜息を付き其の身を(しな)らせる。

 彼奴勢い良く館内を馬で駆けずり回りやがって。他に住みついている悪霊も何故止めなかったのだ。


 思考が一度マイナス寄りに成ってしまえば其処からは幾らでも落ちて行く。


 此の魔王ベルゼブブの館には仕事をする執務室の他にベルゼブブの直属の部下や支配下に置いている悪霊等が住まう伏魔殿。


 あれでも一応肩書には【悪霊の王】と着いて居る為、全ての悪霊を統べているのかと思われがちだが実際は道端に居る悪霊を片っ端から拾い上げる莫迦の所為でそんな異名が附けられたのである。

 尚掃除係はレティです。何時も増える悪霊の所為で掃除頻度が最近上がってきている事が悩みです。


(そう云えば、)


 館の部屋の一部、自室の寝台(ベット)に転がり考える。目の前に映る照明は在って無い様な物だった。

 片眼鏡を寝台近くの小机に置き(ラフ)な格好。眼を閉じてしまえば直ぐ自身の描く夢物語の一(ページ)目を綴れるであろう程にフルーレティは憔悴していた。

 重い瞼に抗い乍ら自身が見た記憶を思い起こす



 ——でも神は穢れに弱い。耐性を持っている私は別としてこんな穢れの塊の様な地獄の奥底にやって来る事は先ず無い、



「堕ちたとしても元は神だよな……あの人……そう云えば……今も、か」



 今まで見て来た者から推測するに【堕ちる】には元の種族としての権利の剝奪、肉体の変貌。そして生まれ変わった新たな生命の能力付与。此の流れが有る。


 然しベルゼブブ、基バアル神には其の形式(テンプレート)には当て嵌まらない。

 肉体は神と悪魔両方の要素を掛け合わしているし能力や権利だって。剥奪、削除、上書きと云うよりも更なる付与と云った方が近いであろう。


 バアルは云った神は穢れに弱く地獄には踏み入れすらしないと成らばバアルは如何(どう)なる?


 現在の肉体には神の要素も加わっている筈だ。故にベルゼブブ(基バアル)は此の空間に立ち入れない筈。然しバアルは云った自分には耐性が有ると。


 其処から導き出される応えは恐らくフルーレティ自身の想像つかない事だろう。だが其れでも良いどうせ此の世の凡ては神が戯曲的に仕組んだ物に過ぎないのだから。



 フルーレティはそっと目を閉じる。布団に身を包め安らぎの一時を得る。

 もう己自身も誘惑に身を任せ夢物語に耽る最中である。



(まあ……見える物の総てを知る必要は……有りませんよね…)



 そう想う事にしフルーレティは今宵も自身の夢物語を描いた。




大分長くなってしまいました。

地獄にウルフカットって単語在るのかな……?

在ったらいいなぁ

因みに私はベルゼブブの事バアルと呼んでいます。ベルゼブブが零落する前の姿ですね。

今は何時か絶対バアル呼びの方を浸透させることが目標です。小説の文字全部ベルゼブブじゃなくてバアルにしたい


遅すぎると思いますし知っているとも思いますが【高天原】解説


【高天原】…簡単に言うと神様皆が住んでいる三次元ではない何処かの次元の国

        因みに天使は住んでいない


次の投稿は恐らく3/20



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