①
出会いがあれば別れがある。それはよく言ったもので、高校を卒業してから高校の友達とは全く連絡を取らなくなってしまった。親友ともめっきり会わなくなって、何が親友だ、と敦也は一人ごちた。文句の一つくらいは言ってやりたいものだと友達の陽太に愚痴を零す。
「あー、そうだね。それはよくあることだよ」
陽太は苦笑いを浮かべていた。女の友情は男が絡めばすぐに拗れるけど、男の友情もたいして変わらないと。特別に仲の良い男同士でも、学校が変わったり居住地が変わったりしたら、固く結ばれていたはずの友情が、ある日突然自然消滅するパターンもあるのだと。その程度で壊れてしまうような関係を、友情と言えるのだろうか? ましてや、親友だなどと豪語しておきながら、あっさり関係を断ち切るなんて、冷たすぎやしないだろうか。
親友って、一体なんなんだろう。
敦也は口を尖らせて、不満を陽太にぶつけ、同意を求めた。相手に同意を求めるなんて女性同士の会話みたいで、普段の敦也ならばいやがるのだが、今の彼は顔が真っ赤で陽気な飲んだくれ。
「だろ? 親友なんて、作るもんじゃないよなあ」
わいわいがやがやと周りの客が五月蠅い中、カクテルパーティー効果のおかげで二人は会話に集中できている。二人は何杯も酒を飲んだので、少しばかり話も弾む。ほろ酔い気分に高揚感。酒の弱い二人は一杯だけで気分がハイになる。
心地よく酔っ払っているのだ。言いたい放題言って、楽しんでいる。
陽太はグラスを回しながら独り言のように呟いた。
「親友ってさ、なんなんだろうね」
「は?」
「親友ってどんな定義で、どんなものだと思う?」
「さあ……人によって違うだろ」
わからないから、誰にでも言えることを言ったまでだ。
「そうだね。僕たちは親友とかには無縁だと思うし、この先……できっこないよね」
「何が言いたいんだよ」
陽太の突然の物言いに、敦也は眉根を寄せた。
陽太が何を言いたいのか、わかっているけれども、わからないフリをしていた。
「いや……親友が欲しいなって思ってさ」
「……べつに、必要ないだろ。友達がいれば十分」
「僕は違うんだよ。相談し合えるような仲の人が欲しい。ぶつかって、意見が食い違っても、最後まで話し合える人と友達になりたい。ぶつかるのってしんどいけど、そういう人がいたらいいなって、思うんだ。……敦也は違うんだね」
「……そうだな……。俺は……」
――親友なんてものは、もう懲り懲りだ。