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パーク  作者: 円間
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第一のアトラクション 城4

 母親が腰を下ろしているクッションはだいぶ前の母の日に、なつみが彼女にプレゼントした物だ。

 クッションは当初の柔らかさを無くし、少し汚れていて古めかしく見えた。

 そんなの、もう捨てて良いから、となつみは母親に言っていたが母親は、「このクッション、凄く気に入っているの。だから捨てるなんて嫌よ」と言って使い続けている。

 なつみは母親の対面に座ると箸を持った。

「さっきより元気みたいね」

 そう母親がなつみに言うと、なつみは、「うん。お腹痛いの治ったみたい」と元気そうに口にした。

 なつみのお腹の痛みは消えてはいなかった。

 本当は食べ物何か食べたくないくらいに痛い。

 だが、なつみはご飯に食らいついた。

 四口程食べて、味噌汁を飲む。

 味噌汁が胃に落ち着くと、気持ち悪さが込み上げて来た。

 だが、それを何とか我慢する。


 吐いたりしたらママに心配掛けちゃう。


 なつみは勢いで食事を片付ける。

「そんなに早く食べなくても……喉に詰まらせるわよ」

「平気」と言って母親の話を流すと、なつみはグイッと柄のはげたプラスチックのコップに入った麦茶を飲み込んだ。

「ごちそう様」

 そう言ってなつみは立ち上がる。

 何か言いたげな母親を残して、そのまま部屋に戻って手早く学校へ行く支度を済ませる。

 そして、大きく頷くと部屋を出て母親に笑顔で「行って来ます」と言った。

「気を付けて。お弁当、忘れないで」

 まだ食事中の母親はそう言って、なつみに微笑み掛ける。

「うん」

 母親に背を向けて、なつみは台所から弁当箱を攫うと家を出るのだった。

 学校へ向かうなつみの足取りは重い。

 前へ進むたびに、なつみの呼吸は荒くなる。

 途中、足が止まる。

 目を閉じた後に見上げた空は嘘みたいに青かった。




 学校に着いたなつみは恐る恐ると言う風に自分の下駄箱を開いた。

 そして注意深く下駄箱の中を観察する。

 下駄箱に入った上履きになつみの目が止まる。

 上履きには、いっぱいに泥が詰まっていた。

 なつみの体は緊張で固まる。

 目だけを動かして、なつみは辺りを見た。

 なつみの側で楽しそうに話をしている同級生や廊下を行く見知った生徒達。

 彼らを見て、なつみの心臓は鼓動を速める。

 なつみは探していた。

 こんな事をする犯人達の姿を。

 一通り見て、その犯人達の姿が視界に映らなかった事に安どのため息を吐くなつみ。


 ああ、今日も地獄が始まるのか。


 と、なつみはそう思う。


 出来る事なら、このまま逃げ出したい。

 家に帰りたい。


 祈る様に、なつみは思う。

 校舎にチャイムが鳴り響く。

「早く教室へ」

 廊下の方から教師の声が聞こえた。

 なつみが教師へ顔を向けると教師となつみとの目が合う。

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