第一のアトラクション 城26
引き出しの中には赤い布の装丁の分厚い本が一冊。
「それは日記です」とアリス。
「日記?」
「はい。リコルテ王女様が綴った日記にございます。その日記を読む事でリコルテ王女様がどんな暮らしをしていたか、何を思い、何を考えていたのかが分る様になっています。まあ、いわばこの世界の攻略本の様な物です」
「攻略本……」
「大変便利ですので是非お使い下さい」
「わ、分かりました」
「日記は引出しの中にしまって。さあ、ソファーにお戻りを」
「はい」
なつみがソファーに落ち着くと再びアリスが語り出す。
「次ですが、ここが重要です。この世界に来て、七日間の間に、この世界に残ってリコルテ王女様として暮らすか、それとも元の世界に帰って上代なつみ様としての人生を全うするか、決めて頂きます」
「七日間の間に?」
「そうです。七日間が過ぎれば元の世界に帰る事は出来なくなりますので、七日間の間にしっかりとお決め頂きたく存じます。後悔しない様に」
七日間。
それは長い様で短い時間になつみには思える。
七日間の間に決める事が出来るのか、今のなつみには自信は無かったが、なつみは「分かったわ」と頷いた。
「ルールは以上で御座います。何かご質問は御座いますか?」
「いいえ」
「では、今からリコルテ王女様の人生を満喫して頂きます。まず、そのナイトドレスを着替えましょう」
そう言うと、アリスはクローゼットからとびきり可愛らしいドレスを取り出してみせた。
それは、上代なつみには似合いそうも無かったが、リコルテ王女には良く似合うものだ。
これから、新しい人生が始まるんだ。
期待と不安でなつみの心臓は騒がしい。
「大丈夫。わたくしが付いていますからっ!」
ウインクして見せるアリスの存在だけが心強い。
なつみは心を決めて立ち上がった。
ドレスを身に纏い、髪を整えたリコルテ王女の姿はまるで天使の様だった。
ドレッサーに映る自分の姿にリコルテ王女ことなつみはうっとりする。
「大変良くお似合いですよ」
アリスに言われて、「ありがとう」と微笑むリコルテ王女。
「王女様、これからご家族との朝食が御座います。食堂にご案内致します」
「か、家族と食事? 大丈夫かな」
「何がですか?」
「だって、見た目はリコルテ王女でも中身は違うのよ。家族だったら何かおかしいと思うはずじゃないの?」
もっともな意見をなつみが披露すると、アリスは考える人のポーズで固まった。
しかし、直ぐにポーズを崩し、笑顔を浮かべた。
「まあ、そこは何とか乗り切りましょう。初めが肝心ですから頑張りましよう! お客様方の誰もが通る道ですから」
「私、そんなポジティブには考えられないわ」
げんなりとしているリコルテ王女を引っ張って「兎に角行参りましょう」とアリスは軽い足取りで歩き出した。
さて、これからどうなる事か。




