第一のアトラクション 城25
「では、ルールについてご説明させて頂きます。立ち話も何ですのでソファーにお掛けになってお聞き下さい」
言われた通りになつみはソファーに腰掛ける。
柔らかい。
ソファーは夢とは思えないリアルな感覚だった。
夢か現実か知らないけど、こうなったらやるしかない。
なつみは両手に力を込める。
アリスがなつみの正面に来る。
なつみは、アリスの話を聞き逃すまいと、ぐっと集中する。
立ったままでアリスは話を始めた。
「まず、この世界では、当然の事ですがお客様は上代なつみ様では無くて、リコルテ王女様である事を忘れない事です。間違っても、私は本当は上代なつみだ、だなんて口にしてはいけません」
「分かりました」
私はリコルテ王女、となつみは頭で繰り返す。
なつみの返事に満足した様で、アリスは機嫌よく話を続ける。
「次に、この国では、これも当然の事ですが、話す言葉や使う文字が上代様のいた世界とは異なります。物の名前も違います。でも、それにはご心配無用です。困る事は絶対にありません」
「どういう事?」
なつみの質問にアリスはコホンッと咳払いをした後に答えた。
「秘密はそのリコルテ王女様の頭と体にあります。リコルテ王女様としてあった記憶や知識、動作などをリコルテ王女様の頭と体が覚えているんです。リコルテ王女様に長年しみついた事柄でしたらほとんど自然に出来る様になっています。例えば、歯を磨く時に歯の磨き方を意識せずに磨いているでしょう?」
「それはそうですけど」
「それと同じでリコルテ王女様の頭と体にしみついた事が自然と出来る、という事です。だから、会話にも困らないし、字を読む事も可能です。言葉も文字も全部、上代様がいた世界のものに変換されます。上代様が話す言葉も書く文字も、自動的にこの国のものになります」
「なるほど」と言ってはみたもののなつみにはアリスの言っている事が半分くらいしか分からなかった。
でも、生活にするのに困る事は無いであろう事は理解出来た。
「でも……」とアリスは続ける。
「その頭と体の記憶も完璧ではありません。中身が入れ替わっているのでこれは仕方の無い事なのです。試しに、リコルテ王女様のご家族のお名前を言ってみて下さい」
訊ねられて頭を捻るがなつみは答える事が出来なかった。
何しろ、リコルテ王女という自分の名前もアリスに言われるまで分からなかったくらいだ。
その家族の名前なんて頭を振っても出て来ない。
「分からないわ」
とうとうギブアップだ。
「そういう事です。でも、そんな時の為にわたくしが付いているのでそこもご安心下さい。しっかりとフォローさせて頂きます」
「はい……」
「次ですが、異世界生活において重要なアイテムが御座いますのでご紹介させて頂きます」
「アイテムですか?」
「はい。そこの机の引き出しを開けてみて下さい」
なつみは立ち上がり、机の引き出しを開けた。




