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勇者殺しのミミック  作者: 練度
6/30

6 灯台、天も又暗し

このダンジョンの設計者はクソ野郎だ。


どうりでいくら探しても出入り口が見つからないわけだよ。



少し前、ダンジョンにちょうど「入ってくる」ところの冒険者を見た。


何という事だろうか、彼らは扉や穴などというものなど何もない空間に、突如天井から降って来たではありませんか。

そいつらが離れてから急いで確認しに行くと、長らく探し続けてきた、出口のような物が天井に見えるではありませんか!



クソが!そりゃミミックだから真上なんて見るわけねえよな!


呆れた、このダンジョンと自分にだ。


まあ出口が見つかったのはよし、だが更なる問題が発生した。どうやってあの出口まで行こうか。

天井まで目測数メートルはありそうだ。それに冒険者たちはロープなど帰る為のものを何もつけてない。

冒険者はどうやって帰還するんだ…?と疑問に思ったが、別の冒険者パーティが向こう側からやってくるのが聞こえたので角に寄り、こっそりその様子を観察する。


3人パーティの内1人が何やら道具のような物を取り出して、それを起動した。

すると3人の体が浮かび上がって出口に向かっている。あの道具が帰還の鍵らしい。


冒険者たちはあまり武装もしてない…それにここから出られるのなら一刻も早く。

…よし。


急いでその3人の下に駆け寄り、道具を持っていた冒険者に向かって【デス】!

あの不気味な頭蓋骨が飛んでゆき、一人の命を奪う。

どさっと地面に落ちる音で他2人が気づく。


「えっ?ミミック!?」

「おいヒューガ!?」

他2人の浮遊が止まり、大剣使いと弓使いの冒険者が落ちてくる。

大剣使いが落下と共に剣を振り降ろすのを横に飛んで避け、弓使いに向かって【ルーン魔法】の火を放つ。

「このミミック魔法を!?がふっ」

「ランド!」

仲間に気を取られた大剣使いに体当たりをかます。

が、体幹がしっかりしていたゆえ転ばせず、密接距離になって動けない。


「こいつ!」

大剣を両手で逆手に持ち、振り刺して来た。

バキッ、と蓋を貫通して刺され、激痛が走るが幸い中身の急所は外された。まだ生きてる。


やばいやばい、こいつに体当たりをしたのは間違いだった。大剣を抜かれさらに痛む、また刺してくる!【ルーン魔法】雷!至近距離から雷を放ち、動きを痺れさせた隙に跳躍で後ろに距離を取る。


【デス】は念じてから発動するまで結構遅い、この戦闘で使うには隙を縫うか…いや、【ルーン魔法】の方が即効性があって使いやすいな、氷!

初めて使う氷の【ルーン魔法】、目の前に氷針が作られ、大剣使いに向かって飛んでゆく。

が、ちょうど痺れから復帰した大剣使いに剣を使って弾かれる。

それならばもう一度雷を…


横から風を切る音。

咄嗟に回避しようとしたが、この距離では流石に難しい。

バスッ。箱に矢が刺さり激痛が走る。

やばい、戦闘でここまでダメージを負ったことがないし、激痛で気絶しそうだ。


だがここで気を失うのは死ぬのと同意身、ここが正念場だ。絶対に死なずに、絶対に勝つ。


今【HP:32/71 MP:12/38】と、結構消耗してしまっている。


【ルーン魔法】の雷を連続で使用して2人の動きを止める。

そして、【デス】

遠隔がうざい弓使いをしとめる。

血を吐き、弓使いが膝をつく。

「なっ…おいランド!」

またもや味方に気を取られ隙を見せた。今度は体当たりなんてしない。大きく跳躍し、口をガバァッと開ける。

口内に蓄えた勇者たちの武器がガチャっとなる音と共に大剣使いの頭を食いちぎる。


《レベルアップしました》

《ステータスが上昇しました、スキル【ルーン魔法】がLv2になりました》

《称号【ダンジョンの厄介者】がLv7になりました》

《スキル【魔力操作】を得ました》


戦闘終了。

今回かなり危なかった…死の予感もした。

箱の穴から血が垂れてる。

まあ、勝って生き残ったんだ。よしとしよう。


とりあえずさっき得た【魔力操作】を確認。

《魔力を効率よく操る為のスキル》

《大規模な魔法使用の前提》

ええと…つまりなんだ?魔法のMP効率が上がるってこと?詳しく検証しないとわからないな。


じゃあ、こいつらを食べちまおう。

大剣使いの体を貪る。

《スキル【剣術:Lv1】を得ました》

そういえば【吸収】のスキルを忘れてた、けど明らかにミミックに必要なさそうなスキルだが…

一応舌で剣を握って振る事はできなくはないのか…?それも試すのは後だな。


次に弓使い。

…あら、何も得られなかった。

まあ弓系のスキルを覚えてもどうしようもないところはあるな。


あとは最初に仕留めた冒険者…の、前に。

地面に転がった冒険者が持っていった道具を見る。水晶の周りを幾何学的な模様の描かれた金属の円が囲んでいる。

マジックアイテムのようなものだろう。

これで浮遊して出るんだろうけど…いかんせん使い方がわからない。

発動する時…何をしていたっけ…

なにか、手をかざしてるのは見えたけど、何をしていたんだあれは?


…とりあえずこっちも食べてしまおう。

《スキル【魔力操作】がLv:2になりました》

ん?どういう事だ?

吸収は新しいスキルを確立で…あぁ、魔力操作をこいつから取り込んで、それでレベルが上がったのか。

ごちそうさまでした。


よし、このアイテムの使い道を考えないと…

あ、それこそ魔力操作を使ってみるか?この水晶どう見ても魔法的なオブジェクトだから何かしら反応はあると思うが…

【魔力操作】を発動してみる。

ん、お?視界が少し変わる。

見える色度が減って色の見分けを付けづらくなるが空中に漂う粒子のような物が見えるようになる。


その粒子は至る所に見え、不思議と物の中にある粒子も見ることができる、粒子だけを透視して見てるイメージだ。

俺の中にもその粒子が存在して、この水晶の周りには特に多い。


これはもしかして、魔力?

【ルーン魔法】を発動して壁に火の玉を打ってみる。

体内から粒子が少し吸い出され、それが火の玉を象って行く。

間違いない、今見えてるのは魔力の流れだ。

と、なると。【ルーン魔法】を発動する時のイメージでこの水晶に…魔力を…

漂う粒子の一部に、おはじきのような動きの乱れができる。

水晶を強く意識する。


パァッと水晶が光り、翼の模様が浮き出る。

ふわっ


おぉっと!?体が浮いた!

発動できた!魔力を操れた!

やばい、結構興奮してる。魔力を感じ取って、見て、操ることがここまで感動的とは思わなかった、それにかなり楽しい。


魔力を送り続けて天井まで浮かんでゆく。

そして一面、上に続く階段の手前にある踊り場に降りる。

このマジックアイテムだが魔道具だがは今後も使えそうだな、持っておこう。



さあ、前にあるのは上に続く階段。そしてその先に見えるは出口の扉!

ようやくここまで来た。

ミミックとかいうふざけた転生を経て一週間くらいこの薄暗いダンジョンの中をずっと彷徨い続けて来た。

ようやく。やっとここまで来た。

ダンジョンから出るのは全然予定調和。しかし同時に大きな一歩だ。

元の世界に帰るにも、ミミックとしてやる事はまだまだいくらでもある。


いやむしろ……


まだ、始まったばかり。

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