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朝から雨。
ハンスは携帯電話で撮った写真を整理してみる。ストレージが限界だと数日前からしつこく警告されていた。紅茶のマグを手にソファにうずまる。薄暗いリビングで次々に日本の写真を消去していく。ゴミを捨てるのに躊躇することがないように写真を捨てるのに戸惑いはない。
ハンスは三週間の航海で奇妙な国の珍しい女に触れてみたくなった。罪の意識など皆無だ。自分の眼差し、自分の指先が重罪を犯していることなど気づいていない。
東京の趣味の悪いビルの明かりはハンスを麻痺させ、下水道の汚臭さえアジアの香水に変わった。
絵里との未来などもともとないのだから、聞かれても答えはない。絵里との時間は甘いカクテルのような思い出になった。ハンスの人生のどこにでも散りばめられている赤いカクテルだ。
雨の音が頭に肩に落ちてくる。絵里は美しかった。恋しいのか?そんなはずはない。過ぎたことに囚われる性分ではない。
言い聞かせるように立ち上がり、机に向かう。終わったのだ。雨に濡れながら次の企画に目を通す。そう、終わった。




