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ゴーレム

「よし、そういう事なら早速連絡してくるとしよう」


 そう言ってお父様はダイニングから出て行ってしまった。

 ちょっとお父様、また意味深な言葉を残して行かないでよ……。


 殿下とは、王位についていない王族を呼ぶ時に使う言葉だ。

 私と関わりがあるのは、たまにパーティで顔を合わせる第一王子のグレイン殿下ぐらいだ。

 他の王子様、王女様はまだ幼いので会った事すら無いし、それ以外となると王弟殿下だけど、私とは全く接点なんて無いから私に確認を取るのも不自然だ。

 とするとやっぱりグレイン殿下の事なんだろうけど、一体何だろう?

 グレイン殿下とはちょっと世間話をする程度の関係でしかないのに、何があるって言うの?


 私が悶々としていると、お母様も席を立つ。


「ではアグリ、スキルの練習に向かいましょう?」


 ああ、お父様の言う事も気になるけど、お母様にバレないようにする事も考えないといけない。

 朝から頭を悩ませる事が続いて、早くも疲れて来ちゃったよ……。

 湿布の数増やそうかな?




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 私とお母様は、昨日落雷でえぐった丘へと来ていた。

 案の定、セヴァスも付いて来ている。

 2人に見られながらスキルを誤魔化すのって、大変すぎる気がするんですが?

 でもバレたら追放だ。

 慎重に行かないと……。


 なんて思惑を潰すかのように、お母様が提案してきた。


「アグリ、あなたのスキルは土系の方が相性がいいそうですね。土系魔法の定番と言えば『ゴーレム生成』。私にゴーレムを生成して見せてくれないかしら?」


 はい無理。

 農業とゴーレムがどう関係あるって言うのよ?

 どこの世界に農業するゴーレムが……農業するゴーレムなら作れるのか?

 どうなのMyスキル?

 え?無茶言うな?


「お母様、私まだスキルに不慣れですので制御出来るかどうか分からないのですが……」

「問題ありません。暴走した場合は私のスキルで破壊しますから」


 おおぅ……。

 お母様のスキルってどんなものかよく分からないけど、威力は絶大で、その昔お父様をボコボコにしたとかメイドのミーネから聞いた覚えがある。

 王国の魔導師団長と互角と言われているお父様をボコボコにって、お母様が王国最強なんじゃない?

 つまり今の私には拒否権など無いという事。

 逆らえばボコボコにされる……。

 やるしかないっ!


「で、ではゴーレムを生成します……」


 暴走させたりしたら、お母様のスキルでボコボコにされる。

 なるべく私に制御出来て、且つお母様を納得させられるゴーレムを生成!

 無茶なのは分かってるけど、がんばってスキルちゃんっ!!

 私が魔力を注ぐと、昨日耕した土がうごめき出した。

 あ、ゴーレム作るのが無理だからって、土中で召喚してそれらしく地上にせり出すつもりだな?

 まぁそれでもいいや。

 土から生成したように見えてればおkよ。


「出でよゴーレムっ!!」


 それらしく叫べば、土が盛り上がり、抉られる前の丘ぐらいに膨らんだ。

 そしてその土が崩れると、中から現れたのは……


「……アグリ、これはゴーレムですか?」


 お母様が疑問に思うのも無理は無い。

 だってこれ耕運機こううんきだもの……。

 しかも荷台付き。

 荷台の前部には座席があって、搭乗して運転出来る仕様だ。

 前世のおじいちゃんがこれで農道を滑走してたっけ。


「馬車のような荷台もあるわね……でも前部にも車輪がついている。車輪で移動するタイプのゴーレムとは斬新ね」

「奥様、あまり近づき過ぎると危険です!お嬢様はまだ制御が上手く出来ないそうですので!」


 お母様がマジマジと耕運機を観察している。

 それをセヴァスが近づき過ぎないように注意する。

 混沌カオスっ!

 私はどうすればいい?

 運転すればいいのかしら?

 でもあれを運転したらまた農業衝動が襲ってくる気がするのよね……。

 やっぱり私も遠巻きに見てる事にしよう。


「アグリ、このゴーレム全く動かないのだけれど?」

「暴走しないようにイメージしたので、たぶん私が魔力を供給しないと動きません」

「そう、じゃあちょっと動かしてみて」


 遠巻きに見てるなんて許されなかったようだ……。

 渋々私は耕運機の荷台前部の座席に座る。


「あら、形的にそうかと思ってたけど、やはり搭乗型のゴーレムなのね。魔導師団の副団長と同じ事をするなんて、アグリは発想力が優れているわね」


 お母様の賛辞は既に耳に入って来なかった。

 耕運機のグリップを握った瞬間、私の中を衝動が駆け巡り、既に正気を保つ事は出来なくなっていたからだ。

 それは若者がバイクで夜に走り出してしまう衝動に似ていた。

 エンジンはガソリンではなく魔力供給によってイグニッションされる。

 刻むわ4ストロークエンジンのビート!

 私はハイテンションになって耕運機を発進させた。


「ヒャッハー!汚物は堆肥にするぞー!!」


 低速走行で何故こんなにもテンションが上がったのか自分でも理解出来ない。

 後でお母様に「淑女にあるまじき!」って、めっちゃ怒られた。

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