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プロローグ

〈探索者〉。




 それは、一般人とは一線を画す身体能力を有し、スキルと呼ばれる未知の力をもってして〈ダンジョン〉を攻略せんとする存在。


 今から十年前――『厄災』と語り継がれる現象が世界各地で発生し、人々に大きすぎる恐怖と影響を与えた。

 突如として出現した巨大な空間〈ダンジョン〉と、そこに巣食う異形の怪物。

 その日、ダンジョンから出現した奴らは日本の地面を踏み、悲鳴を上げて逃げる人々を喰らい、血の海をつくりだした。


 このとき各地で同時多発的に発生していた厄災の被害は、合算すると死者は千二百名、負傷者は一万名にまで上った。


 未曾有の事態に混乱を極めた政府。対抗もできず人命救助一辺倒だったが、厄災から数週間経った頃、ある一つの知らせが寄せられたことにより事態が急変する。


 ――その知らせというのは、一部の人間にはモンスターとの戦闘が可能であることが確認された、というもの。


 これを受け政府は急ピッチで対応を進め、並行して、人類の命を守るために闘える者を探した。

 各地では、厄災の発生と同時に特異な力をもつ人間が現れ始めていた。彼らはモンスターを前にした際、互角に渡り合うことができた。


 政府の要請に応じて集められた彼らは、モンスターを討伐して厄災を鎮める任務を命じられる。これが〈探索者〉の始まりである。



 そして、彼らの一年に及ぶ決死の抵抗により、厄災は鎮まることとなった。



 だが、依然としてダンジョンの存在は残っており度々モンスターが出現したため、その一年後に〈探索者支援省〉が設立された。また各主要都市には探索者を養成するための学校が設けられ、再び訪れるかもしれない厄災に、日本は最も早く対処を完了した。



 それから八年後の現在、探索者の数は五十万人を超えた。そのうちの三割ほどは学生が占め、政府の手でつくられた〈探索者育成専門学園〉に通っている。


 通称〈学園〉では、探索者の資質を有する者のみが入学を許可され、国が主体となって行っている研究をもとに組まれたカリキュラムを受けている。


 学園生はそれぞれにもつ能力を開花させていき、多様な訓練を積んで、優秀な探索者になることを目指して日々邁進している。







 かくいう俺――大凪零斗もそのひとりだ。周りより些か劣ってはいるが、探索者を目指す気持ちに偽りはないので、苦渋を飲みながらも学園での鍛錬とダンジョンでのレベル上げに励んでいる。


 そうやって、学園の入学から三ヶ月が過ぎた頃。

 生徒たちの間ではこんな噂が広まりつつあった。


 ――最近この辺りのダンジョンに〈死神〉がいるらしい。出会った探索者は逃げる暇もなく殺される。容赦はあり得ない残酷無慈悲な殺人者、と。


 顔を隠している、体型は男、という曖昧な情報しかない〈死神〉だが、その存在について有力な説がひとつあった。


 ――〈死神〉は学園の生徒で、犯罪に手を染めている問題児である。





「まいったな……探索者を襲う〈死神〉って、それ俺なんだが」




 俺はダンジョンで人を襲っている。〈死神〉とやらは俺のことなんだろう。


 だがいずれも悪行を働く犯罪者〈クライマー〉であって、単なる探索者には手を出していない。これは誰よりも低いレベルを上げるためだ。


 怪我しないとはいえ人間に攻撃を加えているのだから多少は話題になるかと考えていたが、まさか〈死神〉なんて噂を立てられるとは思っていなかった。



 でもこればかりはどうしようもない。なぜなら――



「手加減なんてできないな。だって俺は、『スキル不明』なんだから」


 自分のスキルが”???”で不明なのに手加減だなんて、無理があるだろ?

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