第一のアトラクション 城10
何よそれ。
私だって真面目に生きてる。
毎日真面目に学校に行って、いじめに耐えて、家に帰ったら家事を手伝って。
勉強だって頑張って。
それなのに。
それなのに……。
「迷惑なんだよ。あんたの存在自体がね!」
なつみの心臓がまるで刺された様に痛む。
「明日までにお金、持ってこれないなら、写真、ばら撒くから」
そう言って写真を撮影した仲間のスマートフォンを攫うとリーダーの彼女はなつみにスマートフォンの画面を見せつけた。
そこにはあられもない姿のなつみが写っている。
なつみが咄嗟にスマートフォンを奪おうと手を伸ばすとリーダーの彼女がなつみを蹴り飛ばす。
「ぐっ……」
頬に冷たい土の感触を感じながら自分の心臓が激しく鼓動するのをなつみは感じた。
いじめグループの一人が手に持っていたなつみのスニーカーをなつみに投げ付けるとそれはなつみの頭に降って来た。
「誰かにチクったらあんた、どうなるか分るよね? まぁ、あんたを助けてくれる人何かいないかぁ。じゃあ、明日ね」
リーダーの彼女の冷たい台詞。
いじめグループの面々は笑い声を上げながら去って行く。
その場に取り残された、なつみはしばらく土の香りとその感触を味わいながらその場に、倒れたままでいた。
湿った土に落ちるなつみの涙は後も残らず土に吸い込まれていった。
ぼろぼろの制服を何とか身に着けて、その後、どうやって家まで辿り着いたものか、なつみには分からない。
古く寂れた木造のアパートの姿はそのまま、今のなつみ自身を表している様だ。
何もしたく無いのに、いつもの癖で、アパートの一階に設置されているポストを覗くなつみ。
ポストの中には、ハガキが二枚とチラシが一枚。
そして真っ白い封筒が入っていた。
それらを掴んでなつみはアパートの錆びた鉄の階段を音を鳴らして上る。
自分のアパートの家の前まで来ると、鞄から鍵を取りだしてぎこちない仕草で鍵を開けた。
誰もいない事は分っているのになつみはいつも家に帰ると、「ただいま」と言っていた。
けれど、今日はそれはしない。
スニーカーを脱ぎ、玄関の気持ち程度にある飾り棚にポストに入っていたハガキとチラシを置く。
その後で白い封筒を置こうとしたなつみの手が止まる。
封筒には赤いペンで、上代なつみ様、とだけ書かれていた。
なつみの家の住所も書かれていない。
そして差出人の名前も住所も書かれていなかった。
封筒には切手も貼られていない。
それを不思議がる余裕は今のなつみには無い。
なつみは自分の鞄とその封筒だけ持って暗い廊下を進み、居間から自室に入った。
そのままベッドに身を投げ出すとなつみは目を閉じた。
疲れのせいもあってなつみの瞼は次第に重くなる。




