第一のアトラクション 城17
なつみは草を踏みながら遊園地へ近付く。
近づくにつれ遊園地の錆びついた看板が大きく見えて来る。
ネットの写真の通りに遊園地の名前は肝心の部分が錆びに侵食されて読めなくなっている。
ゲートの前で立ち止まり、背伸びをして中を覗くが見えるの暗闇ばかり。
遊園地の中に月明かりは届いているのか疑いたくなるほどに何も見えない。
外からははっきりと遊園地の輪郭が見えているのにどうしてなのか。
なつみは少し怖くなった。
廃墟なんて生まれてから一度も来た事も見た事も無いし、ネットで見た写真以外に中がどうなっているのか分からない。
中が蜘蛛の巣だらけだったりして。
そう考えるとゾッとした。
風が吹く。
冷たい風だった。
その風に押される様になつみは意を決してゲートをくぐる。
ゲートのバーは長年の劣化を感じさせないくらいに軽く動いてなつみを遊園地の中に招き入れた。
「うわぁ」
なつみは声を上げた。
外から見るとあんなに暗かったのに中に入ると薄暗くはあるが園内の様子が浮かび上がる様に見えた。
月明かりはちゃんと園内まで届いていた様だ。
蜘蛛の巣の気配も今の所は無い。
なつみはネットの写真にあった広場の地面のタイルの天使の周りをぐるりと回った。
じっくりと天使を見るなつみ。
所々、タイルが欠けていたが美しい天使の微笑みがそんな事を気にさせなかった。
「綺麗。本当に綺麗」
なつみは天使に向かってそう言う。
山を登って来たというのになつみは疲れを感じていなかった。
呼吸も整っている。
なつみは吸い込まれる様に中へ、中へと進んで行く。
「メリーゴーランドだ!」
なつみは目に付いたメリーゴーランドに駆け寄る。
ピンク色の柵に手を掛けて身を乗り出してメリーゴーランドを見る。
つぶらな瞳をした白や黒の作り物の馬。
星や宝石の形に縁どられた鞍は艶やかだった。
美しい曲線を描いた白い馬車には小さな薔薇の蕾の絵が描かれている。
何か、寂れてるんだけど案外綺麗じゃない?
夜の闇の仕業か、メリーゴーランドには埃や汚れは無かった。
正確には汚れてはいたが汚らしい感じは全く無い。
まるで誰かが綺麗に拭いたかの様である。
なつみはメリーゴーランドの入り口の鉄の扉を見つけるとそれを押してみた。
扉はギィッと音を立てて開いた。
そっと中に入るとなつみは馬を指でなぞる。
そうして指をじっと観察する。
なつみの指には埃は付いていなかった。
雨で埃とかが綺麗に流れた、とか?
なつみが首を傾げた瞬間。
「ようこそ、いらっしゃいませ!」と遊園地に声が響いた。
その声にびっくりしてなつみは思わず馬にしがみ付く。




