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【バアルの零落物語】  作者: 壱千羽
序章
2/7

【1話】理念と理想の相違


第一話にしてとんでもない単語を連発していますが大目に見て欲しいです。

【R指定】には入らない筈です

多分


 


 ()の世には幾千、幾万をもの数え切れない程の世界がある。

 故に人間の数も膨大。


 此岸が有り彼岸がある。世界がある事に追随して【地獄】と云うものもある。

 死んだ罪人が裁かれ罰を受ける地獄ではない。

 悪魔達が住まう人間としては所謂(いわゆる)異界とも云うべき場所だ。


 そんな地獄には三大支配者が居る。

 加え東西南北を守護する支配者も居る。



 此の物語の主人公は地獄の三大支配者でも在り、東方の支配者でも在り七つの大罪の暴食担当、怠惰担当でも在り―――



 嵐と慈雨の神にて豊穣の神。神々の王バアルの物語



 *




「私さ、ずっと腑に落ちない事が有るんだよね」


「はい?如何(どう)されました急に」



 書類が山積みの執務室に居た一人が突如(とつじょ)とて声を上げた。

 近くにいた男は手元に在る書類を確認しながら声を上げた男に応えた。



「フルーレティは私が穢れが多い地獄に堕とされた理由は知ってる?」



 顎に手を当てフルーレティと呼ばれた男の顔を覗き込んだ。


 見つめられた男―――地獄の三大支配者に使える上級精霊の一柱であるフルーレティは書類を手にしたまま首を傾げた。

 ()の時に頬に掛かった髪を煩わしそうに跳ねのけた。



「…堕ちた事は有名ですが、理由(まで)は……」

【中将】フルーレティ

 能力:一夜の内に仕事を片付ける、望む個所に雹を降らせる



「そう、」



 端的に返答を返し男は前を向き直した。フルーレティも同様に前を向き直した男を眺める。


 くすんだ長い赤髪を下の方で一つに括り黒ずんだ瞳を書類に向けている。世の理として高貴な者は己の身を飾り自らの存在を主張する煌びやかな装飾品(アクセサリー)を付けているものだがそんなものは一切なく何処(どこ)にでもいる様な、街角の塀に腰を掛け詩を案じて居る青年かのような風貌だ。

 少し特殊な所があるとすれば左腕に黄金の腕章をつけている所位だろうか。



「詰まりベルゼブブ様は自分が神々の王から零落した理由が腑に落ちない―――と?」



 ベルゼブブ、ベルゼブブ、ベルゼブブ。(ゼブブ)、ああ何と忌々しい



「端的に云うとそう。意味判んないんだよ本当に」


「して零落した理由とは?」



 フルーレティが問いかけベルゼブブと呼ばれた男は唸り声をあげ少し宙を見上げ書類の山を見上げ自分の掌を見、口を開けた。



「【私を祀り上げる儀式が性的行為が在ったから】」



「はい?」


「儀式が性的だったから其れを嫌悪した人々に堕とされたのが理由の一つ」


「え、」


「可笑しいと思わない?!」


「へ」


「だってさ~」



 ベルゼブブは立ち上がり己の拳を強く握り演説を始めた。



「抑々私は豊穣の神な訳でさ儀式の中にする行為全てに意味が或る訳。なのに其れを淫らだ排除すべきものだとする輩が大勢いる訳!!?」


「淫らは淫らでしょに……」



「加えて云うと現代は性を全て悪だ排除すべきだっていう思想も私は気に入らない!勿論昔からある邪淫等は排除されるべきです、(しか)し邪淫と私の儀式は似ても似つかないもの!!と云うか其の性的行為を仕事として誇りを持っている者も同じ人間の中に入るのに!!」


「まあ……そうですねェ、」



「人間は其の己が排除している性的行為で生まれ性的行為で子孫繁栄をし栄枯し続けているというのに!!全く人間の思考は意味不明です。加えてそんな人間の信仰心に依存した他の神々も意味不明です」


「貴方時々凄い発言してきますよね大丈夫かな此れ【R指定】入らないですよね?」


【】(黒括弧)だけ抜き取るとあの、人の名前に聞こえちゃうな」


「凄い如何でも良い」



 一通り話し終えたのかベルゼブブは冷静と成り再び席へと腰かけた。口をへの字に曲げ不貞腐れた様な表情を浮かべ書類の山から一枚一枚書類を手に取る。



「ホント、………………………私が儀式決めてる訳じゃないのに……」



 眉を顰め苦しそうに呟いたが其れは誰にも届くはずなかった。



「うわー此れ面倒くさい奴だ…サタン様からの奴に…フェニックスの、あー高天原出禁になったあれか…」



 ポツポツ独り言を呟きながら仕事をするのは何時もの事だが何だか聞き逃せない事が聞こえた。あの不死鳥のフェニックスが神の国高天原を出禁。

 首を傾げる様な単語の連続にフルーレティは思わず口をはさむ



「あの、フェニックスが神の国を出禁…とは?」


「あーーあれはフェニックスだけどフェニックスじゃないって云うか…フルーレティにはまあ関係の無い話だから知らなくても大丈夫な奴」


「知らなくても良い奴と同時に凄い気になるんですが」


「否ー出禁になったのは千年くらい前の話だし今時流行らないよ」


「流行る流行らない以前の話じゃ…?」



 書類を片付けながら他愛ない話をする。

 此れが他愛ないかは人の基準によるがフルーレティとしては全く他愛は無かった。



「兎に角レティが持ってきた書類は早急に片付けて下さい」



「毎回思うんだけど君そんな感じで一人称自分の名前なんだね」


「三千年近くの付き合いで今更ですか」


「確かに【フルー】より【レティ】の方がマシか」


徐々(そろそろ)ムカついてきました其の顔面打ん殴って善いですか?」


「御免なさい」



 項垂れ乍らも書類作業の手は緩めない。

 書類を部類分けする時に在る書類の部分で手が止まった。



「ああ其れとフルーレティ。私七つの大罪の皆と定例会議有るらしいから」


「……其れって七つって言ってますけど結局集まるのは六人ですよねベルゼブブ様が暴食。加え名前が違うだけのベルフェゴール(ベルゼブブ)様が怠惰を担当されていますから。」


「まあね~。七つの大罪、一柱の嫉妬担当のリヴァイアサンの性で毎回広い会場取らないといけないから面倒くさいんだよね」



 七つの大罪の一柱レヴィアタン、リヴァイアサンとも云われる嫉妬を司る悪魔。海と水をも司る海に住む巨大な蛇だ。

 海を司るという点ではある特定の人物が脳内を(よぎ)るが知らないふりをして先程の書類にもう一度手を(かざ)す。


 そしてようやっと事態の深刻さに気が付いたベルゼブブは顔を青くさせた



「あ、定例会議明日だ。」


「其れは残念な事で、明日の仕事も今日の内に片付けておいてくださいね」



 冷静に書類を検分するフルーレティに焦りを覚えたベルゼブブは慌てた様子で切り返した



「いやいやいや!!今回の定例会議私が会場を抑えたりする番なんだよ!ヤバい今からリヴァイアサンも入れる会場押さえられるかなァーー!!?ねえフルーレティどう思う!?」


「早く仕事してほしいと思います。」


「取り合えず【地獄の三大支配者】と【魔王】の職権乱用して会場押さえなきゃ」


「因みに此のアッタル神の書類は?」


「何で其れ私に回ってきてるのーー?!」


「地上の統制についての意見が聞きたいと。緊急じゃなくてもいいらしいです」



 焦りまくっているベルゼブブとは反対に冷静なフルーレティは己の仕事を続ける。

 ベルゼブブは卓上に在る無数の書籍や電話帳を広げ全力で頭を回していた。



「じゃあ其れ後回し!!フルーレティ今から抑えられるでっかい会場って知ってる!!?」


「レティに今聞く事じゃない気もしますが…レティは知りませんよそんなの」


「君の能力【一夜の内に仕事を片付ける】でしょ!?手伝ってよ!!」


「否です面倒くさい。」


「そんな露骨に厭そうにしないでよ!」



 取り敢えず会場は前と同じで良いか。黒電話で電話番号を思い返しながら電話を掛ける。最悪予約が埋まり切っていても先程言った通り職権乱用すれば何とかなるだろう。


 フルーレティは己の仕事は終わったのか持ってきた書類を唯でさえ積み重なっている書類の中に無尽蔵に置きベルゼブブに背を見せる。



「じゃあレティはもう戻りますんで。」


「酷い!!手伝ってくれてもいいのに!此の人で無し!」


「レティもベルゼブブ様も人じゃないでしょうに…」



 苦言を呈し執務室の扉に手を掛けたフルーレティにベルゼブブは顔をやった。



「ああ、其れとフルーレティ」


「はい。何でしょう」



 扉に手を掛けたまま振り向くフルーレティ。ベルゼブブは顔に強かな笑みを浮かべ言葉を発した。



「あんまり其の名前(ベルゼブブ)で呼ばないで貰えるかな…?」



「……覚えてたらそうしますよ」


「えーもうちょっと敬ってよ~私神々の王、地上の王でもあるんだよー」


「此処は地獄でレティは悪魔ですが。」



「……魔王だもん、地獄の三大支配者だもん私」


「はいはいではレティはもう行きますんで」


「お昼休憩いってらっしゃーい」


「今は夜ですし戻って来ませーん」



 勢いよく扉を閉める音だけが執務室に響いた。

 音が反芻(はんすう)し取り零すように地面へと落ちていく。


 そしてベルゼブブは自身の座っている椅子の背凭れに体重を掛け天井を仰ぐ。そして書類の山を見る。



 七つの大罪、怠惰担当ベルフェゴールとしての書類。七つの大罪の一柱暴食担当、地獄の三大支配者、魔王ベルゼブブとしての書類。東方勢力の支配者、バエルとしての書類。砂漠と戦争の神、セトとしての仕事依頼

 そして神々の王、地上の王豊穣神バアルとしての書類。


 書類の束に囲まれ項垂れ、ベルゼブブは声低く力無く呟いた。



「………過労死する…」



 己が死なない事も理解していながらそう呟く目にハイライトは無かった。





盛大に付け加え忘れていましたが、


ベルゼブブ=バアル=セト=バエル=ベルフェゴール


です。本文中に発言するのたぶん忘れていました。



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