表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/12

8:side エドガー ~苦悩の日々~

ティリット王国から縁談の話が来た時は、頭に血が上ってしまった。

なんでシンシアを他国に嫁がせなければいけないのか。

父上も叔父上も、当のシンシアまでもがそれを受け入れていると聞いて、何も信じられなくなった。


確かに我がハンフリーズ帝国の皇族にも、高位貴族の筆頭とされる公爵家にも年頃の令嬢は居らず、国内で未婚かつ婚約者の居ない女性の中で最も地位が高いのはシンシアだった。

それも当然だ、彼女に言い寄る男は全て俺が牽制してきたのだから。


それが何だ、ティリット王国の第三王子と結婚させるって?

二国間の和平のため?

そんなことの為に、シンシアを遠い異国へと嫁がせようと言うのか。


しかも父上は、俺が反対することを分かっていて、俺が不在の隙にシンシアを出国させた。

裏切られた気分だった。

いや、事実裏切られたんだ。

俺のシンシアに対する想いを知りながら、彼女を別の男に嫁がせるなんて……。


「お前の結婚相手なら他にも候補は居るが、ティリット王国との絆を深めるには、彼女ほどの適任者は居ないのだ」


父上はそう言っていた。

ふざけるな。

俺の心にだって、シンシアただ一人しか居ない。


出来の良い兄上と比べられて、荒んでばかり居た幼い頃。

彼女の笑顔だけが、俺の癒しだった。

皆それを分かっているくせに、どうして俺からシンシアを引き離そうとするのか。




そんな彼女が、このハンフリーズ帝国に帰ってきた。


ネックレスに掛けた魔法が発動したと気付いた瞬間、心臓が凍り付く思いがした。

シンシアの身に、一体何があったのか。

彼女のことを考えない時はなかった。


毒を飲まされ、殺されかけたと聞いて、ティリット王国の第三王子を殺してやりたいとさえ思った。

俺のこの手で八つ裂きにしても、まだ足りない。

シンシアを妻に迎えるという、この世で一番の幸福に恵まれながら、何を企んでいるのか。


腹が立つ一方で、同時にどす黒い喜びに打ち震えもした。

もう二度と、彼女を離さない。

この帝国で、俺の傍に置いて、他の男の手の届かぬところに……って思っていたのに。


どうして、シンシアは侯爵領で余生を過ごすなんて言うんだ。

あんまりじゃないか。

俺の想いを分かって言っているのか、それとも……。


父上も兄上も「そんなに一緒になりたければ、自分で口説け」の一点張りだ。

ああ、そんなことは分かっている。

勿論、そうするつもりだ。


これ以上、後悔なんてしたくない。

二度と彼女を失わない為にも──もう、なりふり構ってなんて居られないんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらで公開している短編小説「どうして私が出来損ないだとお思いで?」が、ツギクルブックス様より書籍化されることになりました!
情報ページ

また、現在ピッコマで掲載されている小説

【連載中】捨てられた公爵夫人は、護衛騎士になって溺愛される ~最低夫の腹いせに異国の騎士と一夜を共にした結果~
著:黒猫ている / イラスト:煮たか様

【完結済】魔族生まれの聖女様!?
著:黒猫ている / イラスト:にしろしま様

こちらもどうぞよろしくお願いします!
捨てられた公爵夫人は、護衛騎士になって溺愛される ~最低夫の腹いせに異国の騎士と一夜を共にした結果~ 表紙画像 魔族生まれの聖女様!? 表紙画像
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ