第一のアトラクション 城18
なつみが声のした方へ目を凝らすと闇の向こうに人影が見えた。
その人影はゆっくりとなつみの方に近付いて来た。
そうして月明かりの下に現れたのは赤いエプロンドレスを身に着けた女の子だった。
赤い髪が肩まで伸びていて、その髪が風になびいた。
女の子は驚くくらいの深紅の口紅と右目の下に涙型のペイントを施している。
ロングブーツで地面を踏み、優雅な動作でなつみの顔を真っすぐに見ながら歩いて来る。
なつみの心臓は早鐘の様に鳴っていた。
まさか、こんな所に自分以外に人がいるだなんて思ってもいなかったなつみ。
しかも、相手は可笑しな恰好をしている。
まるで何処かのイベントから抜け出して来た様な恰好で存在している女の子。
女の子はメリーゴーランドの柵の外でなつみに向かってゆらりとお辞儀をした。
釣られてなつみも女の子に向かって首だけ曲げてお辞儀をする。
なつみの目は点だ。
「ようこそ、夜の遊園地へ!」と女の子が声を弾ませる。
「よ、夜の遊園地?」
一瞬、フリーズするなつみだったが、その聞き覚えのある言葉にハッとした。
「夜の遊園地って、あのチケットの?」
「はい。さようでございます。今宵はおこし下さりありがとうございます。お客様、招待券はお持ちですか?」
訊かれてなつみは操られる様に肩に掛けた鞄をごそごそと漁る。
目当ての白い封筒をもたもたと取り出す。
女の子がなつみの側までやって来てなつみの手から、「失礼」と一言言って封筒を攫う。
女の子は封筒を開き、中からチケットを取りだした。
そうしてチケットの半券を切ると、手早くなつみに切った半券の片方を渡して、「一名様、ご案内ーっ!」と声を張り上げた。
途端に遊園地内が淡く光る。
なつみは目をパチパチと動かした。
園内は赤、青、黄色……色とりどりの小さなライトで照らされていた。
園内にオルゴールの音楽が響き出す。
その曲はなつみが何処かで聞いた様なメロディーだった。
しかし、何処で聞いたのかはなつみにはさっぱりと思い出せないのだ。
曲の事何か気にしている場合では無い。
一体全体、何が起こったのか。
事の衝撃で動けないでいるなつみに向かって女の子は饒舌に語り掛ける。
「改めまして、ようこそ、夜の遊園地へ。わたくし、当園のキャストを務めさせて頂いている者でございます。今宵はわたくしがお客様を夢の世界にナビゲート致します」
「キャスト? ナビゲート?」
「はい。ご覧の通り、当園は廃墟で御座います。しかも時は宵闇。お客様お一人では危険もあるかと存じます。月明かりに照らされているとはいえ、迷いもするでしょう。そこでわたくし共、キャストがお客様をご案内する運びとなっているのです」
「あっ……え、えーっと……」
なつみの頭が忙しく回転する。
待って。
待ってよ。
夜の遊園地の招待って本当に?
これは何なの?
私は夢でも見ているの?
こんな事って有り得ない。
なつみの思考何て無視して女の子はとびきりの笑顔で、「さあ、遊びましょう!」と言ってオルゴールのメロディーに合わせて、くるりと回った。




