表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの救世主  作者: 社容尊悟
第一章
4/99

 褒めてくれないのなら、何も頑張らなくていいかと敦也は努力するのをやめた。唯一の取り柄だった、『真面目で勤勉な努力家』を捨てたのだ。けれども、敦也は勿体もったいないことをした、とは思わない。自分には価値がないと決めつけているから。

 どうすれば良かったのだろう。

 どうすれば、両親は満足してくれたのだろう。

 芸能界に入って、自分の能力をお金に換えられたら、両親は自分の存在を認めてくれたのだろうか。ただの役立たずの穀潰しだと、思われなかったのだろうか。せめて金蔓かねづるくらいには、ランクアップしていたのだろうか。

 性格が歪んでしまうほどに、この世界が大嫌いだった。

 彼の能力そのものは非常に高く、重宝されるものの、社会不適合者であるために、責め苦を受けざるを得なかった。

 それが、発達障碍。

 発達障碍者として生まれてきたために、多くの人間に存在を否定され続けてきた。

 だから、他人がどうなろうと、自分がどうなろうと、世界がどうなろうと、敦也にとっては些末さまつなこと。自分がたとえこの世界から消えようとも、どうなったって構いやしない。むしろ、現実の世界よりも死後の世界に興味があった。死んでみたら、どうなるのだろうかと。

 現実世界じゃ、どんなことにも無関心。毎日のニュースで他人が殺されただの、他人が死んだだの、災害で誰かが苦しんでいるだのと、耳を澄まさなくても情報が入ってくる。

 そんなに苦しんでいる人がいるのかと、現代の日本社会で普通に学校教育を受けて、普通に優しい人物に育ってきた人間ならば、同情の一つも抱くものなのだが。敦也はその感情すら欠落していた。

 本当に、他人が死のうが、生きようが、どうでもいいのだ。同情もしなければ、共感もしない。苦しんでいる人々を助けたい、助けてやりたいとも思わない。自分が苦しんでいるときに、誰も助けてくれなかったから。スーパーマンは自分の前には現れなかったから、誰かに救いの手を差し伸べるという思考に至らない。幼い頃夢見ていたスーパーマンは、現実の世界にはいないのだ。スーパーマンはやっぱり、仮想の世界にしかいない。サンタにだって会ったことがない。

 どんなに望んでも、自分を救ってくれるような存在は、どこにもいない。

 神だって、本当はいないのではないかと敦也は悔しげに歯噛みした。

 目の前で事故が起きたとしても、誰かが死んだとしても、だからなんだ? と切り捨てるような、冷酷な人間。そうなるように育てられて、なんでも他人事ひとごとのように考えていた。自分の身の回りで起きたことにも興味を示さない。誰かに依存する気もないし、いつ死んだって、どうでもいい。この世に未練なんて何もない。生きているのか死んでいるのかもわからない、魂の抜けた抜けがらのように死んだ目をして、日々を過ごしていた。

 何も面白くない、ただ惰性だせいでダラダラと生きているだけで、生きる希望なんかありゃしない。

 それらを陽太に気づかれないように、敦也は適当に話題を考えているのだった。

 陽太は一瞬含みのある表情をしてから、明るい話をしようと身振り手振りをした。

「そういえばさ、知ってる?」

「何を?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ