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終の人  作者: 百島圭子
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エリザベートの運命を知りたい。一文字ずつ丁寧に囁きを拾っていく。林檎ジャムの甘い瓶の中ですらせっかちな心はやきもきして訳していく。早く幸せを確認したい。


『答えは聞く前からわかっていた。彼は私を拒絶する。彼の信仰は私の存在を許しはしない。違う。彼が私を受け入れないだけ。あの愛は偽りだったのだろうか。悲しい。初めから数か月でアフリカに行くことが決まっていたのだろうか。だから残りの日々をただ楽しみたかったのか。遊ばれただけ?娼婦のように?娼婦のほうが賢明だわ。ちゃんと対価を受け取るんだから。心をぼろぼろにされることもない。

たった数か月の幸せを私にもたらして去って行く。時間は短くても傷は深い。愛も深い。』


ああ、なんてことなの、可哀そうなエリザベートを抱きしめてやりたい。こんなに愛しているのに。ヨハネスはどうしてエリザベートを愛したの?結婚してはいけない宗教なの?だったらなぜエリザベートを愛したの?


絵里はエリザベートの動揺を共有し、その痛みを優しく包んで慰めた。一緒に傷つくことしかしてあげられることがない。ヨハネスはエリザベートに出会う前からアフリカに行くことになっていたのかしら。それともエリザベートと別れるためにアフリカに行くことにしたのかしら。絵里にはヨハネスの真意がわからない。


たった数か月の幸せ。愛は時間では測れない。時間と愛の深さは比例しない。絵里は法廷の証人席で宣誓をして証言できた。解剖したハンスへの愛を検死して指さして説明できるだろう。陪審員を全員納得させられる。愛と時間の因果関係を物的証拠として立証するだろう。悲しみを数値にできるなら、傷の深さを測れるなら。


『ヨハネスには信仰がある。彼とは一生一緒にいることはできない。私のためだと言う。私にはもっと相応しい愛があると。そんなことどうしてあなたにわかるの?私に相応しい愛は私にしかわからない。

ヨハネスには信仰がある。それが彼の人生。彼の人生に私は必要ない。信仰と結婚したのだから私とは結婚できない。』


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