前世の記憶
しまったああああああぁっ!!
動揺して拙い事を口走っちゃったぁっ!!
「めっちゃ挙動不審になってる時点でバレバレやで。それに軽トラはあかんやろ。アレ見たら前世の記憶持ってる奴には一目瞭然や」
ですよねー。
「そ、そっちこそ、あんなロボ作っておいて何言ってるのよ」
「……ロボ?何のこっちゃ?」
あれ?あのロボとは関係無い人なの……?
前世の話をされたから、何か繋がりがあるかと思ったのに。
「貴方も前世の記憶を持っているのよね?」
「せやで。それで色々ヒット商品作ってこの商会をデカくしたんや」
なるほど、フェチゴヤ商会が成長著しいのはイロハさんが前世の知識を利用して儲けているからなのか。
「でもワテはなるべく分からんように振る舞ってきとんねん。魔力も弱いから敵対的な前世の記憶持ちに襲われたらお終いやさかい。それに比べてお嬢様は堂々としてらっしゃるなぁ」
「私は護衛もいるし、自分で大体迎撃出来ちゃうからね。貴方が仮に敵だったとしても問題無く対処できるわ」
「ワテはお嬢様と敵対する気なんて無いで。ただ話をしてみたかっただけや」
まぁ敵ならもっとコソコソ嗅ぎ回るわよね。
「にしても羨ましいわ。お貴族様やから、さぞ強いスキル授かったんやろなぁ……」
「私のスキルは『農業』よ?」
「……はい?」
「『農業』だから本来戦闘には向かないのよ。前世の知識で無理矢理やってるけどね」
まぁスキルちゃんがかなり優秀だから出来る事だけど。
私の言葉にイロハさんはプルプルと震え出す。
そして堪えきれなくなったのか、思い切り吹き出した。
「ぷははははっ!じゃあ、あの軽トラ、前世の知識で再現したんじゃなくて、スキルで出したんか!?傑作や!!」
「そんなに笑う事ないじゃない……」
「いや、すまんすまん。っと、申し訳ございませんでした」
「別に人が居ないところでは普通に喋ってくれて構わないわ」
「さよか?ほな、そうさせてもらうわ。にしても、ワテにスキルの事言ってもうて、ええんか?」
まぁ普通に考えたら迂闊な行動に見えるだろう。
「あら、これは脅しよ」
「え……?」
「前世の知識に加えて私のスキルまで知ったのだから、もし敵に回ったら本気で消すって事」
「聞かなきゃ良かったわ……」
「というのは冗談だけどね。寧ろ前世の知識があると知られてしまったのなら、運命共同体に巻き込みたいかなって」
イロハさんの顔が若干引き攣った。
「まぁ折角同郷の徒に出会えたんやし、仲良うなっておこうとは思っとったんやが。お嬢様、何が望みや?」
「貴方のスキルを教えて欲しいわ。もちろん他言する気は無いわよ。ただ私の役に立ってもらいたいだけ」
「うへぇ、先にスキルを聞いてもうてるから、断りづらいやん……。やっぱ仮にも貴族様なんやから、もっと慎重にいくべきやったか。カルティア侯爵家のお嬢様は割とポンコツやって聞いてたのになぁ……」
「ちょっと待ちなさい。誰がそんな情報を?」
「あんたんとこのメイドや」
どのメイドだ?
いや、私専属のミーネしか考えられないわね……後でしばく。
「まぁ、ワテのスキル教えたってもかまわんけど、役には立てへんで」
「それはスキルが弱いって事?それとも魔力が少ないから?」
「いや、魔力はスキルを使えば数倍に膨れ上がるんやが……」
魔力が数倍に膨れ上がる!?
何よそれ、もの凄いチートスキルじゃないのよ!
めっちゃ欲しい!
「前世の記憶を持ってるせいで、ワテには使えなかった」
「前世の記憶を持ってると使えない……?」
「そや。一度使ってみたんやが、悶え苦しんだ……」
何よその制限……。
それじゃ農奴スキルで複製しても、私にも使えないって事じゃない。
いったいどんなスキルなの?
「ワテのスキルはな……」
ごくり……。
「『魔法少女』や」
……ん?
何そのスキル?
「聞いた事無いスキルね。もしかして少女限定の魔法使いスキルだから、前世の年齢も含めると魔法が発動出来なくなるって感じなの?」
「ちゃうで、もっと恐ろしい事になる」
「もっと恐ろしい事……?」
いったい何が起こるの?
「このスキルを使うと、魔法少女に変身するんや」
「……変身ってまさか」
「せや、コスプレ状態になる。スキルを得た当時ですら、前世の年齢も合わせたら30超えるワテには無理やった……」
そりゃ前世一般人なら30超えて魔法少女は悶え苦しむ事になるだろうね。
だがノープロブレムだ。
何故なら私、前世レイヤーだったし!