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勇者殺しのミミック  作者: 練度
30/30

Re:10 犬っころども

 

 

 ダンジョンから脱出できた次の日。


 現在俺は一時的な拠点として定めて掘った穴の周囲の森を探索している。

紅葉樹と針葉樹の入れ混じる、手入れされてない印象を受ける。

足場も悪く、人間だったらかなり歩きづらそうだ。


 雪は10cm程積もっているがシャーベット状になりかけてる所もあり、新雪降っていないのだろう。

冬がどれだけ続くかわからないが、早急に終わって欲しいものだ。


 探索ついでに考えてたことがある。

ミミックは宝箱とその中にある本体で成り立つ生物だ。

そこで、外側の箱はどういう扱いなのだろうか。

カタツムリの殻みたいに一生使っていけるのか、ヤドカリみたいに箱を乗り換えられるのか。


 おそらくは前者だ。

根拠は【シェイプシフター】による変化能力。

この宝箱が体として扱えなければ【シェイプシフター】によって形を変えることはできないだろう。


 不思議なのは中身にある本体。

口の構造は二段重ねになっていて、箱の内側から伸びる牙と、さらに中にある咀嚼口。

外側の牙が主に俺が攻撃に用いてる口で、咀嚼口との間に結構な空間がある。

そこに前々まで勇者の剣とかをしまっていたが、今は【体内収納】によって空きスペースとなっている。


 この空きスペースによって、本体は箱の中の半分ほどしか使ってないということになる。

こんな空間に、生物が生きていける臓器や器官が詰め込まれてると思うと、どうにも違和感がある。


 それにミミックは大喰らいだ。

臓器をなんとか詰め込めたとしても、人間の体が4人分入り切るスペースはどう考えてもない。

大食いタレントみたいに、ただ入らないように見えるだけなのだろうか?




 そんな考えに耽っていると、耳が何かを拾った。

シャリ、という一部シャーベット状になってる雪を踏んだ音だ。

さっきから少しずつこの音が近づいてきている。

前のは遠すぎて引っ掛からなかったが、今なら見えるだろう。

俺は周囲に【超音波】を放つ。

【エコーロケーション】の作用で対象の見た目がはっきりと感じ取ることができた。


 狼だ。

俺の箱より一回り小さい体格の狼が3匹、俺の感知に引っかかる。

聞こえてたのはこいつらの足音か。

にしても雪を踏んだ音が聞こえるとか、ミミックの聴力すごいな。


 狼たちは徐々に俺と距離を詰めている。

一体他なのだからもう襲ってきてもいいと思ったんだが、慎重な性格なのだろうか。

まぁ、確かに俺が狼なら確かに森の中を闊歩する謎の宝箱を見つけたら流石に様子を見るな。


 だが狼たちも痺れを切らしたのか攻勢に出るようだ。

4匹の群れが2-2に分かれた。

正体のわからない相手に確実性のある挟撃をしかけてきた、動物の持つ狩りの勘は侮れないな。


 俺の基本的な移動方法は某スライムのようなジャンプを繰り返す移動方式だ。

そのために跳躍した瞬間、狼たちが雪を蹴った。


 来やがったな犬っころども。


 着地後、俺は即座に捻りを入れて再跳躍し、口を開けて周囲を見渡す。

狼たちが両サイドから俺に迫ってるのが目視できた。


 左から迫ってくるペアは直線的に俺の方へ向かっているが、右側のペアは俺のいる地面より少し高く、スロープになってる上を並列状に走って来ている。

挟撃に加えて時間差の波状攻撃を仕掛けてこようとしてる、こいつら頭よくね?


 とりあえず即座に脅威になる左側のペアに【ファイアボルト】を打ち込む。

最近は【ファイアボルト】の扱いも上手くなって来てるのか念じて→発動→発射するまでのラグが縮まってるのを感じる、まだまだ微量だが。


 左側のペアの片方はカーブして避けているが、突然の火球に驚いたのか、正面、というか顔面から受けて毛が黒く焦げて文字通り面食らった顔をしてその場で苦しんでいるもう一匹の狼。


 てかなんだ?【ファイアボルト】の勢いがダンジョン内で使ったより余程良かった気がする。

冬で寒い中使ったらむしろ弱体化しそうなものだが、むしろ威力は倍増してるように見えた。

あの威力ならこの森に生えてる木くらいなら穴を穿てるんじゃないか?


 右側のペアが動いた。

片方が俺に向かって飛び掛かってくる。

だが残念だな犬っころよ、それは飛んで火に入る夏の虫だ。

俺はあんぐりと大きな口を開けて狼を迎え撃つ。


 そのまま再度跳躍して狼を頭から飲み込み、ばつん、と胴体を切断する。


《レベルが上がりました》

《レベルが13から14になりました》

《ステータスが上昇しました》


《スキル【噛みつき:Lv4】がLv:5になりました》


 レベルも上がった。

さぁ来い残り三匹の犬っころども。


 仲間の仇を取ろうと激情のまま襲ってくると思ったが、俺の予想に反して3匹ともぴたりと動きを止めて俺の様子を伺ってる。

仲間が丸呑みにされて怖気付いたのだろうか。

流石に危険とわかってる物に飛び込むほど愚かじゃないらしい。


 ならば散れ散れ、俺はさっさと元の世界に帰る手がかりを得なきゃいけないんだ。


 威嚇の要領で【ファイアボルト】を放つと、三匹とも同じ方向へ駆けて逃げていった。


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