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パーリィ

 王城の周囲は強固で高い外壁に守られている。

 その入口である巨大な門には華やかな飾り付けがされて、多くの貴族達を出迎えていた。

 馬車でその門を抜けても、王城まではまだまだ距離がある。

 しかし、その道程には色とりどりの花が咲いていて、決して退屈はさせなかった。

 護衛見習いとして随行しているヤンとマーも、その花達を見て興奮していた。


「あの花の蜜、美味いんだよな」

「あの花の花びらは、お肉の味がするの」


 そっちかぁ……。

 まぁ楽しそうだから、いっか。


 暫くして王城に辿り着く。

 馬車を降りて、ここからは広い王城内を徒歩で行く事になる。

 ファンタジー世界だと王城はかなり荘厳なイメージで描かれるけど、現実でそんな造りになっているのは謁見の間だけで、パーリィが開かれる会場は多人数が入れる体育館の様な構造になっていた。

 一応それなりに飾り付けはされているが、どうしても前世の学園祭のように見えてしまう。

 まぁこの世界の貴族達にとってはそれが普通のようで、私も以前はそういうもんだと思ってたのよね。

 前世の記憶が戻った今では、違和感しか無いけど。


「うわぁ、何これ。どう見ても学園祭じゃない」


 ふと、どこからかそんな声が聞こえた気がした。

 しかし、既に多くの貴族達が入場していて、その声の主を探す事は出来なかった。

 学園祭って聞こえた気がしたけど、気のせいかな?

 この世界でも学園はあるけど、そういった祭のような事はしていなかったと思う。

 私は気になって、周囲をキョロキョロと見回した。


「どうかされましたか、お嬢様?」


 セヴァスに問われて我に返る。

 前世の記憶に関する事を言う訳にいかないし、別に接触する機会が無ければ放っておいても問題無いか……。


「いえ、ちょっと知人を探していただけです」


 そういえば親友のフランちゃんの姿が見えないなぁ。

 彼女は公爵家の令嬢なので、必ず王家主催のパーリィには参加する筈なのに。

 何か用があって遅れてるのかな?


 結局フランちゃんを見つけられないまま、パーリィは始まってしまった。

 会場の中で、一段高くなっている壇上に王族の方々が現れる。

 あぁ、あの壇が体育館にあったやつに似てるから、尚更体育館っぽさが増してるのか。


「あの壇、学校の体育館にあったやつみたい」


 またどこかでそんな声が聞こえた。

 いったい、どこから聞こえてるんだろう?

 その声が気になって、国王陛下の話が全然耳に入って来なかった。


 と、急に貴族達がざわめき始めた。

 貴族達は皆、視線を王族達のいる壇上へ向けている。

 何を見ているのかと思いそちらに目を向けると、見知った子供が2人いつの間にか登壇していた。


「初めまして。私は第一王女シリア・ベジティアです。以後よろしくお願いいたします」

「初めまして。僕は第二王子コルン・ベジティアです。よろしくお願いします」


 シリア殿下とコルン殿下のお披露目だった。

 このパーティは殿下達の為に開かれたものだったのね。

 なんだ、メイドのミーネが『勝負の日』とか言うから、グレイン殿下が私のスキルを看破する為に開催したものだと思って、変に緊張しちゃってたわよ。

 シリアとコルンが主役なら杞憂だったわね。


 国王陛下の少し長めの話も終わり、漸く会食が始まる。

 新たにお披露目された王族であるシリアとコルンに、誰もが挨拶に行こうと目を光らせていた。

 だが、貴族には序列というものがある。

 まず最初に挨拶するのは、貴族の中で最も位の高い公爵家からであろう。


「お姉様っ!」


 こらこら、公爵家の挨拶かわして突進してきちゃダメでしょう、シリア。

 あと一応公式の場なんだからお姉様もダメよ。

 私は人差し指を立てて口元に当てる。

 それを見たシリアがハッと気付いた表情を見せた。

 うーん、私を慕ってくれる余り、ついついやっちゃったんだと思うと、可愛くて叱れないわ。

 もしあれをわざとやってたんだとしたら、あざと可愛過ぎる小悪魔ちゃんだよ。

 まぁそんな事は無いと思うけど……。


 しかし、つい漏らしてしまったシリアの言葉に、周囲の貴族達はざわめき始める。


「シリア殿下がお姉様と呼んだ?どういう事だ?」

「血縁ではあるまい。あれはカルティア侯爵家の令嬢だぞ」

「でも、確かに殿下はお姉様と言っていたわ」

「まさか既に第一王子殿下との婚約が内定していたのか?」


 パーリィの場は騒然としてしまっていた。

 どうすんのよこれ?

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