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人化

 一先ず私は魔力の回復に努めた。

 ゴブリンキングを農奴にするにしても、魔力が無くちゃスキルが使えないからね。

 あれ?今、私の魔力枯渇してるのに、スキルちゃんが自律稼働出来てるのは何故だろう?

 スキルちゃん、私のスキルなのに私の魔力に依存してないの……?


『今は余計な事を考えずに、魔力回復に専念してください』


 あ、今完全に誤魔化したよね?

 おーい、ちょっと怪しいんですけどぉ。

 スキルちゃん、いったい何者なのよ?


『私はただの“農業スキル”です』


 うーむ、まぁ別に困る訳じゃないからいいんだけどね。

 秘密にされるのはちょっと寂しいかも……。


『その時が来たらお話しする事を前向きに検討するかも知れません』


 それ絶対話してくれないやつじゃん。


 などとお話ししながら魔力の回復を待った。

 魔力は安静にしていれば、最大魔力量に対して1時間に10%程回復する。

 私の場合は最大魔力量が多いので回復量も多く、30分もしたら魔力が多めと言われる人の全回復分ぐらいの魔力が溜まる。

 普通にスキルを使う程度なら、常時回復量の方が多いぐらいなので延々とスキルを使い続ける事が出来てしまうのだ。

 ただ今回は、怒りに任せてかなり粗く使ったので、久々に完全枯渇してしまった。

 前回魔力枯渇したのは、数年前、侯爵領へ行くお兄様と離れたくなくて全力で引き留めようとした時だったかな。

 周囲の建物が倒壊して大惨事になったっけ。


 程なくして魔力がそれなりに回復したので、ゴブリンキングの下へ向かおうとしたところ、ゴブリンキングも目を覚ましたようで、苦しそうにうめいていた。


「ゲギャ……くっ、殺せ……」


 おすがくっころ言っても誰も得しないわよ……。


「殺しません。あなたには私の下で働いてもらいますから」

「ギャギ!?な、なんだとっ!?ぐぅっ」


 自動二輪車の攻撃が余程効いたのか、ゴブリンキングは声を荒げようにも、痛みの方が勝ってしまっているようだった。


「私が勝ったのだから、生殺与奪の権は私にあるでしょう?あなたに反論する余地はありませんよ」

「……ギャ。俺が軍門に降るから、部下は見逃してくれ」

「それも却下ね。見逃せばまた新たなゴブリンキングが現れて人々に危害を加えるかも知れない。私は貴族としてそれを許す訳にはいかないのよ。だからゴブリン達は全て私の管理下に置きます」


 ゴブリンキングは顔を顰めながらギロリと私を睨んだ。

 しかし、暫し考えを巡らせた後、抵抗する事を諦めたようだった。


「グギャ……もう好きにしろ……」

「ええ、好きにさせてもらいますわ」


 よっしゃ、労働力ゲットだぜ!!


「では、逃げ出して散り散りになったゴブリン達を集めてくれるかしら?キングならそういった能力も持ってるでしょう?」

「ギャギャ。分かった」


 ゴブリンキングが口笛を吹くと、物陰に隠れていたり、遠くに行ったりしていたゴブリン達がワラワラと集まって来た。

 スキル的な能力じゃなくて口笛で呼ぶんかい。

 焼畑で焼かれたと思ってたけど、思いのほかゴブリンは丈夫だったようで、かなりの火傷を負いながらも殆ど生き残っていたようだ。

 総勢1000匹越えの労働力が手に入る事になる。

 でも、これだけのゴブリンを農奴にするとなると、ちょっと魔力足りないんじゃないかな?


『頭であるゴブリンキングを農奴にすると、その配下にあるゴブリン達も自動的にご主人様マスターの支配下に置かれます』


 なるほど、そうなのね。

 という事で、私はゴブリンキングに対してだけ農奴にするスキルを使う事にした。

 面倒なので、一緒に人化も済ませてしまおうと思う。


「『農奴のうど』っ!!と、『増強ブースト』っ!!」

「ゲギャアアアアアッ!!」


 スキルの発動と共にゴブリンキングが雄叫びを上げると、体全体がボコボコと隆起を始め、体の各所からもの凄い音を出し始めた。

 うわぁ、人化って外見をそう見せるだけじゃなくて、肉体を骨格から再構築するのね。

 私、人間に転生出来て良かったぁ……。


 そうこうしていると、ゴブリンキングの支配下にあるゴブリン達の体も蠢き始めた。

 苦しそうに呻くゴブリン達と、断末魔のような悲鳴と共に5m程もあった体躯がどんどん小さくなっていくゴブリンキング。

 数分で、その混沌とした状況は終わりを告げた。


「はぁ、はぁ……じ、人化した?これはいったい……」

「あなた達は私の支配下に入りました。今後は悪させずに真面目に農業に取り組んでください」


 私の言葉が理解出来なかったようで、皆一様にキョトンとしている。

 火傷を負っていたゴブリン達も、ブーストの影響で自然回復力が増したのか、皮膚は綺麗に治っていた。

 全員皮膚はベージュ色になってるし疑われる事は無いと思うけど、全員が腰布一枚ってのはどうにも良くないわね。

 後で服を調達した方がいいかも知れない。


 さて、色々教えて於きたいのに、もう日が傾き始めてるから帰らないといけない。

 早ければ明日ぐらいにもお母様が到着してしまう可能性があるので、一旦領主邸に戻らないとだし。

 彼らはゴブリンの集落があった場所で寝起してもらうとして、農業の指導についてはどうしようか?


『私が遠隔で指示を飛ばせますので、問題ありません』


 おお、さすがスキルちゃん。

 って言うか、その能力かなりヤバいやつじゃね?

 スキルちゃんがパワーアップし過ぎてて、追放されないように能力を見せるどころか、隠蔽いんぺいしなきゃいけない気がしてきたよ……。


 じゃあとりあえず農業の指導はスキルちゃんにお任せして、野菜の種だけ渡しておこうか。

 種、種っと……あ、軽トラの中に置きっぱだった。

 急ぎ軽トラを召喚して、運転席の脇に置いてあった種入り袋を取り出した。

 そこでふと違和感に気付く——。


「これ、ある意味空間収納よね……?」

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