第一のアトラクション 城23
「一体、どこからが夢なの?」
なつみはパニックを起こしていた。
遊園地のお城の中で、急な眠気に襲われて。
目が覚めたら全く別の自分になっていた。
そうよ。
夢。
これは夢よ。
遊園地も何もかもが夢で、目が覚めたら私はまた……。
また、残酷な日常の世界の中にいる。
なつみは床に座り込んだ。
メイドの姿をした遊園地のキャストを名乗る女の子がなつみを見下ろす。
女の子はしゃがみ込むと、顔を伏せているなつみに向かって言う。
「これは夢なんかじゃございませんよ、お客様。まあ、夢だと思いたいなら構いませんが」
なつみは顔を上げて女の子と視線を合わせる。
女の子はなつみに向かってにっこりと笑った。
「改めまして。上代なつみ様。わたくしは夜の遊園地のキャスト、アリスと申します」
「あ、アリス……さん?」
「さん、は要りません。アリスで結構です。上代様、此処はいわゆる異世界です」
「い、異世界?」
「はい異世界です。ご存知ありませんか?」
なつみは首を振る。
本が好きななつみは異世界を舞台にした小説も読んでいた。
異世界とはすなわち現実世界と異なる世界の事だ。
パラレルワールドなどと呼ばれる事もある。
「此処は、満る月の国、コカルテ国」
アリスは立ち上がり、窓へと近付いた。
なつみはアリスを目で追う。
アリスは窓のカーテンを思いっきり開いた。
すると淡い光が部屋の中へと入って来る。
一瞬の眩しさに目を閉じたなつみにアリスは、「ご覧下さい」と言って窓を片手の手の平で示す。
なつみは恐々と目を開いて窓を見た。
そして息を呑む。
窓には、窓に収まり切れない大きな月があった。
手を伸ばせば届きそうな大きな半月。
「こ、こんなの……見た事が無いわ」
座り込んだままのなつみの目は大きく見開かれている。
「この国に、太陽はありません。あるのはご覧の通りの月夜のみです。この手の届きそうなくらいに近い月の光の下で人々は活動するのです。昼間でも星が見えますよ。月の満ち欠けがこの国のタイムライン。月が新月になると暗闇が訪れます。それがこの国でのいわゆる夜です」
「こんなに月が近くに……ど、どうなっているの?」
「さあ、異世界の事ですから。何でもありですよ」
アリスはそう言うと再びなつみに近付いた。
なつみを見下ろしてアリスは再び話し出す。
「上代なつみ様、あなたはこの世界では、リコルテ王女様。このコカルテ国の第一王女様です」
「リコルテ……王女? 私が王女様?」
「さようで御座います」
「そんな……信じられないわ」
「そうでしょうとも。でも、ご安心下さい。この異世界でお客様が迷わない様にサポートさせて頂くのがわたくし共キャストの仕事。リコルテ様にはわたくしがほぼ付きっ切りで異世界生活をサポートさせて頂きますのでご安心下さいませ。あ、今のわたくしの身分ですが、リコルテ様付きのメイド、という事になっていますのでお忘れなき様にお願い致します」




