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 私とお母様は王城で開かれるパーリィへ参加する為に、王都へ向かって移動していた。

 何故かお母様が私のゴーレムに乗りたいと言い出したので、馬車ではなく軽トラでの移動である。

 私としてはこっちの方が快適だからいいんだけどね。

 それはお母様も同様だったようだ。

 揺れが少なく騒音もしない軽トラの中では会話も問題無くできる。

 おかげで、お母様のお小言が始まってしまった。

 何故に?

 私は少しでも早くお小言を終わらせる為にアクセルを踏み込んだ。


 長い長いお小言。

 馬耳東風、色即是空の心で何とか耐えていると、街道の遠くの方に馬車らしきものが見えて来た。

 衝突しないように速度を緩めようとしたが、どうにも馬車の様子がおかしい。

 なんか、馬車を取り囲むようにワラワラと人だかりが……。


「賊のようですね。急ぎなさい」

「はい、お母様」


 我が侯爵領で賊行為とはやってくれるわね。

 領内の盗賊はお兄様が一掃した筈だけど、流れ者かしら?

 いずれにしても、ここにお母様が居合わせた事を嘆くがいいわ。


「あの賊はアグリ、あなたが何とかしなさい」


 私がやるんかーい。


「お母様、私のスキルではあまり手加減が出来ないのですが」

「相手は賊です。殺してしまっても問題ありません」

「いえ、そうではなく、範囲指定が難しいので護衛らしき方々も巻き込んでしまいます。下手をすると馬車まで……」

「そこを何とかしてみせなさい」


 お母様は闘いとなると殊更厳しくなる。

 出来ないならば創意工夫しろが指導方針なのである。

 まぁやりようはあるけども。


「承知しました」


 稲妻や焼畑は近くに味方がいる時は使えないし。

 ここは自動二輪車で蹴散らした方が良さそうね。


 馬車の手前まで来て急ブレーキを踏むと、制動距離も無い程ピタッと止まり、体への反動も殆ど無かった。

 物理法則無視してんのかしら、この軽トラ?


「ざっと40人ってところね」


 一人飛び抜けて大柄な男がいるけど、あれが賊のかしらかな?

 その頭らしい人物が声を発すると数人がこちらへと飛びかかって来たが、汚い手で軽トラに触れられたく無かったので、そいつらは魔力当てで気絶させた。

 私は即座に軽トラから降り、農家御用達自動二輪車を召喚して乗り込む。


点火イグニッション!!」


 初速からフルスロットルで盗賊のど真ん中に突っ込んだ。

 スキルちゃんの補助も有り、アクロバティックな走行で次々に賊を蹴散らしていく。

 程なくして賊の殲滅は終わった。

 残すは頭のみ。


 その男の丸太のような腕から、見ただけで身体強化系のスキル持ちだと分かった。

 私も農業スキルで身体強化は出来るが、あくまでも生産系の身体強化なので戦闘系のそれには及ばない。

 しかも身体強化は基礎となる肉体の強さが大きく影響する。

 僅か8歳の華奢な腕では太刀打ち出来ないだろう。


 なので、こっちも奥の手を使わせてもらいますよっと。

 スキルちゃん、アレお願い。


『了解しましたご主人様マスター。農奴スキル『金剛』発動!』


 スキルちゃんの新たに覚醒した能力『農奴』には、『増強ブースト』の他に『複製コピー』という能力もある。

 農奴にした対象が持っているスキルを複製して使う事が出来るのだ。

 つまり、農奴を増やせば増やす程、私が使えるスキルも増えていく。

 写○眼を使わなくても複製コピー出来るって知ったら、ヴァンが羨ましがるだろうなぁ。

 そして今回スキルちゃんに使用してもらったのは、ゴブリンキングが持っていたスキル『金剛』。

 身体強化を遙かに凌ぐ肉体の強化を可能にするスキルだ。


「ば、ばかな……」


 賊の頭が私の腕を掴んで動かそうとしていたが、私は僅かに力を込めるだけで難なく抵抗出来た。

 そのまま賊の頭を投げ飛ばし、自動二輪車で顔面走行してやって終了。

 なんとかお母様の出した難題をクリア出来たかな?


 倒れている賊を、害獣防止柵に使う丈夫なロープを召喚し縛り上げていく。

 40人はいくら何でも多過ぎよ。

 馬車の護衛の騎士さん達も手伝ってくれて、なんとか全員拘束する事が出来た。

 騎士さん達に感謝されたが、この領内で盗賊行為を防止するのは貴族として当然の務めだし、この辺りの警戒が甘くなっていたという事もあって、逆に申し訳なくなった。

 治安回復の為にも、流れ者の盗賊がいた事は後でお兄様に報告しておかないとだね。


 盗賊を全員拘束したところで馬車の扉が開き、中から幼い少女と少年が降りて来た。

 どちらも銀髪碧眼の超美形。

 かなり良い身なりをしている事から、良家の子女であろうと思ったのだが、それどころの話では無かった。

 お母様が目を見開き、突然膝を突く。

 私もとっさにそれにならった。


「まさか殿下方の馬車とは存じませんでした」


 殿下……?

 もしや、このお嬢様とお坊ちゃまは、グレイン殿下の妹君と弟君!?

 私は初めてお会いするから顔を知らなかったけど、お母様はご存知だったようね。


「この馬車はお忍び用のものですから。助けていただき感謝します」


 危ないところだった。

 侯爵領で王族である殿下達に何かあったら、侯爵家お取り潰しの危機だったわ。

 それにしても、何故この方達はこんなところにいたんだろう?

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