Re:6 後続
ダンジョン徘徊7日目。
明確に日にちを判断する材料がないから俺が寝た回数で判断している。
最初の頃は寝るところを結構慎重に選んで、ダンジョンの奥まったところでビクビクしながら寝ようとしてたが、寝てる時でもミミックは本能的に人間の足音がしたら目が覚めることがわかってから気にしなくなった。
【聴覚強化】とミミックの本能が合わさった現象だろう。
さらにモンスターはこっちから手を出さない限り襲ってこないことがわかった。
寝ていても一切関与されない。ガン無視決められてる。
ミミックがダンジョン内を徘徊してるのが異例なのだろうが、他のモンスターは能動的にミミックを攻撃しない。
そもそも同じモンスターとして認識すらされてない節がある。
それこそダンジョンのギミックの一つのように。
襲ってこないのは助かるが、少し寂しい感じもする。
足音が聞こえる。これは人間のものだ。
すぐさま【超音波】を放ち、【エコーロケーション】で5人組の冒険者だとわかった。
まずい、発見が結構遅れてしまった。
最後の曲がり角は結構前だ。急いで戻っても後を見られる。
ど、どうする!?
こういう場面を想定してなかった、この場合どうするのが正解なんだ?
5人なんてまず勝てっこない。
くそっ…一か八かだ!
ガチャガチャと鎧が出す音が近づいてきた。
「アラドさん達大丈夫でしょうか…」
「正直わからないな、ダンジョンの中で7日はかなり危険な日数だ。それに初めてのダンジョン探索にどれだけ準備もしてたかわからない」
「一応食料品店の店主から勇者一向が干し肉を幾らか買って行ったという証言は取れてますよ」
魔術師らしい見た目の少女と鎧を着込んだ大男が話しながら近づいてくる。
他に槍を持った女戦士と剣を持った長髪の少年。そして格好がよく見えないが、神官?の女性がいる。
陣形はタンクっぽい大男と槍戦士が前衛、少年剣士と魔術師が中衛、そして神官が後衛となってダンジョンを進んでいる。
「その次は単純な魔物の脅威が出てくる。このダンジョンは正直初心者向けとはとても言えない」
「それに封魔の迷宮ってだけあって、あのメンバー一番の火力役も真価を発揮できないだろうしね〜」
「やっぱり早急に見つけ出さない…と…」
話していた魔術師っぽい格好の少女が俺の前で立ち止まって言葉を止める。
何をトチ狂ったか、俺は【シェイプシフター】を使ってタンスに変化していた。
「ダンジョンに、えぇ?」
「なんだこのタンス…」
「こ、ここ封魔の迷宮ですよね?ハウスミミックの中とかじゃなくて」
「それだと正直言って俺らはもう死んだも同然だがな」
ちょっと待て、今聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ。
ハウスミミックだと?この世界には家にまで擬態するミミックがいやがるのかよ。
ガーっ
突然少年剣士が3つある引き出しの真ん中を突然開けた。
「ちょっと!開けるなら言ってよリド君!」
ほんとだよ!心臓どころか本体飛び出るとこだったよ!
「ごめん…なんかあるかなって」
「ダンジョン内にある変なオブジェクトはトラップの可能性が高い、正直無警戒で開けるのはやめておけ」
「何も無さそうならば、先を急ぎませんこと?」
神官のお姉さんがゆったりとした声で言った。
「そうだな、正直このタンスに罠があるとは思えんが、無いとも言い切れん。それに伝説の剣とかが入ってるなんて万に一つもないだろう。
その言葉で、上の引き出しに入ってる勇者の剣が音を立てた気がした。
「おい勇者達は一刻を争うんだろ?さっさと行こうぜ」
槍戦士が少し先導気味に他を急かす。
「そうだよ、早く先に行こう…」
「開けたのはリドだったけど?」
「ごめん…」
冒険者者達はその場を去っていった。
彼らが見えなくなり、足音も聞こえなくなった段階で俺は変身を解く。
《スキル【シェイプシフター:Lv2】がLv3になりました》
肝が冷えた。
気が動転してわけわかんない選択肢を取ったが、なぜか通用してしまった。
だが二回目以降はこんな手に頼らない方がいいな…
【シェイプシフター】を使って壁の一部に同化できたりしたら完璧だろうけど、流石に難しそうだ。
ていうか、さっきの奴ら会話からして明らかに勇者パーティの捜索隊だったよな…
やばい、やっぱり勇者パーティは重要な存在だ。そのパーティが死んだという事実が世界に知れ渡ったりしたらどうなってしまうのか。
地上に出てこの世界についてのことを知らないと。