第一のアトラクション 城16
もう……。
関係無いか。
自転車をこぐ力をなつみは強めた。
遊園地への行き先は期待していなかったスマートフォンの地図アプリに任せた。
住所だけでも地図アプリは遊園地への行き先を示してくれた。
見慣れた街の風景を通り過ぎ、曲がりくねった道に入る。
この道は地図アプリによるとこのまま山へと続いている。
進むたびに街灯は少なくなり、山の麓まで辿り着いた頃には頼りになる灯りと言えば空に浮かぶ大きな月の光と自転車とスマートフォンのライトだけになっていた。
今夜は満月だ。
なつみの家には懐中電灯は無く、持ってこれ無かった。
なつみは自転車を下りて押しながら自転車とスマートフォンのライトで辺りを照らし、地図アプリが示す山への入り口を探す。
山は暗闇を纏い入り口を隠していた。
草を踏みながら注意深く見るなつみ。
「あ、あった!」
思わず声を上げた。
草に覆われていたがその草の壁の向こう側に確かにある。
車一台分が通れるくらいの道が。
自転車で入るのは無理そうだな。
遠目に見る、草が生い茂った道を見てなつみは思う。
なつみは道の入り口に自転車を置いた。
自転車のカゴから鞄を出し、鞄を肩にかける。
そして、道を塞ぐ草の壁に飛び込んだ。
進むなつみの顔に容赦なく草が当たる。
それを堪えて足を進めると、突然草の背丈が低くなる。
どうやら草の壁を抜けた様だ。
草に覆われてはいるが、確かに道はある。
この道を進めば迷うことなく山の上まで行けそうだった。
山の上には廃墟となった遊園地があるはずだ。
なつみは地図アプリの目的地を示す星印を確認すると、「よしっ!」と気合を入れて山道を登り始めた。
コンクリートの道を突き破って生えている草木を掻き分けて進む山登りはなつみの体力を徐々に奪っていく。
はぁ、はぁ、と息を弾ませながらもなつみは休まずに歩き続ける。
せめて道が途絶えていない事が救いだった。
時間を忘れて歩き続けると開けた場所に出た。
顔を上げたなつみが見たのは廃墟となった遊園地の姿だ。
満月の光りが降り注ぐ遊園地はなつみが思っていたよりも広く、大きく見えた。
高い壁から突き出たお城の屋根が月明かりを浴びて輝きを放っている。
本当に……。
本当にあったんだ。
なつみは駆け出しそうな勢いで草木を払いのけて遊園地に近付いた。
何て綺麗なの。
錆びつき、傷み、蔦に覆われた遊園地は月明かりと空に瞬く星々の力を借りてまるで太古の遺跡の様にして存在していた。
この世に終わりの景色があるなら正にこんな風かも知れない。




