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能力向上

 魔力が尽きてしまっている私より、ダメージを負っているヴァンの方がまだ動けるようなので、残ったゴブリンの掃討を任せる事にした。

 ヴァンは真っ先に、一番危険であろうゴブリンキングに止めを刺そうと慎重に近寄って行った。


 魔物はいわば害獣なのだから、駆除するのは仕方が無い事だ。

 私は前世で鹿や猪の駆除を手伝った事があるのだが、鹿や猪は解体までして、きちんとその命を食としていただくところまでやった。

 しかし中には食べられない害獣もいて、食べる為じゃないのに命を奪うという行為が少しだけ躊躇ためらわれた。

 その事が気になってヴァンに尋ねてみた。


「ヴァン、ゴブリンって食べられる?」


 私の問いに、ヴァンが凄い顔でドン引きした。


「食おうとしてたんですか?こんな緑色の奴、食える訳ないでしょう」


 そうかしら?

 緑色のかえるなんかは鶏肉に似た味らしいわよ。

 そもそも緑の野菜は栄養豊富で美味しいじゃない。

 まぁゴブリンは人型だし、自ら試してみようとは思わないけどね……。


 食べられなかろうと害獣であれば、農作物に被害が出るので処分しなければならない。

 虫なんかはその最たる例だろう。

 虫食べる人もいるけど……。

 しかもこのゴブリン達は農作物だけでなく、人にも危害を加える可能性が高い。

 それを貴族として見逃す事は出来ないのよね。


 だが、ゴブリンキングの命が今正に尽きそうになってるのを見て、私は思ってしまった。

 勿体ない……って。

 あの体力を農業に使えば、どれ程の生産力になるだろうか。

 でも私の全力の稲妻に耐えるような強力な魔物を、完全な管理下に置く事なんて不可能よね……。


『いえ、出来ますよ』


 え?スキルちゃん、どういう事?


『先程ゴブリンキングを倒した時にスキルが更にレベルアップしたので、色々と出来る事が増えました』


 いやいや、ゴブリンキングはまだ生きてるから倒した事にならないでしょ?


『先程、稲妻に打たれた時点で絶命していたらしく、その時点で倒した事になっていたようです。その後何かの力で復活したようですが……』


 何かの力って、ヴァンのフラグじゃないでしょうね?

 もしそうだったとしたら、「でぇじょぶだ。フラグで蘇れる」がまかり通る世界って事になってしまう。

 恐ろしいわね、フラグ……。


『話が逸れましたが、ゴブリンキングとゴブリン達を完全に支配下に置く事が、スキル能力向上により可能となりました』


 農業のスキルなのに、ゴブリンを支配下に置けるの?


『はい。“農奴のうど”にする事で可能です』


 あー、それがあったか。

 まぁ、あんまりイメージは良くないけどねぇ。

 某地方の封建社会に於いて、自由を制限されて領主の持つ土地を耕していた農民達の事を指すのよね。

 前世でお祖父ちゃんが、農業が儲からないからと自虐的に言ってたりもした。

 お祖父ちゃんが儲からなかったのはトラクターにお金つぎ込み過ぎてたからでしょ。

 トラクターの屋根の後部にウイング付ける意味ある?


 それはさておき。

 農奴にするのはいいけど、いくら管理下にあると言っても、ゴブリンがいるって知られたら討伐されちゃわない?

 この世界には冒険者がいるから、自分のランクアップの為に狩りに来そうだし。

 そもそもこの領地を管理するお兄様に知られたら大目玉よ。


『大丈夫です。ゴブリンキングを倒した経験値は相当なもので、他にも能力が増えています。農奴にした者をブーストする事が可能になりました。これにより、ゴブリンキングを強制的に“人化”させる事が可能です』


 人化!?

 それって魔物に転生した人達が求めるという、ラノベによくあるアレ?


『はい。上位の魔物だけが得られる特殊スキルです。本来であればドラゴンに匹敵する程の強者にしか使えない能力ですが、農業スキルで農奴をブーストする事でゴブリンキングでもそれが可能となります』


 なるほど、それなら全ての問題が解決出来るし、更に私は労働力を手に入れる事が出来る。

 お母様が侯爵領の方に来てしまうから、自由に農地まで出向けなくなる可能性があるのよね。

 本当は自分で全部やりたいけど、ある程度は人に任せるようにしないと農作物を育てるのは難しいと思う。

 よし、それで行こう!


 私が農奴にしようとゴブリンキングを見たら、ヴァンがゴブリンキングの首を落とそうと剣を振りかぶってるところだった。


「ちょっ、ヴァン、ダメぇっ!!」


 私の叫びも空しく、ヴァンが剣を振り下ろしてしまう。

 しかし、その切っ先がゴブリンキングに届く前に、ゴブリンキングの上に乗っかっていた農家御用達自動二輪車がアクセルターンを決め、後輪がヴァンを吹き飛ばした。


「ぐふっ!?」


 その際、偶然にもタイヤがあごかすめたヴァンは、白目を向いてそのまま倒れてしまった。


『間に合って良かったです』


 やはりスキルちゃんが先程と同じように自動二輪車を動かしたのね。

 もうスキルちゃんだけでも闘えそうな気がする……。

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