第一のアトラクション 城2
なつみがそのまま頬を引っ張ると鏡の中の人物も同じ様にしている。
もしかして、これ、私?
なつみは鏡に顔を近付けた。
鏡に映っているのは金色の長い髪、目はグリーンの人形の様な美少女だった。
「ど、どうなってるの!」
なつみが叫び声を上げた瞬間、部屋の大きな鏡開きの扉がノックされた。
なつみが返事をする暇も無く扉は開かれた。
「おはようございます。お客様」
そう言って扉の前でお辞儀をしたのは、なつみよりも背の低い赤い色の長い髪をした少女。
姿からしてメイドの様だ。
顔を上げたメイドを凝視していたなつみが一歩後ずさる。
「あ、あなた、ゆ、遊園地の……」
その台詞と共になつみの頭をある記憶が駆け巡る。
「覚えて頂いて光栄です」
メイドはニカッと白い歯を見せて笑う。
「あの遊園地の……そうだ。私は遊園地にいて、それで……」
なつみは記憶の中にグイグイと入り込んだ。
あの招待状が届いて。
それで私はあの遊園地に行ったんだ。
夜に、ママに気付かれない様にそっと家を抜け出して。
それで、それで……。
なつみの記憶が遡る。
それは奇妙な招待状が届いたその日の記憶。
ある日の朝。
上代なつみ。
高校一年生の彼女はベッドの上でお腹を押さえながら体をくの字に曲げていた。
お腹が痛い。
なつみは最近、毎朝こうだった。
朝になれば必ずお腹に痛みを感じる。
その痛みは例えるならまるでナイフにでも刺された様な鋭い痛みだった。
この痛みはいつから始まったのかとなつみが考えると、痛みは余計酷くなった。
学校、休みたい。
なつみは、そう強く思う。
こんな状態で学校なんか。
でも……。
なつみの脳裏に母親の顔が思い浮かぶ。
なつみの母親は笑顔の似合う元気で優しい人だ。
なつみは母親と二人暮らしだった。
なつみが物心つくころには、なつみには父親と言うものは存在していなかった。
世の中には、パパと言うものが存在すると知ったある日、母親に「私のパパは何処にいるの?」となつみは訊いた。
その時の母親は酷くヒステリックになり、なつみを怒った。
それが、とても怖かったとなつみは記憶している。
なつみは父親の事を母親に訊く事を、怒られた一件からしなくなった。
でも、父親がいない事への寂しさや違和感は小さななつみの中にあった。
パパがいたらいいのに。